第23話 コーザ村長
「やっぱり変だわ☆」
「そうだね。」
「何がだ?」
レークスとアウラが深刻そうな面持ちで言葉を発する。シンには何が変なのか全くわからなかった。三人は宿屋の食堂にいた。サガは直接村長に会うため別行動をしている。前日の話し合いでそうなったのだ。シン達はサガに頼まれたこと、旅商人として一軒ずつ村のエルフに売り込むフリをして村の状況を探った。それは地道な作業で一日たっぷりと使うこととなった。
「村の階級が偏りすぎてるんだよ。」
アウラはシンに言った。レークスは机にある野菜スティックを齧っていた。
「秩序を重んじるアルビオが統治する村だからヒエラルキーに則ったエルフの数でなければならないの☆」
目が点になっているシンにレークスは更に説明していく。シンはとりあえず目の前にあった肉に齧り付いた。
「例えるなら頂点が一人とするとその下に王族5人、貴族10人、民族20人、隷属40人ってこと。形にすると三角形になりそれをヒエラルキーっていうのよ。この通りでなくても王族を除いて他の階級はそれぞれ居ないと成り立たないわね☆」
「それで今日回ってみたけど、この村には民族がいないの。労働者はみんな隷族。普通なら絶対に有り得ないんだよ。…それに皆痩せすぎだし。」
レークスが例を交えて言う。アウラは眉間に皺を寄せながらレークスの言葉に続いた。確かに回った先にいたエルフ達は弱弱しかった。村の作物があるのに可笑しなことだった。
「…昨日の奴も働いてるってことか。」
「そうなるわね☆」
シンが真っ先に思ったことを口にした。それを肯定するレークス。アウラは果物を食べていた。レークスといい、アウラといいそれだけで足りるのだろうかとシンは不思議に思う。
「飯食い終わったらその村長のところ行こうぜ。サガもいるだろうしな。」
「そうね☆」
「すっぱーい!」
シンの言葉にレークスが同意する。アウラは思ったより果物が酸っぱかったようで顔を窄めていた。
「これはサガ様が直々にグリオに来られるとは光栄の限りですな。」
サガはこの村の村長、貴族階級のコーザと食事を共にしていた。食卓には豪華な食事が所狭しと並べられている。コーザの肥えた身体は当然のことなのだろう。
「グリオに着て直ぐに物取りに遭いました。」
サガは飲食物の一切に手を付けずコーザに事実を言った。そうするとコーザは顔を青ざめ手に持っていたナイフとフォークを落とした。
「も、申し訳ありません!どうかお許し下さいぃぃぃ!!!」
肥えた身体からは想像出来ない程の速さでサガに近寄り、土下座をするコーザ。その誇張された態度にサガの表情は険しくなる。
「戻ってきたので問題ありません。ただグリオの管理状態を教えてもら…。」
「下賎の輩の名を教えてください、サガさまのために懲らしめてやりましょうぞ!!おい、ギミー!!」
コーザは理解していないのか聴こえていないのか、サガの言葉を途中で遮り立ち上がると部下を呼ぶ。すると使用人らしき女が恐る恐る入ってきた。
「ギミー様は只今取り込み中で…。」
「なんだとっ!どうせまたあのガキだろう!!」
憤慨するコーザを傍観していたサガは自分の座っていた大きな椅子を倒す。ドスッという大きな音が部屋に広がる。それによりサガの存在を思い出したのかぎこちない笑顔でサガを見る。
「おい、サガ様の椅子を直せ。」
「は、はい。」
コーザは自身の座っていた椅子に戻り、女に命令する。急ぎ足で駆け寄る女は倒れた椅子を直そうとする。
「手伝うフリで結構ですよ。」
サガは小声で女にいった。それに女は小さく頷く。サガは倒した椅子を直し座った。女は足早に部屋を出る。
「あのガキとは?」
「サガ様が気に留める価値すらない子供ですよ。さあ、どうぞ食事をお召し上がり下さい。美味しいですぞ。宿屋などでなく、わしの屋敷に泊まって下され!」
コーザは今までのことがなかったかのように再び食事を始めた。サガは下を向き溜息をついたのだった。




