ある少年の話
今は昔、あるところにひとりの少年がいました。
少年の父親はとても強い剣士でした。
少年も父親の様に強くなりたいと願いました。
少年はいっぱい修行をして、十人の戦士に勝てるようになりました。
しかし、少年は百人の戦士に負けてしまいました。
少年はいっぱい仲間を集め、百人の戦士に勝てるようになりました。
しかし、少年は一つの計略に負けてしまいました。
少年はいっぱい勉強をして、逆に罠にかけて勝てるようになりました。
しかし、少年は満足できませんでした。
少年は青年になり、色々な戦場で活躍しました。王様は青年に領地を与え、貴族に取り立てました。けれど、青年は地位も名誉も興味ありませんでした。
青年はもっと強くなるべく鍛錬を続けました。
ある時、隣国で王子たちの間で王位争いが起きていました。王位争いは周囲の国を巻き込む内乱にまで発展してしまいました。
青年は上司の命令でいっぱいの兵士を従え隣国に向かいました。
隣国へ向かう途中、青年は可愛らしいお姫様に出会いました。お姫様は王位争いを避け、逃げてきたのでした。
仕方なく、青年はお姫様を保護しました。しかし、貧弱なお姫様には興味がありませんでした。一人の王子を確保、敵対するものを叩き潰しました。その容赦なさに青年は多くの人々に怖がられました。
お姫様は青年がみんなに恐れられても、にこにこ微笑んでいます。
お姫様は青年が邪険に扱っても、にこにこ微笑んでいます。
お姫様は青年が意地悪なことを言っても、にこにこ微笑んでいます。
しばらくして、隣国の内乱が収まり、お姫様の弟が王様になりました。役目を終えた青年は自分の国に戻ることになりました。
お姫様も青年に付いて来て、貴賓として居座りました。何故か隣国に帰ろうとしません。
国に帰った青年に王様は欲しいものを尋ねました。
何もいりません、と青年は答えました。
ならば代わりに私が、その場にいたお姫様が代わりに答えました。
青年はいっぱい努力して、幾多の達人に勝てるようになりました。
しかし、青年はひとりのお姫様に勝てませんでした。