第32話 因果応報
「デアフロスのルールではブローチを奪った者の勝ちです。よってこの戦いの勝者はシン並びに代理依頼者のリベロです。」
サガの言葉にその場の全てが静まり返った。そしてどよめく様な声が広がった。
「…か、勝ったんだ!!」
リベロが声を発した。シンはそれに気づきニカッと笑った。民衆もシンの勝利を確信し歓喜の声を上げた。
「認めんぞぉぉぉおぉぉぉ!!!!」
コーザが呻くような声を出す。それに村人たちは怯えた様子をみせる。ギミーはただじっと見つめていた。
「認めなくとも、結果は変えられません。条件の通りにまずアルビオの定めている一日の食事摂取量を村人達に与えることです。」
「しかし!!」
「今回は“代理”で行っているので、デアフロスの証拠が賛同書で残っています。ここは“法と秩序”を重んじるアルビオの領地です。法に背けば裁判となりますが、よろしいのですか?」
冷静に話すサガに、全身から汗を噴出しながらコーザは反論した。しかしどちらに道理があるのかは明らかであった。シンはよろけながらリベロ達のところに戻ってきた。すぐさまアウラが回復魔法をかけていた。
「デアフロスってずいぶんいい加減みたいだな。」
「ただの喧嘩でもデアフロスするからね。大概口約束だよ。今回みたいに仲介に王族が入ってしかも賛同書があるって、すっごくレアだよね。」
シンの率直な感想にアウラが答えた。そんなもんかとシンが頷く。
「し・か・も、すべての村人が証言者よ☆これなら村人全員から賛同するだろうし、ワタシのサインいらないくらいね!」
楽しそうにレークスがいった。その言葉を聴いた瞬間リベロは驚いた。もしかしてこうなることをサガは予測していたのではと思ったのだ。リベロの驚いた顔を見てシンは不思議そうな顔をしていた。
「ガキがあぁぁぁ!!!許さんぞ!!」
コーザがリベロの方へ突進してきた。シンとレークスが立ちはだかり、それを止めようとした。
「お前のような恥さらしがいようとはな。」
声とともに威厳を体現したような男がコーザの前に立った。初めてみるエルフであった。しかしコーザは知っているようで大いにうろたえていた。そしてそのまま崩れ落ちるように座り込む。
「彼は貴族長のグラディウス様です。アルビオに属する貴族を治める方です。」
そういうとサガはグラディウスとコーザに歩み寄り、コーザに立つように促す。三人はコーザの屋敷へと消えていった。シンはそれを見届けると仰向けに倒れこんだ。急いでアウラが回復魔法をかけ始める。リベロはぺルナに勝ったと伝えに行っていた。
「シンといったな。」
するとギミーが話しかけてきた。シンはゆっくりと体を起こし座って対峙した。
「ああ。」
「俺に勝つ自信があったのか?」
「全くなかったぜ。というより無我夢中で何にも考えてなかった、正直な。」
そういうとシンは笑った。ギミーはため息まじりの笑みを一瞬浮べた。何故シンやリベロに恐れを抱いていたのか。それはかつては自分にもあったであろう、ただひたむきに突き進むということを目の当たりにするのが恐ろしかったのだ。そして今の自分にはもう無いものだと認めるのが怖かったのだった。ギミーはシンに手をさし伸ばした。シンはその手を何の躊躇いもなく掴んだのだった。




