-3-
俺が今いるこの世界は
『ローグレンツ』
現在地は イーストタウン 。
この店は コープス・ブライド と言うらしい。
俺の質問に、ガヘリスさんはゆっくり正確に説明してくれた。
「俺は…どうしてここに?」
「すまんが、それはわしらにもわからん。
ガレスがこの店の裏で、君が倒れているのを見つけたんじゃよ」
「倒れて…」
口を閉じて深く息をする…。
だめだ。
思う出そうとすればするだけ、胸が苦しくなって辛い…。
そして一瞬、頭に激痛が走って そこから意識がなくなった。
「やはり…体力がもたなかったようじゃの…。」
「あぁ。あの世界から来たんだ。空気も気圧も全く違うから。
3時間で目が覚めて、2時間も起きていただけですごいよ。2階に…連れて行ってくる。」
俺が目を覚ましたのは…あの話をした日から5日も後のことだった。
目は覚めたのに、ベッドから起き上がれる気がしなくて窓の外にある大きな木を見ていた。
ガチャ…
ドアが開いて誰か入ってきた。振り返ってみると、そこにはガレスさんが立っていた。
「起きたのか…、気分はどうだ?」
「良くは…ないです。起き上がれる気がしなくて。
どれだけ考えても、自分は何処に居たのかとか、何で倒れていたのかとか、
名前すらも分からなくて…。」
「これから思いだしていけばいいだろう。」
「でも、君やガヘリスさんに迷惑をかけるわけには…」
「誰が迷惑だなんて言った?」
そう言われて顔を上げた。
「私は迷惑だなんて思っていない。じいちゃんもきっとそうだ。
起きれそうになったら下へ来い。話の続きがしたいらしい。」
「………。」
そう言ってガレスさんはドアを閉めて タンタン と音を立てながら階段をおりて行った。
-行かなきゃ-
そう思っても体が動かなくてしばらく起き上がれなかった。
ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン、 部屋にある大きな古い時計の鐘が鳴りだした。
見たら12時を指している。 そろそろまずいな…。
そう思って体に思いっきり力を入れて起き上がった。
タン、タン、タン、、、
階段をゆっくり踏みながら下へおりて行くと、2人の視線が俺に向けられた。
「あの…。長い間寝てしまってすみませんでした。
この間の話の続きを聞かせてもらってもいいですか?」
少し控えめになって聞いてみると、
「あぁ、良いじゃろう。こっちへ来て、ここに掛けなさい。」
そう言って手招きをされた
言われるがまま、2人に近づき1人用のソファに座った。
「この前は、どこまで話したかのう…」
「俺が、この店の裏で倒れていた というところまでです。」
「おぉそうじゃったか。そう、君は倒れていたんじゃ。
雨の中、薄い衣服1枚の姿での。 その時に、君の手にはこれがあったんじゃが…」
そういってガヘリスさんが差し出してきたのは、
一冊の古いノートだった。
「悪いが勝手に開いてしまったよ。
じゃが、何も書いていない真っ白なノートじゃった。」
そう言われて開いてみたが、本当に何も書いていなかった。
表紙には −選ばれし者よ− と書かれていた。
このノートは本当に俺のものなのか…?
そう思って表紙をめくりほんの小さな書き込みがないかを確かめようとした。
すると、表紙の裏に薄く小さい文字で文章が書いてあるのを見つけた。
『−手放すことを許されぬ汝は
身近な者を頼り前に進み続けよ−』
書いてある文章を声に出して読み上げたら、部屋全体に光が放たれた。
しばらくしてから目を開き、ガヘリスさんとガレスさんの方を見る…。
そして再びノートに視線を落とすといつのまにか、
白紙だった1ページめに
3行の文章が綴られていた…。