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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
張り倒しますわよ、婚約者殿

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ある空回りする兵士の話


 街道の工事現場で領主様の代わりに料理担当をしているおばちゃんから狼煙が上がった。

 珍しいっスね。一応、緊急用に決めてあるけれど使う事なんて記憶にある限り、一度もなかったっス。

 単におばちゃんが好奇心で使ってみたのかもしれないっス。


 え~と、あの色は・・・不明危険勢力有り。注意されたし。十人未満。


 それだけの情報。余り役には立たない。まあ、煙の色だけじゃあ、大した情報量はないので仕方ないっス。

 でも、危険勢力って・・・何かの間違いじゃないっスか?


 一応、同僚の先輩に伝えて、街の入り口にある詰所の外で、ぼ~っと待つ。今日も平和そのもの。

 う~ん。警戒する必要あるんスかね。


 ややあって、馬に乗った女性が現れた。あの女性が危険勢力? ふむ、見たことない女性っス。だけど、そんな物騒な人には見えないっス。

 でも、こんな田舎に、何の用っスかね? ここに来る人なんて限られた顔見知りの人ばっかりなので珍しいっス。例外はたまに来る食い詰めた流浪人くらいっス。ああ、そう云えばこの間領主様の任命書を持ってきた一団もいたっスね。

 どれでもなさそうっスね。

 はて? う~ん。珍しいには珍しいけれど、狼煙を上げるほど危険ではないと思うっス。


 先輩はその女性と2つ,3つ言葉を交わすと、あっさりと街の中へ通す。

「あっさり通して良かったんスか?」

「ああ、真偽の程はわからんが、国の通行証を持っていたからな。本物だった場合、下手にに詮索するとこっちの首が飛ぶ」

 えっ? なんスか、そんなモノがあるんスか? 見たことないんスけど。

「まあ、ここを行き来している人は持っていないな。一応、領主様がもってるはずだぞ。自分もちゃんと見たことないけどな」

 ちゃんと見た人いないなら、偽造してもばれなそうっスね。

「ちなみに、偽造は死罪だぞ。あんな物無くても通れるのに、わざわざ提示してきたんだ。偽物じゃあるまい」

「それでも通行料はとるんスね」

 そんなスゴイの持ってるんなら無料で通れそうなもんなのに。それは別口なんスね。

「まあ、貰えるもんは貰っとかないと。 と言う訳で、仕事だ」




「お嬢さん。どこへ行くっスか?」

 先輩に言われ、女性を追う。きょろきょろしながら歩いているので、追いつくのは容易だった。

 声を掛けると怪訝な顔をしたので、にこやかスマイルで言葉を続けるっス。

「俺はこの街を守る兵士っスよ。お困りじゃないっスか?」

「困ったことはありません。ご自分の職務に戻ったら如何かしら」

 冷たい反応。

「いや~、今の俺の職務は右も左も分からない綺麗なお嬢さんを案内することっスよ。泊りっスか? いい宿屋を紹介するっスよ。といっても、この街には一軒しかないっスけど」

 その後も友好的にしゃべりかけ続けるけれど、反応は芳しくない。・・・というか、ガン無視っス。


 その女性の目的地が領主様の屋敷と判明したので取って返す。

「あのお嬢さん。どっかの貴族か、そこに仕える人っスね。髪も定期的に手入れしているようだし、馬の扱いも慣れているっス。腰の剣も鞘に結構細かい傷があるから、それなりに使いこまれているっス。荷物は軽い・・・多分服っス。野営の準備も持っていないから、長旅をしている雰囲気はないっス」

 知れたことはほとんどないけれどひとりごちて木簡に人相、特徴を書き入れるっス。見た目はちょっときつそうな目つきのクール美人、と。

 この木簡はあの女性が危険がないと判明するまで詰所に保管しておくことになる。


 一応、詰所に戻る前におばちゃんに一言伝えておいた方が良いっスかね。女性の目的も分からないし注意を促しとくっス。

 屋敷の裏に回り、その姿を探すと厨房に別の近所おばちゃんと談話していた。

「ああ、おばちゃん。いたっスね」

 件の女性の情報を伝えようとすると、

「ああ、もう聞いたよ。そのお嬢さんは坊ちゃんの婚約者だってさ」

 何でそんなこと知ってるっスか? でも、あの美人さんが・・・? う~ん。俺の好みじゃないっスけど、美人と結婚できるなんて領主様が羨ましいっス。

「何馬鹿なことを言ってるんだい。アンタはさっさと詰所に戻りな。

 じゃあ、様子を見に行こうかね。良くない噂も聞くし、坊ちゃんのお嫁さんに相応しいか自分の目で確かめないと」




 おばちゃんに追い返されて詰所に戻ると、ごつい体格のオッサンたちが詰所の一部屋を占拠していた。

 えっ、何スか。この状況は? ヤバい状況?

 俺の困惑を見て、座っていたオッサンの一人が立ち上がった。

「我々は怪しい者ではない」

 剣をぶら下げてるし、めちゃくちゃ怪しいっスよ。

「大丈夫、大丈夫。ちょっと話を聞いているだけだよ。強面だけれど、彼らに多分・・・害は無いから」

 オッサンの体格のせいで影になって見えなかったが、奥に先輩がいたようだ。

「多分って、何じゃ? 正しく無害じゃ」

「ちょっと、急に立ち上がらないで」

 狭い部屋でもみ合っていた。

「巡回行ってくるっス」

 女性の身元を追記した木簡を机にそっと置いて、見なかったことにした。



 へえ~、あれが領主様の婚約者っスか。今度会ったら俺が領主様の良い所をあることないこと吹聴しておくっス。

 俺ってば気が利く男っスね。


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