領主を継いだので企みを突っぱねてみた
「さあ! 人材を連れてきましたわ」
令嬢は荷物の整理をお付きの侍女に任せると、男を並ばせてふんぞり返った。
何が始まるんだ?
彼らはひとりひとりオレに挨拶する。手の空いている屋敷の奴らもッそれを眺める。
え~と。ゴメン。意味が分からない。何がやりたいんだ?
昨日の結婚式で挨拶したした奴ら・・・だっけ? 一人二人は覚えているが、全員は覚えていない。
もしかして、こいつらの挨拶を聞き流していたのがバレたのか。どうせ、式が終わればもう会う事も無いから適当に相づちを打っていたんだけど・・・。
「しっかり聞きなさい」っていう再確認か。
目をそらす。
「・・・旦那様?」
令嬢がこっちを向いて呼びかけてきたので、つられて後ろを向く。そこには見習いのガキがいるが、女の子だ。
旦那様? あぁ、オレのことか。「何だい、妻よ?」とでも返せば良いのか?
だが、しかし、う~む。何となく、そう呼ぶのは嫌だ。いや、特に理由があるあ訳じゃないんだが・・・
かといって、『お前』とか呼んだら怒られそうだ。まあ、ここは無難に名前呼びが適当か?
「レイ・・・さま。その~、この者たちは何でしょうか」
彼女は何故か戸惑った後、
「彼らから配下にする者を選ぶと良いですわ」
何か、企んでいそうな笑みを浮かべている。
つまるところ、令嬢・・・レイさまが連れてきた家臣団から何人かをここで雇えってことか。
そんなの雇う金ある訳ないだろ!
何、自分の有能な手下を入れてここを支配するつもりなのか!? 怖っっ!? 何、その真っ黒な思考は・・・
「新たな部下なんて不要だ。そんなに仕事もないしな」
もう、遠慮しての敬語は止めだ。
確かに、王都に家令とそれについていった兵士が行ってしまって、ここで働いているのはおばちゃんズを除けば、5人の兵士だけだ。でも、何も事件起きないし、必要ないだろ? 忙しくなるのは秋の税収時期くらいだ。
それに見習いのガキどもがせっかく、育ってきたのに勿体ない。いや、情が移ったわけではない。
そうだ、うん。金が勿体ない。どうせ、ろくな仕事がないのだから、優秀で給与が高額な奴を雇うより、凡庸でも低コストなやつを雇った方がいいに決まってる。何より、まだ食費の元を取れてない。
「うん。こいつらが育ってきたから不要だ」
「この子らは?」
ほら、この女に追い出されたくなかったら、お前らも何か言え。憐れみを乞うように、だぞ。
「オイラたち一生懸命頑張ります」
というか、お前ガチでビビってるんじゃないのか。
「分かりましたわ。そこまで言うのなら、このお話はなかったことにしますわ」
えっ? いいのか? あっけなく意見を撤回したぞ。もしかして、この女って見た目より割とちょろいのか。




