ある屋敷で働く男の子の話
領主様が結婚することになった。何でも、王都と花嫁の地元でも結婚式をやって、最後の締めにここでもやるらしい。貴族って面倒だ。
領主様は花嫁一行を迎えるために一足先に帰ってきて準備を進めている。オイラたちもその準備で大わらわだ。
「結婚か~」
やっぱ女の子って結婚に憧れるのかなぁ? ふと気になって屋敷で一緒に働いている幼馴染みの女の子を見る。
「何見てんのよ」
オイラの視線に気づいて、威嚇してくる。なんか、オイラにだけ当たりが強い気がする。
昔はそんなことなかったのに・・・ 幼馴染みの気安さだろうか?
花嫁の一行が着いたという連絡が入った途端、彼女は屋敷を飛び出す。強がっても、やっぱり花嫁に興味津々みたいだ。
オイラも気になって付いて行ってみる。
「ほへ~っ」
つい、ため息が出てしまう。馬車が屋敷の庭に入りきらずに、敷地外にもあふれている。こんなにいっぱいの馬車は初めて見る。
馬車だでけでなく、馬に乗っている鎧姿の屈様そうなオジサンまでいる。
近所のオジサンも恐る恐る遠巻きに眺めるだけだ。
「頑張るわよ!」
女の子は臆することなく、意気込みを語る。昨日まで一生懸命準備してたのに、まだ更に頑張るのか?
「・・・まあ、適当に頑張れば良いんじゃないかな」
花嫁一行を見てテンションが上がる女の子をなだめる。彼女が結婚するんじゃないんだから、気負う必要ないだろ。程々にしとかないと、身体を壊すぞ。
「何言ってんの? アンタも手伝うに決まってるでしょ」
そりゃ、手伝うさ。ただ、少し息抜きも考えろってことだ。
「じゃあ、頼むわね」
・・・えぇっ?
少し考えた後、彼女はあっさりと前言をひるがえし、馬車の最後尾を見に行くと言い出した。
息抜きって確かに言ったけど、いきなり抜け出すのか?
しかも、あのごついオッサンたちをもてなせって頼まれた。
えっ? あの一行に話しかけろってか? まあ、誰か対応しなくちゃならないけど、何でオイラが? ハンパない試練だ。
幸いにして、胆の据わったオバサンに代わってもらったが、彼女がいないのがバレた。
何でオイラがゲンコツを喰らうのか? 理不尽だ。




