第26話 恋愛禁忌主義
シンは鼻に布切れを入れ、少しムスッとした顔をしていた。アウラとレークスはリベロの妹に渡すお見舞いの品を探しに出かけていた。
サガが言うにはデアフロスの対決内容を伝えるという形で抜け出してきたらしい。実際は村人を調べた結果を聞きにきたのが本心だった。ちなみに対決内容は種類問わず何でも有りのシンプルなもので、対戦相手は大男のギミーだった。
「村長の扱いには困っていたので、シンの行動は助かりました。」
「あの!僕をデアフロスに出させて!」
「それは難しいでしょうね。」
リベロがサガに懇願する。それに対して否定的な返事をするサガ。
「王族、貴族のような支配階級に下級の者がデアフロスを挑む場合は賛同者のサインが必要になります。王族からのサインなら1つ、貴族からなら3つ、同族の場合は数が必要になります。」
「貴方の場合は全員が隷族ですのでこの村の三分の二からサインを貰わなければなりません。明日の午後までにそれができますか?」
「それはっ…。」
「補足ですが私は審判ですのでサインできません。」
「じゃあ俺が代理って形でやるのはどうなんだ?」
サガが事実を連ねていくに連れて、リベロは暗くなっていった。それを見ていたシンが思いついたことを言った。
「その場合も代理ですので、サインが必要です。」
「うまくいかねぇな。」
シンは腕を組み難しい顔をしていた。そして同時に重い空気が部屋に広がっていくのを感じたのだった。
「シーちゃんと随分仲良くなったのね☆」
「い、一緒にいるんだから仲良くなるでしょ!」
聞かれると思ったが宿屋を出て直ぐだったのでアウラはドギマギとしていた。レークスは悪戯をするような笑みを浮かべながらその様子を見ていた。
「シーちゃんにべったりだしねぇ…?」
「レークス!!」
「本当に面倒な性格してるわね。認めちゃいなさいよ、好きだって☆」
アウラの顔が赤くなる。
「…そんな簡単なことじゃないもん。」
「何?ルイマスって恋愛禁忌主義だったかしら?」
「違うけど…。よくは思われないでしょ。」
「ほーんと嫌になっちゃうわ☆別に恋の一つや二つくらいしたっていいじゃないの。誰よ、恋愛は無駄で最低だって決めたの。いい迷惑よねー。」
エルフは生殖能力を持たない。つまりそれにまつわる事は全て不必要ともいえた。時の中でエルフ達の恋愛感情は衰退していき、現在では禁忌とする地域が存在するまでとなっていた。大多数が恋愛否定派であるこの世界では少数派の恋愛感情を持つものを差別していた。そしてそれはアウラにもいえることだった。
「多分だけど恋愛で追放になった女の人にあったの。」
アウラはマーテルを思い出した。その顔は柔らかい笑顔を浮かべていた。
「あら、都市伝説じゃなかったのね☆」
「うん。だからアタシも気づいた時に吃驚しちゃった。」
マーテルと二人で居た時に彼女の夫の話を聞いたことがあった。その時の咲き誇るようなそれでいて少し悲しそうな顔が印象に残っている。今、自分もそうなのだろうかとアウラは思った。
「自分の気持ちに素直になるべきよ。後悔する前にね☆あ、これいいんじゃない?」
「普通に食べ物でいいでしょ!」
レークスはそう言うと不気味な壷を手に取っていた。ボーとしていたアウラはそれに気づくと全力で止めるのだった。
「皆からサイン貰ってくる。」
リベロはそういうと早速行動を起こすためドアから出て行った。シンも後をついて行こうとした。するとサガが腕を掴み動きを止める。
「隷族は文字の読み書きが出来ないものが多いので気をつけて下さい。」
「分かった!」
そういうとシンはリベロを追いかけ部屋を出て行った。残されたサガは窓から二人が去っていくのを眺めていたのだった。




