突拍子もない
部屋でこの領地の状況を把握するために家令殿に書類を見せてもらっていると、侍女が女の子を伴ってやってきました。
どうしたのか、訝しがっていると、いきなり変な事を言い始めました。
「お嬢さま、気分転換にクマ狩りにでも行ってきませんか?」
「はぁ? 貴方はいきなり何を言っているんですの?」
わたくしは彼女の突拍子も無い事を言う事に慣れていますが、何も知らない無垢な娘を巻き込むのは感心しないですわよ。
女の子は明らかに状況を飲み込めていないようで、目を白黒させています。
それに、そんな狩りなんて遊びは落ち着いてからですわよ。今はもっとやることがありますわ。
ふと、部屋の外に目を向けると、男の子がこっそりのぞいています。女の子のボーイフレンドかしら? 初々しいわね。
いえ、もしかすると領民から陳情が来ているのかもしれません。それなら、単なる遊びではないですわね。
「どなたか、熊に襲われるなり被害にあったのかしら?」
それなら、この剣を振るうのに異存はありません。まだ、護衛に来ていた方はいるので、こちらの方々と演習を兼ねて皆で山狩りするのもやぶさかではありません。
「いえ、そういう訳ではないのですが」
けれど、女の子が否定します。
「冗談ですよ。お嬢さま」
やっぱり侍女の思い付きの冗談のようです。仕事がなくて暇だからといって、遊んでばかりはダメですわよ。
翌日、また侍女が女の子を伴ってやってきました。
「お嬢さま、私の公認の後任を決めましたよ!」
だから、遊んでばかりはダメと言ったでしょ。
「ええ、分かりました。じゃあ、仕事を作ってきます。まあ、それはそれとしてこの娘は如何です? 侍女っぽいでしょ」
昨日とは違う女の子でした。昨日の子は綺麗系だったけれど、この子は可愛い系かしら?
可愛らしい格好をさせていますが、無理やりしていない? この娘何か、怖がっていますわよね?
「嫌なら、ちゃんと嫌って言いなさいね」
しゃがんで、女の子の頭を撫でます。
「失礼ですね。お嬢さまの好みど真ん中でしょ」
「何で貴方はいかがわしそうな言い回しをわざとしますの?」
その言い方だと一般から外れた性癖を持っていそうじゃないの。わたくしは単に可愛いモノが好きなだけですわよ。
侍女の言葉に文句を言いつつ、女の子を観察します。
好みか好みじゃないか、と言われれば、・・・まあ、正直好感が持てる娘だと思いますわ。
容姿は平凡ですが、言い換えれば普遍的とも言えます。小動物的な可愛さがあり、確かに嫌いではありません。おじいちゃんおばあちゃんに猫可愛がりされそうな雰囲気を醸し出しています。
けれど、お仕事をさせるのはもっと大人になってからで良いのではないかしら?
「この娘はお嬢さまとそんなに年齢変わりませんよ。ちょっと年下なだけですよ」
えっ? でも背も低いし、胸もぺったんこ・・・、いえ、発展途上なのかしら?




