第4話「フェンリル:お銀」【改稿】
昔、高野山に行きました。
高野山を周っていたら、途中から肩がず~んと重くなったんです。
私の知人も同じような事があったみたいです。
今まで他のお寺や神社ではなかったのですが。
帰り道に途中の店で塩を頭からかぶったら多少軽くなりました。
その後ですか?
その後しばらくして伊勢神宮に行く事があったんです。
伊勢神宮の敷地に入ったらびっくりするくらい肩が軽くなったのを覚えています。
ちなみに3神宮といわれているのは、
伊勢神宮、香取神宮、鹿島神宮なんだそうです。
…さて、長くなってしまいましたが本文をど~ぞ
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とりあえず、女神様から依頼された件も片付いた事だし、自分の島を把握する為に散歩をする事にした。
雨を降らすのは、あと三日だが特に何かアクションを起こす訳でもない。
三日間の間、この世界全体に『ちょっと強めの雨よ降れ』と念じれば全て解決する寸法だ。 勿論、雨の降っている途中に天気の変更なども可能である。 何とも便利なチートなスキルで大変助かる。
まず散歩の前に、このすっごく寒い状況を変えないといけない。
なぜって、ここ北極並の寒さだからだ! うぅ~、寒さで死にそうだ! まあ死なないけど……。 とりあえず、この寒さをどうにかしないといけない! 奇門遁甲のスキルで自分の半径1mくらいは25度設定にしてと。 何故25度かって? メダカが卵から孵るのがだいたい25度だからだ。 小学校か中学校で習った記憶がある。 大したことじゃないので、頭の辞書は調べない。 多分、人にもこの温度が優しいのではないかと俺は解釈したのだ。 通常時はこのまま、ず~っと25度設定にしておこう。
よし! 散歩する環境は整った。 気合入れて散歩するぞ。 ……だって北海道くらいの広さだよ。 それくらい気合いれないとね。
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それから5分後、小太郎はヨタヨタと歩いていた。
何故そんな歩き方をしているかだって、それは下がアイスバーンだからだ。
運動神経が人並みの小太郎は転ばないで歩くのがやっとだった。 しばらくヨタヨタと、それはそれは危なっかしく小太郎は歩き続けた。
……が、やっぱりというか当然というか小太郎はちょっとした坂で滑って転んだ。 坂の傾斜はゆるいが、距離が長かったのでしばらく滑りつづけた。
だが、運勢が異常なくらい高いのは伊達ではない。
転ぶには転ぶだけの理由があったのだ。
小太郎が滑り終わった目の先には、白銀の美しい毛並みの動物が横たわっていた。
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その横たわっていた白銀の美しい毛並みの動物は、なんと幻の存在ともいえる神獣フェンリルであった。 このフェンリル自体、幻ともいえる存在なので滅多に人と遭遇しないのであるが、小太郎の異常な運勢がそうはさせなかった。
そのフェンリルだが、白銀であるはずの両足が黒ずみひどく弱っていた。
小太郎は、フェンリルのあまりの美しさに戸惑っていた。 弱って毛並みが悪いはずなのに、それでも目が眩むような白銀の毛並み……。 あまり芸術的なものには感動のしない小太郎だが、声も出ずに見入っている。 夢遊病のようにフェンリルに近づいていった。 すでにフェンリルは、意識がなく呼吸をするのすらやっとの状態だった。 小太郎はフェンリルに近づくと毛並みをゆっくり撫でた。 サラサラする毛並み。 正に至福である。
撫でる……撫でる……撫でる……。 我を忘れて一時間くらい撫で続けた。
ふとした拍子にフェンリルの呼吸が弱まっているのに気付き、我に返って急いで回復魔法を使った。 さすがに神レベルの回復魔法の効果は劇的だった。 黒ずんでいた足は元の白銀の毛並みへと変わり、その白銀の毛並みも雨に濡れたようなツヤを帯びている。
呼吸も穏やかになっていた。 そしてまたゆっくり撫でて至福の時間を味わう。 病気が癒えて、さらになめらかな手ざわりとなった毛並みは感無量である。 撫で続けることさらに一時間経過した。
フェンリルが目を覚ました。
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【フェンリルSIDE】
目を覚ましたら、身体がとても軽くなっている。
それに、撫でられている感覚がある。 だが、いやな感じがしない。 幸せな暖かい波動が伝わってくる。 そう……、柔らかなお日様で日向ぼっこをしている感じ。
すでに忘れていた穏やかな時間がここにあった。 そして目をあけると、そこには自分を撫でている人間がいた。
「私を治療したのは、あなたですか?」
フェンリルは、何故か私を撫でているこの人間(小太郎)に対して見下してはならないと直感した。
「ええ、苦しんでいるようでしたので勝手ながら回復魔法で治させて頂きました」
私はこの発言を聞いて驚き、そして戸惑った。
自分の病気はもう末期で、すでに生きる事を諦めていた。
その為に残りわずかな命を、この生物の少ない島で静かに終えようと覚悟していたのだ。 その覚悟をしていた気持ちが急に消えてしまったのだ。 もちろん嬉しいのだが、これから先、何をしていいか思い浮かばないのだ。
しかも神獣である自分の病気を簡単に治療してしまうような人間。 混乱しない方がおかしい。
「……」
「まだ、治ってないのですか? レベル10の回復魔法をしたのですがおかしいですねぇ……」
「すみません……レベル10の回復魔法です……か?」
私は、呆然として反射的に聞き返していた。 レベル10の魔法というのは神クラスの領域だからだ。 それを、目の前にいる人間が使っているのだから。
「人間にはこの事は黙っているつもりなのですが、神獣と云われているあなたになら話しても構わないでしょう。 このレベル10の魔法は女神アルテナ様から頂いたものなのですよ」
「なんと……」
「他に奇門遁甲のレベル99と神聖魔法と生活魔法がレベル10ですよ」
「……奇門遁甲とは……」
私は驚愕した。 奇門遁甲は、それ自体が伝説と言われているスキルなのにレベルが99? もはや神を超えた存在なのではないか。
「天気を操ったりできるんですよ。 そうですねぇ、あなたの半径1mを試しに気温25度にしてみましょうか」
私の周りの空気が急に暖かくなる。 もう私は驚いたり深く考えるのを放棄した。 無駄だと私は悟ったのだ。
「あなた様のご尊名をお伺いしても宜しいですか?」
「そんな……ご尊名だなんて、名前は由布小太郎です。 小太郎とでも呼んでください」
「小太郎様ですね。 よろしければ、私を小太郎様のお傍において頂けないでしょうか?」
「えーと、神獣のあなたをですか? とても魅力的な提案ですが本当にいいんですか?」
「私は、1度死を覚悟したこの身です。 そのような訳なので、大恩あるあなた様のお傍に措いて頂き、少しでも恩を返したいのです」
「それでしたら、ひとつお願いがあるんですがいいですか?」
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小太郎さまは、私に眷属化のスキルの事を話された。 勿論、私には否などという選択肢は思い浮かばなかった。 そして私は、自分が眷属になる為に一つお願いをする事にした。
「ふむ、名前を付けて欲しいですか」
「フェンリルというのは私達の種族の名前なので是非付けてもらえませんか?」
「ところで、あなたは声を聞いてる限り女の人ですよねぇ?」
「はい、そうですが。 何か問題でもおありですか?」
「いえ、名前を付けるのに聞いてみたんですよ。 それにしても綺麗な毛並みですねえ?」
「小太郎様は本当に私の毛がお好きですね」
フェンリルが苦笑している。 ただ目は笑っているのがわかる。
「そうですねぇ……お銀っていう名前はどうです?」
「どんな意味なのでしょうか?」
「毛の色です。 その美しい毛並み……。 私の前に住んでいた世界では、あなたの毛の色を銀色っていうんですよ。 そこからとりました」
「ふふ……わかりました。 これから宜しくお願いしますね」
こうして、小太郎に異世界での初めての仲間が出来たのだった。
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