人材派遣
「さあ! 人材を連れてきましたわ」
先ほどは失敗しましたが、今度は大丈夫ですわ。
わたくしは夫婦となった彼と屋敷の皆に改めて若者を並べて紹介します。この人たちははわたくしの親類ではありませんが、今回の嫁入りの一行を護衛して地元の領地から付いて来てくれた者たちです。
付いてきた方のほとんどは帰ってしまいますが、一部わたくしの元に残す予定です。
連れてきた全員を残すことは無理ですが、2,3人ならわたくしの采配で部下として残して良いとお父様から許可を得ています。
まだ若いですが、将来有望な者たちを選りすぐりですわ。領地を治めるにあたって、部下に不自由していることは調査済みです。
直属の部下が一桁って・・・、小さな領地といっても、さぞ不自由していたことでしょう。
まあ、若いと言っても、わたくしよりは皆年上ですけれど。もちろん、皆一通り最低限の学問・武術は修めています。そこの彼なんか弓術に優れていますし、こっちの方は法令に明るいですわ。
誰を選んでも、即戦力として領地経営の手助けとなることでしょう。
さあ! 喜ぶと良いですわよ!
あら? ・・・反応が鈍いですわね。
目をそらしています。
もしかして、警戒しているのかしら。でも、人材交流、文化の流入による領地の活性化を狙って嫁入りに家臣を連れてくるのは普通ですわよ。
まあ、警戒している通り、密偵として嫁入り先の情報入手の側面があるのは否定しませんけれど。
「・・・え~と」
声を掛けようとして、ちょっと迷います。
もう夫婦ですけれど、いきなり名前呼びは馴れ馴れしいかしら。というか、いきなりの名前呼びは照れます。
「・・・旦那様?」
『貴方』と、呼ぶか迷いましたが、その呼び方は夫以外の呼びかけにも使います。これが無難でしょう。
「レイさま。その~、この者たちは何でしょうか」
旦那様は最初から名前呼びですか!? 随分と積極的ですわね。
でも、その割には敬語を使っていますし、旦那様も夫婦の距離感を手探りなのかしら。
なお、わたくしは『レイ』という名です。--あらっ? わたくしは誰に説明しているのでしょう?
それより旦那様の質問ですわね。
「彼らから配下にする者を選ぶと良いですわ」
自信をもって推薦する者たちです。さあ、誰が良いでしょう?
しかし、旦那様は突っぱねます。
「新たな部下なんて不要だ。そんなに仕事もないしな」
仕事がないって? そんなはずありませんわ。
領地の開発に、徴税に、住民の争いごとの調停、街の治安維持。
先の戦争から十数年経っているといっても最低限の自衛のためにも武力は必要です。
「幾ら田舎とはいっても、盗賊の被害がゼロとはいかないでしょう」
そういえば、被害の話を聞かないですわね。周囲の領地では盗賊が出た話を聞くというのに。
「うん。こいつらが育ってきたから不要だ」
「この子らは?」
以前訪れたときにこの屋敷の庭で遊んでいた子らでしょう。この子らを部下として使うの? あの時よりもちょっとだけ大人になっていますけれど、まだ成人前でしょ。役立つのかしら?
「オイラたち一生懸命頑張ります」
精一杯拳を握りしめた男の子が主張します。泣きそうな顔で、旦那様の後ろから。
はぁ~~~。子供は可愛がるだけでは駄目ですわよ。公私はきちんと分けないと。
でも、身内を大事にするというのなら、仕方ないですわね。古来より泣く子と地頭には勝てぬ、と言いますし。
「分かりましたわ。そこまで言うのなら、このお話はなかったことにしますわ」
せっかく来てくれたのに彼らには申し訳ないわ。後で謝っておきましょう。




