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情緒不安定なお嬢さまの話


「婚約破棄ですわ!」

 戻ってきたお嬢さまは憤慨していました。何があったのでしょう? あまりにも帰ってくるのが早すぎます。

「何もないですわよ! もう、帰りますわよ。帰りの馬車の中でも臭いですし、もう最悪・・・」

 何やら癇癪を起しています。どう考えても、何でもないことないでしょうに。


 近づいてお召し物を替えようとすると・・・お嬢さま、香水臭いですよ。どう考えても、かけ過ぎです。匂いについては私の言葉を良く聞かなかったお嬢さまの自業自得です。『ひと吹き』って言ったじゃないですか。

「早く風呂に入って下さい。あと、帰るっていっても、準備もあるんですからいきなりは無理ですよ」

 呆れつつ、湯殿の用意を別の侍女に申し付けます。


「身一つで大丈夫ですわ。用意なんて不要です。気分転換も兼ねて馬で帰りますもの。貴方は後からゆっくりと帰ってくれば良いわ」

 そういう問題ではありません。仮にも令嬢なのですから、ひとり馬で帰るなんて暴挙は自重してください。

「子供じゃないんだから、一人で大丈夫ですわ」

「子供じゃないから、危険があるって分かりませんか?」

「不埒な者なんて一蹴してやりまわすわよ」

 下手に腕に覚えがあると、厄介です。


 お風呂に入っても、頭が冷えなかったお嬢さまは、さっさと自分で身支度を整えます。

「寄り道しますから、供は不要ですわ。あと、お父様には内緒ですわよ」

「分かりました。ご当主様には内緒ですね」

 分かってます。では、夫の同僚の方に話したのはセーフですね。

「ちょっと行ってきますわ」

 と、馬に乗って行ってしまった。護衛の方には急なお願いで申し訳なかったけれど、これで安心です。



◇◇◇◇◇



 私が領地へ戻ってきたのと時を同じくしてお嬢さまも帰ってきました。しかし、無事戻ってきたにもかかわらず、お嬢さまの様子が変です。いつもなら剣の素振りは一心不乱にやっているのに、独り言を言いながら素振りしています。一言でいえば、情緒不安定。


 この間、月のものは過ぎたばかりですし・・・一体どうしたのでしょう。

 婚約者殿との会談の後、「婚約破棄ですわ!」と息巻いていたのに、先日出かけたら、「まあ、仕方ないですわね。政略結婚は貴族の義務ですし。仕方ないですわね」

 2回言った。しかも、自分に言い聞かせるように。


 ・・・一体何があったのでしょうか?


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