嫁入り
馬車が街道を列をなして進んでいます。その一台にわたくしも侍女と一緒に乗っています。婚約者殿が今回のために整備した街道ですわね。以前来た時よりも道幅も広がり、デコボコもなくなっています。
いえ、もう結婚したから呼び方も変えなくては。何て呼んだら良いのかしら? まあ、後で考えましょう。
「でも、こんなに馬車って必要かしら?」
乗っている馬車の小窓から連なっている他の馬車を見てため息をつきます。
わたくしは今、物凄いゴテゴテした服を重ね着させられています。こんな恰好でなければ、馬にも乗れるから楽ですのに。
「その花嫁衣裳は昔からのしきたりで決まっていますから、諦めてください。あと、花嫁が馬に乗って現れるなんて論外です」
良いじゃない。着いてから着替えれば。昔からの慣習に文句を言っても詮無いことかもしれないけれど。
「あの馬車も大半がお嬢さまの嫁入りに頂いた贈り物ですよ」
何が入っているの? わたくしが自分で用意した荷物なんてあの一台分に満たないはずですわ。
離れて明らかに種類の違う馬車も続いているじゃないの。
「あれって、どこの者かしら? ウチの馬車じゃないわよね?」
「あちらは商人の一団です。どうやら、金の匂いを嗅ぎつけたようで。蹴散らしましょうか?」
「何言っているの!?」
そんな物騒なことはしなくてよろしいですわ。まあ、追い払うほどではないでしょう。一応不審な動きがないかだけ見ていれば良いですわ。
そんなこんな?で、街に着き、屋敷へ向かいます。以前訪れたときは庭で子供たちが遊んでいましたが、見当たりません。代わりに大人の領民たちが集まっていました。でも、こちらに近づくでもなく、遠巻きにこちらを伺っています。
「どうしたのかしら。何故か、怖がられていない?」
「怖がられているのは、多分護衛の方たちですよ」
侍女に言われて、道中付き添って来てくれた方々を見回します。
屈強な男性たちが剣を佩き、完全武装で騎乗しています。頼もさは感じても、怖いとは思いません。地元ではむしろ領民たちに人気者ですわよ。儀式用なので、煌びやかも兼ねているので強度は劣りますが、ちゃんと切れます。
「所変われば、領民も変わります。慣れない方には威圧的に感じるのでしょう。大丈夫です。お嬢さまが登場で、バーンと空気を変えましょう」
そんなこと言われると余計出て行きづらいですわよ。
静々と侍女の手を借り、馬車から降ります。
「微笑んで、胸元で手を軽く振ってください。お嬢さま」
息をのむ領民たち。緊張していた空気が緩むのを感じます。
好意的に受け入れられたと思って、良いのかしら?
一室に案内されて準備をします。道中で着ていた花嫁衣装を結婚式用に着替えますが、わざわざ着替える意味ってかるのあるしら?
良いじゃない。同じで。そう思って、侍女を見ますが、
「駄目です」
ニッコリと笑って、一刀両断します。
まあ、判ってましたけれど。
「はいはい。黙ってお人形になりますわよ」
別の重い衣装を着せられて、真っ白く化粧を塗りたくられて・・・ 鏡を見ても自分とは思えないですわ。
「やっぱり化粧って慣れないですわね」
入れ替わりに子供たちがわたくしの控室をこっそりのぞいていきます。
あの子らをぎゅっと抱きしめてストレス解消したいですが、化粧の仕上げで動けません。
侍女は眉を吊り上げますが、良いじゃないの。微笑ましくて。




