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-BIFROST-  作者: 阿山なつき
九つの魔宝編
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第31話 白き炎

「村長は申し訳ありませんが、席へ戻って頂けませんか。」


サガの淀みない声がコーザに降りかかった。コーザは一瞬顔を歪めたが静かに自分の席へ戻った。焦ることはないのだと自分に言い聞かせる。相手は小僧だ。村一番の実力者であるギミーに勝てる筈がない。現にまた先ほどと同じ展開となっていた。ギミーの攻撃をシンが避け続ける。勝負は見えていた。


「おい。」


コーザは大声を上げた。しかし誰に向けての言葉なのかが分からない。周りの者たちは動揺して色々な方向を見る。


「もう勝負は見えた。村人は作業へ戻れ。今すぐにだ!」


その言葉に立ち去ろうとする村人たち。


「待ってよ!!」


リベロの裂くような声が響き渡った。


「お願いだからっ……、最後まで居て!!」

「早く立ち去れ!!」


村人達はリベロの声に反応するものの、コーザを恐れて歩みを止めない。当然のことだった。


「本当は、本当は僕じゃなきゃいけなかったんだ。いいや、みんなでやらなきゃいけなかったんだ。なのに関係ないシンを頼ったんだ。みんなこのままでいいの?こんなの家畜以下だ!!」


バンっと大きな音がなった。それに驚き村人達は足を止め振り向く。ギミーの黒き礫が発動したようで地面に抉られたような穴が開いていた。シンは体を反転させながらそれを楽しそうな顔をしながら凝視していた。


「それにしてもすごいわね☆」

「え?なにが?」


レークスの言葉にアウラが反応する。それに釣られるようにリベロも耳を傾ける。


「シンよ。あの子ついこないだまでズブの素人以下だったじゃない?それが闘いの経験者の攻撃を、身が軽いとは言え避け続けるなんてね☆」

「たしかにね。でもそれこそ特訓してたからじゃないの?」

「さっきシンが攻撃受けまくってるっていってたじゃない。まぁ、サガは文官にしてはよく鍛えているほうだけどね☆」


二人が会話している間にも闘いは繰り広げられている。今度はシンがギミーに詰め寄る。黒き礫とは腕の増強と共に、地面を叩きつけることでとんだ破片を鋭利な刃にする能力だった。もっともこの能力は断続的にしか発動できないという弱点があった。能力を使った後は少なくとも10秒は待機時間があった。それをカバーするために発動を途中で止めることが大半をしめており、好機と判断した場合のみ使用していた。ならばとシンは弱点に気づきわざと魔法を誘発させたのであった。もっともこれは攻撃を避ける自信がなければ行えない方法である。シンの手からは相変わらず炎は上がっておらずギミーの利き腕を掴もうとしたが、避けられてしまった。


「シンは余すことなく鍛錬を続けてきましたから。」


気がつくとレークスの隣に平然とした顔でサガがいた。


「あらあら、見てるの飽きたのかしら☆」

「さっさと決着をつけて欲しいものです。」


村人のざわめきが聞こえた。どうやら先に進めないようである。それはいわば見えない壁が立ち塞がっているように見えた。


「ふふ、なかなか思い切ったことするのね☆さすがだわ!」


そういうとレークスがサガに腕を絡めようとした。サガはそれをレークスの顔面に手をやる形で防いでいた。今の口ぶりだとどうやらサガが魔法を発動したようだった。


「どういうことなの?分からないことだらけだよ!!」

「シンが強くなる要因はいくらでもありますが、避けることに関してならエイトが大きな働きをしています。」


アウラの脳裏に浮かんだのは自由奔放に動き回る暴れ馬の姿であった。


「意思を持った生き物に乗るということは気づかなくとも体を使うものです。それが調教もまだな気性の荒いスレイプとなればなおのことです。アウラさんは気にも留めなかったかもしれませんが、この村に着いた段階でシンは自然に乗りこなしていました。それはエイトがシンに合わせたのでなく、シンがエイトに合わせられるだけの体幹を身につけたからです。だからシンは自在に自らの体を動かすことができ、結果ギミーの攻撃を避けることができるのです。」

「ってじゃあなんでサガの攻撃は避けられないの?」

「そんな暇与えないからです。」


真顔で語るサガにアウラは内心で恐れおののいていた。要するに今のシンはサガには及ばないが、ギミー相手なら攻撃を避けられる力は持っているということだった。それだけ話すとサガは元の審判の座に戻ったのだった。戻れなくなった村人達は最早残された道がこの勝負を見ることだけとなった。


「俺も一つ聞きたいことがある。」

「なんだ?」


お互いに動き回っている為、荒い息と汗をかいていた。


「殴られてまで俺がどういう奴か知りかったのか?」

「そうだぜ。」

「何故だ?」


ギミーの言葉にキョトンとした顔をするシン。ギミーには得体の知れない謎が蔓延っていた。それが気持ち悪くシンに聞くことで解消しようとしていた。


「何故もなにも知りたかっただけだ。」

「理由にならん。」

「本気じゃない奴と闘って勝とうが負けようが納得できねぇ、だからだ。」

「ほう。」

「つーことで、本気でやり合おうぜ!!}


そういうとシンはまたもや突進していく。ギミーも紋章を発動させる。正直この勝負は最早体力勝負となりかけていた。そうなる前にシンが攻撃したのはやはり正々堂々と勝敗をつけたいからであろう。この段階でギミーは何も考えなくなっていた。あるのはシンと同じように真っ向勝負だけであった。そう思うとギミーはまだ立場もなくやりたい放題やっていた昔を思い出していた。そしてそれが少し楽しいと思ったのは気のせいであったのかは定かではない。シンが黒き礫の発動圏内に差し掛かったところでギミーは地面を叩きつけた。飛び散った地面の破片が黒く刃の形となってシンに向かっていく。


「…………!!?」


避けると思っていたシンが黒き礫の攻撃を真っ向から食らった。驚いギミーは距離をとろうと後ろへ動いた。苦悶の表情を浮かべながらもシンは突進をやめない。身軽であるためかシンはみるみるとギミーに近づいていく。


「業腕!!」


そういうとシンの両手から白い炎が上がった。先ほどの熱さで炎の魔法だとわかっていたギミーはそれをなんとか避けていく。今両者は最も近距離で闘っていた。この機会を逃すわけにはいかない。避けているうちに黒き礫が発動可能になった。これが最後だと渾身の力で地面を叩いた。その時飛び交う礫の中でシンの胸にブローチがついていないことに気づいた。


「これで終わりだ!!」


血だらけになりながらシンは自らの手を突き出した。それをギミーは反転しながら逃れる。両者は動きを止め、あたりには静寂が訪れた。それをすべての者は固唾を呑んで見守る。


「俺の勝ちだな!!」


そういうシンの手にはブローチがあった。


「な、なにを言っている!!それはお前のだろう!!!」


コーザは叫ぶようにいった。確かにシンの胸にはブローチはなかった。


「あれ…ギミーの胸にもブローチがないよ!」


今度はリベロが声を上げた。それに反応するようにすべての者が一斉にギミーを見た。驚くことにギミーの胸にもブローチはなかった。


「これを見てもか?」


そういうとシンはブローチの角度を変えた。すると二つのブローチがぴったりくっつくあっていた。それを見たコーザは崩れ落ちるように這いつくばった。


「俺の負けだ。それはお前の炎の魔法でやったんだな。」

「ああ、あらかじめ熱しておいて固まるギリギリでくっつけたんだ。」

「だまされたな。」


二人の会話の答えを教えろといわんばかりに、アウラとリベロはレークスを見つめた。


「要するにシンはうまく炎を使ったってことよ。ギミーの腕を掴んだ時は内側のみ炎を発動させるでしょ?今は全部燃えていると見せかけて早い段階で内側の炎だけ消してたのよ。そんでいい具合になったブローチをギミーのブローチに当てて引き抜いたって寸法でしょうね☆」

「それって反則にならないの?」

「審判にもよるけど、ブローチを使ってはいけないというルールはないからセーフなんじゃない?」


不安そうに聞くアウラにレークスはお手上げといったポーズをとった。そしてそのままレークスはサガを指差した。


「サガ様これはっ!!」


その場にいるすべての者の視線がサガに(そそ)がれた。サガは少しの間考えるポーズをとりそして、口を開いた。










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