第12話 暴走
「日が暮れてきました。本来なら既に宿についているはずなのですが…。」
「悪かったな。」
未だに家どころかエルフも見なかった。理由はシンとスレイプの関係にあった。動物とは順位づけをする生き物だ。シンはそれで格下と位置づけられてしまった。結果文字通り道草を食べ始めたり、突然止まったりで時間をくってしまったのである。
「初心者というのを含めて脚の早いスレイプを選びましたが。どんな者でも言うことを聞くように調教されているのに、何故でしょう。」
「知ねぇよ!動いてくれよ!!」
手綱を引っ張っても首を振るだけで微動だにしない。
「暗くなったら野宿になっちゃうよ。」
「く、くっそ!!」
アウラは退屈そうである。焦ったシンは思わずスレイプの腹を鞍のサドルで蹴ってしまう。すると驚いたスレイプが蹴り上がり急発進した。
「マジかよーーー!」
「手綱だけは離さないように!」
どんどん離れて行くシンにサガは大声で忠告する。混乱したスレイプはそのまま森の中を突き進んでいく。サガは取り残されたアウラに声をかけ直ぐに後を追う。
「スレイプが従わないのも仕方ないですね。」
「シンのバカ!」
本人に聴こえない悪態を吐くサガとアウラ。最悪なことにシンのスレイプは脚が速くなかなか追いつけない。滅茶苦茶に走るせいで森が深まるばかりである。
「勘弁してくれよおおお!!」
すっかり日も落ちて薄暗い森を爆走し続ける。揺れの激しい中必死にしがみついていた。歩いているのと走るのではこんなに違うのかとシンは思った。
「うわっ!!」
「そのまま落ちてください!」
急に止まったスレイプの前足が蹴りあがる。それを見たサガが声を張る。言われた通りに手を放し受身をとりながら落ちた。幸い草が生い茂る地帯だったので衝撃は少なかった。サガのスレイプが前に立ち塞がる。サガは瞬時に降りシンが乗っていたスレイプの手綱を掴み落ち着かせる。
「スレイプは臆病であり気高い生き物です。それを無下に扱った報いですよ。」
「大丈夫!?」
「いてえ…。」
シンは気まずそうな顔をして立ち上がった。心配したアウラが負傷していないか確認した。大きな怪我は無いようである。
「それにしても、何故急に止まっ…なるほど。」
周りを見渡しながら喋っていたサガは言葉を区切り下を見つめていた。不思議に思ったシンは近寄ろうと歩きだす。
「来てはいけません。」
サガは目線を下に向けたまま手を前に出し言った。シンはその言葉を無視し更に速度を上げ近づいた。アウラは言われた通りその場から動かない。
「なんか変な臭いが…?」
今まで嗅いだ経験の無い臭いが充満していた。獣のようなそれでいた甘ったるい臭いだった。シンの言葉を聞いたサガは溜息を吐きしゃがむ。サガの目線に合わせるとそこには恐らくエルフであった物体が横たわっていた。




