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-BIFROST-  作者: 阿山なつき
九つの魔宝編
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第17話 心願

「先に行ってますよ。」

「待ってるね!」


シンは一人で黄金乙女と骨と化した彼女を穴を掘り埋めた。そうしたいと言い張ったのだ。サガとアウラは黄金乙女の涙である月麗石を池の中に沈めた。ただ最後に流した月麗石だけはシンの手の中にあった。サガとアウラが立ち去るとシンは墓の前に座る。


「なあ、乙女。お前の涙無駄じゃなかったぜ。お前の大切な人、月麗石が積もってたお蔭で奇麗だったんだ。」


何時黄金乙女の話した事が起こったのかは分からない。けれど月麗石が積もっていった年月を考えれば掘り出した時の骨の白さは有り得ないものだった。シンはそれ見た時に少しだけ胸を締め付ける。いいや、もしかしたら黄金乙女なのかもしれない。


「俺は忘れないぜ。乙女のこと。」


立ち上がり目を閉じて深呼吸した。ゆっくりと目を開き空を見上げる。今日も奇麗な晴れだった。鳥達が空を渡っていく。目線を墓に戻し両手を握り締める。


「ナイン!!」


胸に響くように声をだした。すると両手から白い炎が上がった。それは手首止まりで全開ではないが確かに成長していたのだった。池に沈められた黄金乙女の涙は太陽の光でキラキラと輝いていた。


「黄金乙女さんは心願を持ってたんでしょ?」

「シンはそう言っていましたね。」


サガとアウラはマーテルの家に戻るため森を進んでいた。どこかアウラとサガの進む速度はゆっくりとしていた。


「だったらそれで大切な人を助けられなかったのかな?」

「推察でしかありませんが恐らく我々の回復魔法と同じなのだと思います。」


アウラはサガの言葉を聞いて不思議そうな顔をした。それを見たサガは更に言葉を続ける。


「要するに元々無いものを新たに生み出すことは出来ないということです。回復魔法とはあくまで治癒能力を高めて行うものです。黄金乙女さんにはそもそもその機能がありません。それと同じでいくら願っても動く足や手を生み出す事は出来なかったのでしょう。」

「じゃあ涙も元々あったんだね。」

「そいういことになりますね。」


アウラは一旦止まり空を見上げた。雲がシンと黄金乙女の居るほうへ流れていく。サガはそれを傍観していた。


「でもアタシは黄金乙女さんの涙は奇跡だって思いたいな。」


少しの間ただ流れる雲を見る。アウラは再び進み始める。それに倣う(ならう)ようにサガも歩き出す。マーテルの家が見えてきた。マーテルは洗濯物をしているようだ。その幸せそうな顔にアウラは進むのをやめる。


「アタシって最低だ。」


ポツリとアウラは言った。草が木が柔風(やわかぜ)で揺れる。


「黄金乙女の最期を見てシンから話全部聞いて悲しいけど…ちょっと嬉しかった。」


アウラはサガの前方に居るため表情は見えない。アウラの言っている意味がまるで分からない。サガには経験のないものだった。


「違う世界の人間なのに真剣に黄金乙女さんのこと受け止めてて嬉しかった。酷いよね、アタシ。でも後悔もしてないの!変な事言っちゃった、シンには内緒ね!」


アウラはそのまま飛んでいってしまった。その時一瞬振り返った。満面の笑みとはいえない笑みがそこにはあった。サガは立ち止まる。何故と思った。何故アウラは笑顔なのだろうかと。不可解で理解の出来ない矛盾を感じながらもサガも歩き始めるのだった。


「そうだったの…。」


マーテルの家にシンも帰ってきて事の顛末を話した。悲しそうな顔をするマーテル。アウラは机の上に座っていた。サガは定位置なのか窓際で立っていた。


「毎日お花を供えに行くわ。安心してね。」

「頼んだぜ!」


シンは明るく言った。その時にいつものホットミルクを渡される。それを一気に飲むと口元を拭う。一つ溜息を吐くとシンは口を開いた。


「気になったことがあるんだ。」

「何です?」

「乙女についてだ。」


シンの言葉にサガが反応する。乙女と聞いてマーテルがサガと目線を合わせる。サガが頷く動きをするとマーテルは動き出す。


(わたくし)は早速花を摘みに行くわね。」


シンが言葉を発する前にドアから外に出て行った。


「気を使ってくれたのでしょう。」


室内にはシン、アウラ、サガの三人になった。サガが不思議がるシンの様子を見て説明をする。シンはおお、と納得した顔をした。


「魔宝は壊せないって言ってたよな?」

「はい、エルフ達は神の命によりこぞって破壊しようとしましたが今までそれを達成したという声はついぞ聞いていません。アルビオでも幾度も試みましたが達成されていません。」

「じゃあなんで乙女は壊れたんだろーな。」


シンの質問は最もなことだった。サガは壊せないといっていたのだ。それが覆された。サガは腕を組みなおし目線を壁に移した。


「結果から言えば破壊できたということでしょう。考えられるのは三つ。黄金乙女さんがもう寿命を迎えていたが一つ、秘匿(ひとく)にエルフの中で破壊できる技術があったが二つ、三つ目は俄か(にわか)に信じがたいですが…。」

「なんだよ?」

「魔宝を扱える種族、あの体格からして人間が絶滅せず実は生き延びていた。そして攻撃型の魔宝を使って黄金乙女さんを破壊した。」

「サガさんとしてはどれが一番有り得るの?」


三つ目で一度言葉を切るサガにシンは催促の言葉をかける。困惑しているのか少しの沈黙の後サガは三つ目をいった。その間がサガにとって人間生存説が突拍子も無いことだというのを証明していた。幾つか候補にアウラはサガの意見を聞く。


「人間が生き延びていたですね。魔宝に寿命はシンが壊すまで健在でしたし、エルフで壊せたのであれば情報が入ってくるはずです。」

「でも人間全員が魔宝を扱えたわけじゃないんでしょ?それこそ巫女みたいな特殊な人間だって聞いてるけど…。」

「そこがまだ分かっていないところです。しかし今まで息を潜めていたのならば何らかの特別な力を持っているのかもしれません。」


シンは自分で聞いたことが思った以上に内容が難しく頭が回らなくなってくる。次第に会話がサガとアウラの二者になっていく状況に知能指数の違いを痛感した。そんなシンを構うことなく会話は続いていく。


「さらに注目すべきは黄金乙女さんを我々が見つけて直ぐに破壊されたところになります。幾ら目立つとはいえ昨日の今日で起こるには早すぎます。」

「そうだよね…。」

「私が考えるにここに来た時に見た死体が関連しているように思えます。」

「死体を追いかけて黄金乙女さんを見つけたってこと?」

「私の推論でしかありませんが。」


後でアウラに聞こうとシンは心に誓った。自己完結したシンは空っぽになったコップの中から残ったミルクを探す。その様子を見たサガとアウラは溜息を吐いた。


「何故黄金乙女さんを破壊したのかも謎ですが。」

「俺と同じで壊せば力が増えるとかありそうだよな。」


シンはコップのミルクを止め意見を言う。


「確かにそれも可能性の一つといえるでしょう。これらを纏めた結果私の目的とシンの目的は同じである可能性が極めて高くなりました。」


サガの言葉にシンとアウラは身構えるのだった。


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