第22話 宿屋
「シーちゃんどんどん逞しくなるわね☆もうっ、痺れちゃう!」
「ははは…。」
困惑する宿屋の主を尻目に泊まる部屋に4人で入ったのがついさっきこと。シンの脳震盪も治まり部屋にある椅子に座っていた。アウラは机の上に座り足をブラブラと揺らしている。サガは扉近くに立ち、レークスはベッドに座っていた。興奮するレークスの心情を表すかのようにベッドがギシギシと小刻みに音を鳴らす。
「よくアタシ達が居るってわかったね。」
「ワタシに不可能はないの☆」
アウラの言葉に答えにならない返しをするレークス。しかもピースサインつきだった。
「あ、でもちゃんと用事があるのよ。忘れてたけど。貸し出したスレイプ一頭だけ調教済んでなかったから、交換してって言われてた☆」
「そうだったのですか。よかったですね、シン。」
「うるせぇな。」
サガが嫌味ったらしくシンに言った。一緒に旅をしていたのでサガの嫌味には慣れっことなっていた。アウラがサガの言葉に乗っかってこない分いつもよりマシだった。
「交換は無しだ。エイトのままでいい。」
「そう…じゃあ伝えておくわ☆ああ、それと忘れてたけどアウラに手紙よん。」
「はあ…ありがと。」
シンは忘れすぎではないかと素直に思った。レークスは一体何をしにきたのだろうか。アウラは慣れているのか溜息を吐きながらもレークスから手紙を受け取った。
「それにしてもグリオはいつからこんなに酷くなったのかしらん☆」
「どういうことです?」
「昔はもっと活気があったし、節度ある振る舞いができていたわ☆」
レークスはベッドに横たわりゴロゴロと転がっていた。そこはシンが寝る予定のベッドだった。
「何かあったのか?」
「旅商人としてここの村長に営業したんだけどね…そんな下賎の輩から買う者はないって門前払いよ!酷いわ!!」
「ひでーな。」
「でしょ!!商売魂がなかったらほぼ殺ししちゃうとこだったわ☆」
折角楽しみにしていたベッドダイブを奪われたシンは不機嫌そうにレークスに質問した。待ってましたとばかりにレークスは愚痴をこぼす。その時ベッドを激しく叩くので、壊れないかとシンは不安になった。
アウラが迷惑になるよ、とレークスを諭していた。シンが賛同すると笑顔で問題発言をするあたりキチガイに遭遇したような恐怖を感じた。
「ということは今の村長が差別意識の強いタイプのようですね。」
サガが一人で納得したように言った。シンは分からず不思議そうな顔をする。
「要するに周りを見下して俺最強って思っちゃってるタイプってこと☆」
「そんな大人っているんだな。」
「残念なことにね☆」
かわりにレークスが分かりやすく説明する。それに納得するシン。
「レークス様は急ぎの用はあるのでしょうか?」
「ないわよ☆思い立ったら直ぐ行動がモットーだからね!」
サガが何かを思いついたようだった。そうでなければ基本喋らないということは旅の中で知り得たサガの情報の一つだった。
「では少し下調べを手伝ってもらえますか?」
「ええー、お仕事はしたくないのよね☆」
「もれなくシンをつけます。」
「やらせてもらうわ!」
サガの提案を嫌がっていたのが嘘のようだった。シンと聞いた瞬間に食い気味に言うあたり身の危険を感じる。
「いいですよね、シン?」
「アタシも一緒だからね!」
「邪魔☆」
その言葉は質問をしていながら断る余地を全く感じさせない。グリオでは特にやることはなかったので渋々シンは頷いた。喜ぶレークスとアウラの言い合いを暫く眺めることとなったのだった。




