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-BIFROST-  作者: 阿山なつき
九つの魔宝編
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第14話 黄金乙女

シンは朝の森の中,(たたず)んでいた。大きく息を吸う。


「業腕!!」


力を籠めて叫んだ。が、腕に変化はない。


「ナイン!!」


炎のほの字もない。腹が立ったシンはやけくそになった。


「ハンドパワー!いでよ魔力!ファイヤーーー!!」


思いつく単語をいいまくる。どれも不発に終わる。捲くし立てるように言ったのでシンの息は荒い。


(どうやったら使えるんだよ…。)


シンは倒れて手を上に翳した。大概の魔法は叫んだらでるイメージなのだが、うんともすんともいわない。フレイヤも具体的な使い方は分からないと言っていた。考えても思いつかない。


「ここに居ましたか。」


サガがやってくる。大の字で倒れるシンに怪訝な顔をする。


「念のため惑いの池に行ってきます。」

「俺も行くぜ!」

「そう言うと思って探していました。アウラさんは眠いので不参加だそうです。場所はマーテルさんに聞いてあります。」


シン達はそのまま目的の場所に行く。惑いの池は少し開けていて小さな池があった。そこに一面白い石が敷き詰められていて一部分だけ盛り上がっていた。


「どうしましたか?」

「なんか腕が…。」


初めて業腕を手に入れた時の焼けるような痛みと似たような疼きがあった。先ほどまで酷使していたせいだろうか。そのまま石が盛り上がっているところまで進む。鳥達は(さえず)り木漏れ日が揺れていた。池も驚くほど澄んでいてアルビオとは違う美しさがある森だった。


「なんもねえな。」

「そうですね。噂のような邪悪なモノは感じませんが。一旦マーテルさんのところへ戻りましょう。」


サガは一粒石を手にとり観察していた。それを元の場所に置き歩き始める。シンも後を追う。


《おね…が……》


女の声がした気がした。シンは立ち止まり耳をすませる。それに気づいたサガも立ち止まり様子を窺っていた。


「誰かいるのか!」


シンは声を張り上げる。サガは剣に手をあて、万が一の準備をした。


《たすけ…て…》


声は白い石が積もっているところからしていた。シンはそこを掘り出す。それを見たサガも剣から手を離し手伝う。中から汚れた等身大の女の像が出てきた。


《ありがとう》

「喋った!?」


声は像からしていた。驚いたシンは地面に落ちている石で足を踏みはずして転んでしまう。その様子をじっと見つめるサガ。体制を立て直して恐る恐る像に近づく。腕の疼きが強まったように感じた。


《私は黄金乙女。黄金で作られた髪と心臓を、月麗石の身体を持つ魔宝よ。よろしくね。》

「よろしく…って魔宝!?」

「そういうことですか。」


まさかの展開であった。シンの言葉を聞いたサガが一人で納得していた。シン自身は全く現状を理解していなかった。サガはシンの腕を掴み像から離れる。


「なんだよっ!」


シンはサガの手を振り払った。するとサガは困惑した表情をしていた。何事にも動じない奴だと思っていたので意外である。


「聞こえないんです。」

「はあ!?」

「私にはシンが独り言を言っているようにしか見えません。」


サガの告白を受けて咄嗟にグランに言われたことを思い出した。


「翻訳能力があるからだ。」

「そのような力があったのですか?」

「まあな。」


自称神様から貰ったというのは気が引けた。サガは像の方に目を移す。


「ではあの像は魔宝で意志を持っているということですね。」

「みたいだな。」

「これは千載一遇のチャンスです。魔力を奪ってしまいましょう。」

「意志がある奴をいきなり襲えるかよ!悪党みたいだろ!?」


シンの言葉に溜息をつくサガ。片手を像のある位置に向け口を開く。


「では魔宝と話して解決するのですね。」


ムキになったシンはずかずかと像へ歩いていった。像の目の前に行くと唾を飲む。


「俺はシンだ!お前の持ってる能力をくれ!!」


シンの声に驚いた鳥達が飛び立ち騒がしくしていた。言っていることがまさに悪党の台詞であることにシンは気づいていない。この場にアルマがいたら爆笑するのは必至だった。唯一の救いはアウラがいないことである。


《あら…まあ…》


像なので表情がないのだが、声音だけでも充分困っているのが伝わった。気まずい雰囲気が辺りに立ち込めるのをシンは感じたのだった。



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