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赤面


「お嬢さま、春画って知っていますか? いえ、愚問でしたね。申し訳ありません。もちろん、博識なお嬢さまなら当然知っていますよね」

 慇懃無礼な態度で唐突に聞いてきたのはわたくしの侍女でした。


 ・・・春画? 耳にしたことないけれど、言葉を聞く限りでは春の風景を描いた絵画かしら?

 でも、薄く笑う彼女を見ると、違うようです。あれは悪戯を思いついた時の顔です。

 つまり、春画とは普通の絵ではないのでしょう。

 一応、一般教養として絵の歴史なども学びましたが、そこでは出てこなかったジャンルです。

 正直、絵の良し悪しも分かりません。どれが良いかなんて、さっぱりです。


「大人なら知っていて当然ですけれども、・・・お子様なお嬢さまは知らないのですか~~?」


 そこまで言われたら、知らないなんて言えません。わたくしはもう大人ですもの。


「ちょっと、ど忘れしただけですわ。ええ、知っていますとも。そう言う貴方こそ詳しく知っているのかしら?」


「ええ、私は大人ですから。ですが残念なことに、実物は所持していないのです。けれども、聞くところによると、大人の殿方たちの中で今密かな流行中らしいですよ。お嬢さまには言うまでもないかもしれませんが」


「・・・そうみたいですわね。ちなみに貴方はどんな絵が好きかしら?」


「いえいえ。恥ずかしながら、私は余り絵画に興味がないので、目にしたことはないのです。ですが、教養深いお嬢さまなら、色々な春画を目にしているでしょう?」


「と、当然ですわ。あれなんか良かったっですわ」


「あれ? どうかしましたか? ま・さ・か!? 知ったかぶりではないですよね」


「何を疑っているのかしら?」


「他の人に聞くなんて恥ずかしい真似しませんよね」


 当然ですわ。 そっと目をそらす。

 ・・・後で、こっそりお母様に聞いてみましょう。



◇◇◇◇◇



・・

・・・

・・・・

・・・・・   破廉恥ですわ~~!!



「何でそんなことに興味が出てきたの? もう気になるお年頃かしら?」

 自分でも耳まで真っ赤になったのを自覚しながら、しどろもどろに説明します。

「全く、あの娘は・・・」

 お母様はため息をついて、侍女を呼び出しました。


 ふんっ。お母様にこってり絞られればいいですわ。


 しかし、召し出された侍女は、しれっとした顔で妄言をぬかします。

「お嬢さまのことを思って助言させていただいただけです。いずれお嫁に行かれるのですから、無知なままでは逆に拙いと思います」


「けれど・・・」

「しかしながら・・・」


 ーー雲行きが怪しい。



「さあ、閨での作法をお教えしますよ~~~」

 嫌らしい笑みを浮かべて近づいて来る侍女。気まずそうにあさっての方向を見るお母様。脱兎のごとく逃げ出すわたくし。


 まだ早いですわ! 結婚なんてまだまだ先ですわよ!! わたくしまだ子供で充分です!!!


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