領主を継いだので妄想をぶった切ってみた
部屋に居座って、結局泊まりやがった下女と結婚式を挙げることになった。ーー何故か、レイさま主催で。
どういう経緯でこうなったのか、当人であるオレが何故か把握していない。
気がついたら、周囲の奴らに結婚することが決められていた。
さては・・・あの日、既成事実を狙ってやがったな。恐ろしい。計画的な犯行だったに違いない。
実際は何も無かったんだけど。
正直な話、オレに浮気するような度胸はない。レイさまの反応が怖いから他の女に手を出すなんてもっての外だ。
でも、あの日オレがその下女に手を出したことになっている。そんな誤解がまかり通っている。
その所為か、あいつを嫁に加えるとこにレイさまも反対していない。今さら何でそう言う事言うの?という反応だ。おばちゃんや屋敷いる他の下女たちも同様の反応だ。
いつの間にか、外堀が埋められていた。
女って潔癖だから、こういうの嫌がるもんじゃないのか?
マジで良いの? みんな、あいつに弱味握られてんじゃないのか?
「領主様、やっぱりハーレム化計画を狙ってたんスね!? 他は誰を狙ってるっスか? ここは男の甲斐性の見せ所っスよ。羨ましいっス!」
馬鹿がどうしてか尊敬の目で見てくるが無視だ。
ハーレムなんて企む訳あるか! 厄介なのが一人増えやがったんぞ!? 全く羨む要素が見当たらない。
あいつ、オレの嫁になって、優雅な結婚な生活を送ろうと企んでやがるんじゃないのか。
だが、お生憎さま。レイさまがガンガン浪費するから、贅沢する金なんて無いぞ。
数日前だって、恐ろしく金のかかる計画を提案してきた。
「旦那様。この谷に作ろうと思うですけれど?」
レイさまが地図と設計図を持ってきた。
石造りの水道橋? いくらかかると思ってんだよ。こんな豪華な設備要らねえよ。
隣領地に出かけてて手下どもにまかせっきりだと思ってたのに、妙な知識を得てきやがったな。
「十年、二十年先を見据えた計画ですわ」
「金なんてどっから捻出するつもりだよ? そんなモンに金かけるなんて、妄想だけにしとけよ」
そもそもそんなに大量の石なんてどっから持ってくるんだ?
ここら辺に採掘場なんてないぞ。運搬費だって馬鹿にならない。
こき使っている何のとりえもない領民の奴らは食い物現物支給で給金なんて払っていないが、専門職の職人や商人は金払わなきゃダメだろう。
オレだって言うべき時はビシッと言うのだ。内心ビビってたけのは内緒だ。
「旦那様の案で検討しますわ」
虚勢を張ったオレの主張に、流石のレイ様も折れる。
ふぅ~。これ以上オレの小遣い減らされてたまるか。
今回だけに関わらず、レイさまが入ってきたはずの税収を全部内政につぎ込みやがるから金無いんだよ。
借金はNGだ。ああいうのは一度借りると際限なくずるずると借りることになって、気づいた時には手遅れになってるもんなんだよ。
屋敷のガキどもも遠慮なくバクバク食いやがるから食費も馬鹿にならない。オレも同じモノ食うんだし、質を落としたくない。
贅沢? 何ソレ?っていう生活だ。領民どもに比べれば決して貧しくはないが、とりわけ裕福でもない。
農家のおっさん達に野菜を分けてもらう領主って何だよ? 全然貴族っぽい威厳ゼロだろ。
美味い肉が食いたい。畜産業でも始めるか? でも、面倒だよな。




