第29話 シンVSギミー
場所は変わりコーザ邸の一室。そこにコーザとギミーがいた。
「なんということだ!」
コーザは怒り狂い部屋にある書類などを撒き散らす。息は荒く汗を掻いていた。様々な手を使いなんとかサガの追求は逃れた。しかしデアフロスの勝敗とシンが提示する勝利条件では不利になることは目に見えて明らかであった。
「わかっているんだろうな。」
「はい、あんな小僧に負けません。」
ギロリとギミーを睨む。その目には怒り以外の焦りが垣間見えた。ギミーはそれを静観していた。
「これでお前が負けてみろ。村の奴らが反乱を起こしかねんぞ!」
「絶対に有り得ません。寧ろ村の者達に我々の勝ちを見せつけるというのは?」
ギミーがコーザに提案した。それを聞くとコーザはしばし動きを止め、ニヤリと笑ったのであった。
「よっしゃ!じゃあサイン集め開始だ!」
日が昇り始めた朝の中シンとアウラ、リベロはいた。農業を営むグリオでの村人の朝は早い。それに合わせて行動することになっていたのだ。
「あの後一人で何軒か回ったんだ。それで1つサイン貰った。」
「すげーな!」
「自分のことだから頼ってばっかりじゃ嫌なんだ。」
リベロはサインの書かれた紙を見せた。率直な感想を言うシンに照れを含んだ小さな笑顔で答えた。その表情はぺルナと被り、兄妹なんだなとシンは思った。アウラも感嘆の拍手をペチペチと鳴らす。
「あのサガっていう王族…信じれるんだよね?」
「おうよ、俺の仲間だ。」
「アタシも保証するよ!」
歩きながら言葉を投げかけるリベロにシンとアウラは自身満々に言った。サガと聞いてシンはリベロに聞きたかったことを思い出す。
「ギミーってどんな奴なんだ?」
「どんなも何もコーザの手下。いつも力づくで僕を追い返すんだ。」
「強そうだよね…。」
シンの質問に不貞腐れながらリベロは答えた。アウラは率直な感想を言う。
「全力で戦うだけだ。行こうぜ!」
一つの家の前で止まった。そしてドアを聞こえる程度に叩いたのであった。
「シンの勝利条件は村の食料改善、村長コーザの勝利条件は今後一切の反乱禁止です。それでは賛同書を見せて下さい。」
デアフロスを行う広場にシン達はいた。ギミーはシンと対峙し、コーザは椅子に座り酒を飲んでいた。そして村人達がそれを囲むようにびっしりと埋まっていた。シン達がサインを集めている最中に召集の声が村中に降り注いだのだ。気まずそうにリベロはサガに渡す。
「サインは全部で10ですか。必要な数に程遠いですね。これでは代理でデアフロスは行えません。」
結局手分けして村中を回ったが、たった三人で回りきれる筈がなかった。さらにサインを集めるなどというのは至難の業であった。
「皆、村長が怖いだけだ。」
「関係ありません。今ここで必要なのは代理の同意書が有るか否かです。」
ここで代理でなく個人で戦うことは出来た。しかし勝利内容となによりリベロの意思を尊重するためにはそれはできなかった。サガはいつもの通りに答えたのだろうが、シン達に冷たく響き渡ったのだった。
「ちくしょうっ!」
「これは、戦わずして我々の勝ちですかな!」
悔しがるシンに嘲笑うようにコーザは言った。やれることはやった。しかし村人から三分の二の同意を手に入れることは不可能だった。その絶望感にシンもアウラも、そしてリベロも頭が真っ白になる。
「はーいはい、ちょっと通してね☆」
重苦しい空気などお構いなしにレークスがシン達に歩みよる。そしてシン達を抱き寄せ小声で話し出す。
「戦いたい?」
「勿論だ!」
レークスの言葉にシンは大声で答える。密集していたのでリベロとアウラは五月蝿そうに顔をしかめる。それをレークスは楽しそうに見ていた。
「じゃあシーちゃんとリベロ君だったかしら?二人に一つずつ条件を出すわ☆それが出来れば助けてあげる。」
「なんでもいえ!」
「ぼ、僕も!」
レークスによって齎された希望の光にシン達の目は輝きだす。アウラは腑に落ちない顔をしていた。
「シーちゃんはワタシのお願いを一つ叶えてもらうわ。内容は思いついたらってことで☆リベロ君はデアフロス後、必ずこのグリオの村を昔のようにすること。できるかしら?」
「わかった。」
「僕もやる。」
「交渉成立ね☆」
シンとリベロは即座に答えた。レークスはシン達から身体を離しサガの元へ行き、同意書を裏返し書き込み始める。それをシン達は固唾を呑んで見守る。レークスが胸元からハンコを取り出し紙に押しその上から指をあてる。するとそこから光りが溢れ出し紋章が浮かび上がってきた。
「ラビリオの王族としてグリオ村リベロに賛同しここに証明するわ☆」
「そんなバカな!」
レークスの言葉に驚愕し声を荒げるコーザ。周りの村人も驚いていた。驚いていないのはシンとサガだけであった。最もシンはよく分かっていないという理由からだった。アウラも知らなかったのか、目が点になっている。
「これで賛同書は有効になりました。では、デアフロスを始めます。」
「待ってくだされ!」
コーザは立ち上がりわなわなと震えだす。それをサガは静観する。シン達はそれをじっと見つめていた。
「なんでしょうか?」
「こ、こんなことは認められませんぞ!」
「王族のサインです。一つで問題ありません。」
サガはシンとギミーに位置につくよう促した。シンは気合を入れながら進んでいく。ギミーは戸惑いながらも位置につく。
「わしは認めませんぞ!こんなこと!」
「ふーん、じゃあ戦争する?」
尚も抗うコーザにレークスが笑いながら言った。するとコーザの顔は青ざめ動きが止まる。
「ラビリオのエルフはアルビオが大嫌いだからね☆貴方がワタシにしたことを言ったらきっと喜んで戦争するわよ?」
「王族が旅商人をしているほうが悪い!」
「貴方に言われる筋合いはないわね☆そんなことより貴方の手下が勝てば問題ないんじゃない?」
レークスの言葉にハッとしたコーザは椅子に座る。しかし落ち着かないように足を揺すっていた。かなり動揺しているようである。言い合いが終わったと判断したサガが手を掲げる。
「ここに代理によるデアフロスを行います。始め!」
そしてシンとギミーのデアフロスが始まったのだった。




