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-BIFROST-  作者: 阿山なつき
九つの魔宝編
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第15話 決断

「髪の毛本物みたいだ。奇麗にしてみるもんだな。」

《ふふ、ありがとう》

「月麗石も全部退かすか?」

《いいえこのままで》

「てか、魔宝って喋るんだな。すげー!!」


あの後、黄金乙女に奇麗にして欲しいと言われたのでサガと協力して奇麗にした。汚れを拭き汚れが取れない所は磨くと白い奇麗な肌と黄金に輝く髪が出てきた。手を胸に当てた立像だった。顔は仄かに笑みを浮けべている。美術の時などに見たトルソーに似ているが、それと比べようがない美しさがあった。足元に落ちている石は黄金乙女の身体と同じ月麗石だと言っていた。


《お話しするのって初めてでドキドキするわ…って像の私がいうとおかしいわね。》

「魔宝なんだしいいんじゃね?」

《シンって面白い子ね。それにいい子だわ。》


何故か恥ずかしくなった。こんなにはっきり褒められたのが初めてだからだろうかとシンは思った。


「あの…少しいいですか?」

「なんだ?」

「確かに話し合えとはいいましたが世間話をしろとはいってませんが。」

「………あ、そうだったな!」


シンの言葉に溜息を吐くサガ。このままでは溜息が癖になってしまうと危惧するサガの気など知らず目的をすっかり忘れていたシンだった。思い出し脱線した話を軌道に戻す。


「乙女は自分の能力を知らないんだっけ?」

《ええ、申し訳ないのだけど。》

「能力の渡し方もか?」

《そうね、自分が魔宝である以外は何も。ごめんなさい。》


シンはうーんと腕を組み悩む。乙女とは名前が長すぎるとシンが省略したのだった。名前で呼ばないと失礼なのはアウラで経験して知っている。もっとも黄金乙女は気にしていないようだが。


《でも…もしかしたら…》

「おっ!?なんかあるのか?」

《シンが業腕を手に入れた話からすれば私を壊せば能力が手に入るんじゃないかしら?》

「でもそれって…。」

《私は消えるわね。》


あっさりと言ってのける黄金乙女の内心を知りたいのだがなにしろ像なので表情がない。会話してみるといい人(?)なのでシンとしては少し躊躇われる。


「乙女はそれでいいのか?」

《シンは知らないのだろうけど、魔宝が作られたのって神が居た時代よ。いい機会だわ。》

「困ったな…。」


シンは頭をぐしゃぐしゃと掻く。いいと言われると何故か余計に奪う気が無くなってしまう。とりあえず今日は保留ということにして考えるのをやめた。シンは黄金乙女の挨拶をして歩き出す。少し離れた木に寄りかかっていたサガも後をついて行く。来た時は朝だったのがすっかり昼頃になっていた。


「奪ってもいいって言われたぞ。」

「よかったじゃないですか。」


いつの間にかサガの方が前を歩いていた。黄金乙女のようにそれを受け入れるサガに少し苛立ちを感じる。


「よくないだろ!あいつイイ奴みたいだし無理だ!!」

「だからさっさと奪えばよかったのです。意思を交わすとそれだけで罪悪感に(さいな)まれます。」

「俺はそんな簡単にできねぇよ!」

「別に私は貴方がどうしようと構いませんが。ただ黄金乙女が空間移動の能力を所持している可能性を無視するのはどうかと思いますよ。」


シンは立ち止まる。サガはそのままマーテルの家に入っていった。


「…分かってるよ。」


シンは誰に言うわけでもない独り言を発する。手を強く握る。


「おかえりー!」

「おう、ただいま。」


アウラが笑顔で出迎えるが直ぐにシンの様子が可笑しいことに気づく。しかしシンが気づかれないように振舞っているので聞きたい気持ちをぐっと堪えた。


「聞いたよ!魔宝見つかったんだって?良かったじゃん!!」


その言葉にシンはバツの悪そうな顔をしていた。そのことだったのかとアウラは後悔した。


「魔宝は黄金乙女といい女性像で意思を持っているのです。声はシンにしか聞こえませんが。」


サガが代弁する。マーテルとアウラは心配そうにシンを見つめた。


「とりあえずその話は止めだ!」

「う、うん。」

「そうね。」


シンは笑顔を作り元気よく言った。戸惑うアウラとマーテル。サガは料理を手伝っていた。シンは頼まれていた(まき)割りをやるため再び外に出た。シンはスレイプと目があう。スレイプはふんっという声が聞こえそうな動作をする。

結局一日中シンは黄金乙女をどうするか考えた。自分のためには乙女の力が必要だ。けれど自分をいい子だといってくれた彼女を壊すなんてどう考えても出来ない。どうしても非情になれない。


「俺は乙女を壊さない!」


次の日シンは皆にきっぱりと言った。それを聞いたサガが口を開く。


「いいんですね?」

「ああ、やっぱり何度考えても自分で納得できないことはできない。」


意気地なしと思われても馬鹿だと言われても構わない。それでもシンには出来ないことだった。


「…黄金乙女が目的の能力とも限らないですし私は反対しません。」

「それでマーテルに乙女の世話をして欲しいんだ。いいか?」

「まあ、願っても無いことね!勿論いいわよ。」


少しの沈黙の後サガが自分の意見を言う。そしてシンの言葉に喜びの声を上げるマーテル。シンもほっとして笑顔になる。


「でも…壊れたりしない?何かの拍子とかでさ。」


申し訳なさそうにアウラが聞いた。確かにその危険性はあった。サガを覗いた三人の表情が曇る。


「大丈夫でしょう。盗まれる可能性はありますが。」

「どうして?」

「魔宝は壊せないのです。シンは例外として。壊せないからこそ神は我々に託しました。」

「じゃあ安心だね!」


サガが淡々と説明をする。それを聞いた三人は顔を合わせて喜んだ。


「しかし、もし黄金乙女が空間移動を持っていたらどうするんですか?」


サガは鋭い眼差しでシンを見た。シンは腕を組み暫くたっぷり時間を使った後目をカッと開いた。


「そんときに考える!」


そんなに時間が必要だったのかとシン以外の三人は思ったのだった。


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「でろーーーー!」


シンは再び業腕を出す練習をしていた。相変わらず変化が無い。ふと、黄金乙女のことを考えた。


(伝えにいかなきゃな。)


そして身体の力を抜いて深呼吸する。そして手をぎゅっと握り叫ぶ。


「ナイン!!」


すると右手の人差し指から白い炎が上がった。おおお、とシンは期待の声を出す。しかしそれ以上炎は広がらず何度試しても人差し指止まりだった。デアフロスの時のようにはいかないようだ。


「シン、迎えにきたよ!」


アウラがやってきた。シンは業腕を解く。手の力を抜くと解除できるようである。意味も無く長居しては迷惑だろうからとサガが直ぐ出て行くと言ったのだ。マーテルは旅の途中だものねといつもの柔らかい笑顔で言っていた。


「シンとアウラ、急いで黄金乙女のところへ行きましょう!!」

「お、おう!」


サガが走ってやってきた。訳が分からないがシンとアウラも惑いの池に向かって走る。


「黄金乙女に何かあったようです。」

「はあ!?」

「念のため簡易的な結界を張っておいたのですが…役に立つとは最悪ですね。」


走りながらサガは経緯を話す。状況を把握したシンは走る速度を更に上げるのだった。

惑いの池につくと黄金乙女が横たわっていた。その傍にマントを被った者がいた。シン達に気づいたマントは手に持っていた黒い槍で黄金乙女の腹部を刺した。


「やめろー!」


シンが殴りかかった。マントはそれを避ける。サガも捕らえようとするがマントは一瞬で姿を消したのだった。









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