ある義姉を迎える女の話
姐様が襲来したと聞いて、慌てて出迎える。二人の息子も一緒だ。
最悪の場合はこの子らはイケニエになってもらう腹積もりだ。
子供も一緒なら無体な事はしないだろう。しないよね?
さあ、このおばさんに媚を売るんだ。
頭を叩かれました。何で?
「姐様、本日はイカヨウナご用でいらっしゃったのでせうか」
叩かれた頭をさすりながら聞いてみる。
姐様は一人じゃなく、中年女性を伴っていた。多分知らないヒトだと思う。単にあたしが覚えてないだけかもしれないけど。
「アナタは、私の手紙・・・まさか読んでないんですか?」
手紙って・・・何?
「え~と、うんっ? モチロン読んでるよ。うん、でもでも一応確認で聞いてみただけだよ、うん」
ヤバい。きっと最近確認してない決裁書類と一緒の箱に埋もれてるんだよね。
「なら、復習は終えてますよね」
姐様は訳の分からない意味不明なことを続ける。
復讐って。誰に? ・・・この間ご飯を食べに行ったら無理やり無駄な勉強をさせられたことかな。拷問にも匹敵する精神的苦痛を味わったから、ちゃんとやり返したかってこと?
「うん、当然、バッチリだよ」
返事は勢いだ、と思う。みんなにも返事は優等生だって言われてる。
当然、バッチリ理解してないけど、聞き返せるはずもない。だって怖いもん。
あたしの建前の答えに満足したのか、笑みを浮かべている。
「流石の貴女でも十二歳までの分は完璧ですよね」
更に意味が分からなくなったけど、後で確認すればイイよね。
あたしの巧みな話術で聞き出したところ、一緒にいた女の人は王都で評判の偉い先生だということが判明した。
なんと! あたしに勉強を教えるためにわざわざ呼び寄せたんだって。
無駄なことしなくてイイのに。
断固抗議だ。いくらあたしだって、いつまでも姐様の言いなりじゃないんだからね。もう立派な大人だよ。--と、息子に言わせてみた。
その先生は「全くその通りです」と、同意してくれた。
何だ、話の分かるヒトじゃない。仲良くなれそう。
けれど、イジワルな姐様が待ったをかける。そして、そのまま先生と言い争う。
え~と、ふたりって仲悪いの?
息子らは飽きて逃げ出してるし、あたしももう退出してイイよね。




