第18話 共同戦線
「今世界中で異変が起きています。詳しくは言えませんが私はその調査を極秘に任されています。過程の中で謎の組織が係わっているところまで突き止めました。それが分かった時点で私自身が国を出て調査することにしましたが謎の組織が係わっている以上下手に動くことは出来ません。そんな時に現れたのがシン、貴方です。勝っても負けても私はシン達と旅を共にしているでしょう。」
「じゃあデアフロスは意味が無かったってことかよ!?」
目を瞑って淡々と語るサガにシンは食いつく。その時思わず机を強く叩いてしまう。バンッと鈍い音が鳴る。アウラが交互に二人をみる。
「手を抜いていたといいたいのでしょうか?ならば違います。私は本気でデアフロスに挑みました。」
サガはチラリと窓に目をやる。シンはサガを睨みつけていた。
「そもそも私自身シンに怒りを感じていましたので。」
「首飾り壊したからか?」
「首飾りは壊して頂いてなんら問題ありません。私が怒りを感じたのはシンが私の言葉に反し迷子になった挙句、フレイヤ様を危険な目に合わせたことです。」
「一応助けたんだけど…。」
「そもそもシンが訪れなければフレイヤ様は動いたりしなかったでしょう。私から言わせればシンの行動は当然のことです。」
「わるかったな!」
傍から見れば険悪な雰囲気の言い合いであった。アウラのピンと立っていた羽も萎縮したためか萎れるように下を向く。それに気づいたシンは机から手を離し椅子に座った。サガはまた目を瞑り壁に寄りかかっていた。
「話を戻しますが異変の一つに神隠しと呼ばれる事件が多発しているのです。」
「そんなの初めて聞いた…。」
「まだ表面化していないので知らないのは当然でしょう。」
アウラが呟くように言った。シンは神隠しと聞いてグランとあの黒の世界を思い出した。しかし人っ子一人居ないあの世界が今回の事件と関係しているとは思えなかった。
「被害は全世界で5箇所ありその全てが奥地などにある小さな村です。エルフ、家、その土地にあったはずの全てが一つ残らず無くなっているのです。」
「全部無くすなんて不可能だよ!」
「私もそう思っていました。しかし生き残りだという男は一瞬で村がなくなるのを見たそうです。その話を聞いた者達は嘲笑うだけで男の言葉は信じなかったそうですが。その後男が行方不明となり不審に思った者達が男のいたであろう村に行くとそこには住んでいた跡すら残っていなかったそうです。そしてそれが国に報告され私が調査することとなりました。」
反論するアウラにサガは新事実であろうことを説明する。それを聞いていたシンは一つ気になることが思い浮かぶ。
「俺がそいつらの仲間だって思わなかったのか?」
「レークス様が連れてきた時点でその可能性はほぼゼロに近いものでした。が、念のため様子を見させて頂きました。その結果謎の組織との関与はないと判断しました。」
「すげー信頼されてんだな、あいつ。」
シンは関心したように言った。
「もし万が一シンが敵だと考えた場合秘匿に行動していたはずです。自ら私を仲間にと言わないでしょう。私が消えれば国が動くのは考えれば分かることですから。そうなれば水面下で動いていたのが露見してしまいます。」
「でもさ、シンが謎の組織の仲間でこっそり黄金乙女の場所を教えてたって可能性はあるんじゃないの?」
「疑ったら切りがありませんが黄金乙女にした対処と今シン自身が仲間である可能性を口にしたことでやはりそうでないと結論づけられます。」
アウラが安心の溜息を吐いた。自分で聞いていて不安になったのだろう。
「マーテルはどうなんだ?」
「ないでしょう。敵でしたら黄金乙女さんはとっくに発見されているはずです。それに私は黄金乙女を見つけたとはいいましたが、場所は教えていません。惑いの池の場所を聞いた時も方角しか分かっていませんでした。そして黄金乙女さんがいた場所を話したのは先ほどです。何よりアウラさんが彼女と行動を共にしています。」
「なら良かったよ。それでなんで俺に話したんだ?」
声の無い静けさがあたりに広がる。アウラは正座をして固唾を呑んで見守っていた。
「今回の襲撃者と謎の組織が同じである可能性がでてきたからです。同じだと仮定すると謎の組織はシンと同様に魔宝を欲している。ともすれば何度かシンは謎の組織と遭遇するでしょう。それは私にも有益であるということです。」
「よく分かんねぇけど要するに共同戦線ってやつか?」
「はい。それとシンはほぼ覚えていないでしょうが、今話したことは内密で。」
「二人がおかしいんだろ!」
「シンが馬鹿なだけだって。」
茶化すアウラにシンは掴みかかろうとする。しかし速さでいえばアウラのほうが上であるので捕まえられなかった。そんな無意味な追いかけっこを疲れるまでやっているとマーテルが戻ってきた。その手には花が握られていた。
「ごめんなさい…黄金乙女さんの場所まで連れて行ってもらえるかしら?頑張ってみたのだけれど、どうにも着かなくて…。」
恥ずかしそうに言うマーテルを、アウラとシンは笑顔で迎える。
「よっしゃ、じゃあ行こうぜ!」
「おー!」




