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聖廻の果て  作者: 琥珀
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 『-試練を乗り越え 共に歩み 閉ざされた力を解き放て-』




ノートにはそう書かれていた。



文章の意味が全く理解できなくて、俺の体は止まったままだった。




「記憶を取り戻すために、誰かと旅に出ろ…と言うことかの…。」


「今の状況からすると、私もこの文章はそういう意味になると思う。」


「旅…?旅って…なんで…?」


「わしらにもわからん。じゃが、君の言葉に反応して文字が出てきたんじゃから、君の記憶を取り戻すための道しるべのような役目なんじゃないかの。」




道しるべ…?

なんでそんなスムーズに状況が理解できるんだよ…

疑問に思いながらも、冷静になろうと深く息を吸い込んだ。




「無理に落ち着こうとせんでもよい。しばらく考えるのをやめにしようじゃないか。ガレス、お茶をいれてくれんか。」



そう言われたガレスさんは、何も言わないでキッチンの方へ歩いて行った。

しばらく座っていると、ガレスさんがテーブルの上にカップを3つとクッキーの入った皿を静かに置いた。



「何を話すかのう…。」


「…。呼び方。」


「お、そうじゃった。それならわしがもう決めておる。

君の名前はガーウェインじゃ。わしらの先祖の名じゃよ。″希望″という意味じゃ。気に入らんかね?」


「…いえ。とてもいい名前だと思います。」



そう言うと、ガヘリスさんは満足したようにカップに入った飲み物をすすった。

ガレスさんは自分から言い出したのに興味がなさそうに本を読み始めていた。



「名前が決まったところで…。ガーウェイン、今回の出来事は何かの縁じゃ。わしらに気を遣うのはやめとくれ。わしのことはじーちゃんと呼びなさい。」



そう言ってガヘリスさんはガレスさんのほうを向き、視線でなにかを訴えていた。

その視線に気がついたガレスさんは、ため息をつきながら読んでいた本を閉じて


「年齢も同じくらいだろう。私のことはガレスと呼べ。」


と言って、また本に目をやった。




「今すぐには無理かもしれんがな。」



そう言って、ふと笑ったガヘリスさんを見て俺の中で覚悟が決まった。



「俺、ちっさいときから何かきっかけがあれば周りの人に馴染むのがめちゃくちゃ早かったんです。だから、いいって言われたらすぐ変えます。

見ず知らずの俺をこんな風に受け入れてくれてありがとう!これからよろしく、じーちゃん!ガレス!」



そう言って、めいっぱい笑ってみせた。







記憶がないって言ったって、この世界に居る以上この世界で生きるしかない。

これからの生活の中で徐々に思いだしていこう。


そう思って窓の外を見た。

空には真っ青な空が広がっていて、大きな入道雲が見えた。

それを見て、何故か悲しいような、懐かしいような気分になった。



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