第33話 喜びの歌
「よかったな。」
シンがポツリと呟いた。シン達は今村人達と一緒に食事をしていた。村人達には喜びのあまりに涙を流していた。シンの言葉にリベロが反応した。
「シン、僕すごく感謝してるよ。でも…」
「なんだ?」
「本当は悔しいんだ。自分がこんなに無力で、人に頼ることしか出来なくて。嬉しいのに悔しいんだ。」
「そりゃそうだろ。俺だって同じ状態になったら悔しいって思うぜ。」
シンとリベロはぺルナが幸せそうに笑っているところを眺めていた。リベロは少し険しい表情をしていた。
「大事なモノは自分で守りたいって思うだろ。」
「うん…。だからさ、僕レークスさんにいわれたこと全力で頑張ってみるよ!」
「この村を昔にみたいにってやつか?」
「昔よりも比べ物にならないくらい良くする。決めたんだ。」
アウラがぺルナに何か耳打ちをしていた。ぺルナはシン達の方を恥ずかしそうにちらりと見た。そして息を吸った後、歌を歌い始めた。優しく柔らかく紡がれる歌に村人達も耳を傾けていた。歌い終わるとパチパチと拍手が起こった。ぺルナは顔を真っ赤にしていた。
「お兄ちゃんとシンにお礼したかったんだって。」
アウラが楽しそうに言った。二人は恥ずかしくなったのか、顔をかいたり目線をはずしたりしていた。
「シン達はいつまでここにいるの?」
リベロが思いついたように言った。
「明日には出発するぜ。サガもそれまでにやんなきゃいけないこと済ませるって言ってたしな!」
サガに聞いた話によると、食糧の配給は貴族長にも保障してもらったそうだ。そして村長は別のエルフが後任で来るということだった。それによって村が繁栄すると決まってはいないが、村人達にとって士気が高まることは間違いないことだった。なにより今みんなには笑顔が溢れていた。シンはその様を見ていると、いじめられていた頃の自分も救えたような気持ちになった。心は晴れ晴れとしていた。
「さすがね☆」
サガが村長宅から出てくるとレークスが笑顔で出迎えた。
「なんのことでしょうか。」
「とぼけたってダメよ☆被害を最小限に治めたんでしょ。回りくどい方法を使ってね。」
沈黙するサガになおレークスは言葉を連ねる。
「最初から貴族長を呼べば終わりだったでしょ。そうしなかったのは理由があるのよね☆」
「…それでは根本的な解決になりません。最も問題があったのは村長ですが、村人も改める必要があると判断しました。」
「だからリベロくんを使ったのね☆出会いは偶然でも利用できると思ったんでしょ?」
話が終わるまでレークスが離さないと判断したサガは壁によりかかって会話を続けた。それを楽しそうにレークスは見ていた。
「まあ、本当に貴方がしたかったのは反乱を未然に防ぐってことなんでしょうけど。何か問題が起きた場合考えるべきは最小限に被害を抑えることですものね。村人にすべてを掌握されるよりは、食糧配給をするほうが数倍ましだもの☆」
「村人達の怒りのガス抜きとしてはシンの闘いは一番良い方法でした。食糧配給もすればもはや村人達は反乱は考えないでしょう。」
「貴族長を呼んだのは、村長を換えるためでしょ。よく証拠を集めたわね☆」
不正の証拠を手に入れることは難しくなかった。サガはコーザ邸の使用人に小さな借りがあった。それと交渉で簡単に書類を手に入れた。もっともそれによってさらに問題が発生したのはまた別の話となる。
「よかったわね、思い通りに終わって☆」
「レークス様こそ、目的を達成されて結構なことです。」
伏し目がちだったサガがまっすぐレークスをみた。ほとんど睨んでいるような目だった。レークスをやれやれというポーズをとり後ろをむいた。
「結果オーライってことね。シンちゃん達にとってはいいことだったのだし。汚いことは大人がやればいいのよ、フフ☆」




