ある野望を秘めた女の子の話
「お嫁に来た奥様に取り入るわよ!」
拳を振り上げ、野望に燃える。
奥様が嫁入り道具を整理するのを見てたんだけど、凄い量だった。質も十分。沢山詰め込まれていた服もいい布を使い、華やかな色合いで染められていた。
あれ一着でもひと財産になるんじゃない? 奥様の実家って確実に大金持ちよね。
ここから私が身一つで独立した場合、元手無しで成り上がるのは難しい。まだ実績も無い小娘にお金を貸してくれる人もいないだろうし、現段階では良策ではないと思う。
まずは実績作り。それに奥様に親しくなって有能さを見つければ、独立時に援助してくれるかもしれないしね。
「ふ~ん。まあ、適当に頑張ってくれ」
私の宣言に下僕がやる気なさそうに答える。
先日もそんなこと言ってたわね。何でアンタはそんなにモチベーションが低いのよ!?
昔は私の後ろを「ハイハイ」唯々諾々と従ってついて回ってたってのに、全く生意気になっちゃって。
「アンタはつべこべ言わず、私の手伝い決定よ。何か良い案はないの?」
「奥さまのお付きに立候補するとか?」
アンタの頭で出す案なんてその程度か。まあ、順当な手段ではあるわね。う~ん、アンタがそう言うのなら、そうしましょうか。
「でも、奥様って怖そうじゃね?」
何言ってんの? アンタ目が悪いんじゃない?
嫁入り道具一式の整理を采配する姿はクールなデキる大人の女性って感じだったじゃない。まだお子様のアンタには分からないだろうけれどね。
私が目指すのもああいう魅力的なクール美人よ。
「・・・クール美人?」
失礼ね。なにその疑いの目は? 中身はもう充分でしょ。見た目だってあと数年経たずに、ああなるんだから。
「奥様が万一怖い人だったとしても、そんなの関係ないわよ。あの人って、大領地のお嬢さまなんだから。いい? そこを足掛かりにもっと上を目指すんだからね!」
2人で具体的な作戦を練ろうとしていると、集合がかかる。その場所には件の奥様と一緒に頭良さそうな男の人が並んでいる。
なんと、奥様がご実家から連れてきた新たな働き手候補だという。
どうしよう? どうにかして追い返せないかな。取り入ろうて決めた矢先に有能なのが来たら、私の価値が霞んじゃうじゃない。
「うん。こいつらが育ってきたから不要だ」
領主様が今、良いこと言った!! そうよ。あんなの不要よ。
もうひと押ししないと。下僕の危機感を煽る一言をささやく。
「ちょっと、ヤバいわよ。あんなのが来たらアンタなんてお役御免よ。屋敷を追い出されちゃうかもね」
さらにお尻をつねってやる。
「オイラたち一生懸命頑張ります」
涙目になって、震えながら彼が叫ぶ。
何? そんなに強くつねってないでしょ。全く、大げさなんだから。
でも、必死な姿が憐れみを誘ったのか、奥様はあっさり撤回した。
「分かりましたわ。そこまで言うのなら、このお話はなかったことにしますわ」
やった~!! アンタにしてはよくやったわ。




