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「ん…。」
目が覚めて回りを見渡す。
俺の視界に入るのは木造の天井と、棚いっぱいにしまわれた本だけだった。
背表紙に書いてあるのは記号のようで俺には読めなかった。
ここはどこだ?
どうしてこんなところに…?
とりあえずここから出よう。
そう思って立ち上がりドアを探す…
「へ…?」
俺がいる部屋のドアには、ドアノブがない…
ダンッ!!
押してもびくともしない。
「どーゆーことだよ…。オイ!!誰か!!このドア開けてくれよ!!」
なんどもドアを叩き、人が居るかもわからないドアの向こう側にむかって叫ぶ。
ガチャ…
意外と早く開いたドア…
「うるさいぞ。静かにしろ。」
そして冷たい声で吐かれた台詞
顔をあげると、
1人の男が立っていた。
綺麗な顔立ちをしていて、少し見とれてしまった…
しかし、瞬きをして正気に戻る。
こいつは男だ。男の俺が見とれてどうする。
そうして動揺を隠すようにその男に低い声で話しかけた。
「ここはどこだよ…。」
「答える必要はない。」
「なんでだよ!」
「後で詳しく話されるだろう。お前名前は?呼び方が分からないと会話もろくに進まないだろう。」
「俺は…。 俺の… 名前は…?」
鼓動が激しくなっているのが自分にもわかる。
俺の名前はなんだ?
「自分の…名前が分からないのか?
私はガレス・ド・ディアボロス。ガレスと呼べ。」
「……」
状況が飲み込めなくて言葉が出ない。
「おい」
「…」
「上でじいちゃんがお前を待ってる。」
「…?」
「話したいことがあるらしい
お前自信が疑問に思っていることにも答えてくれるだろう。」
そう言って…ガレスという男はドアを開けたまま部屋から出て行った。
なんで…俺は俺の名前がわからないんだ…?
今までの記憶を辿ろうとしても俺が立っている位置からはいくら振り返っても道がない。
上にあがって行けば…理由が分かるかもしれない…。
俺は拳を強く握りしめ
立ち上がって部屋をあとにした。
階段を登ってドアを開ける。
薄暗い部屋にいたせいか、眩しくて目の奥が痛い。
それでも俺は目を瞑らないで部屋の中に居る人物から視線をそらさなかった。
光のせいで顔が見えないけど、シルエット的には老人が1人とさっきの奴がいる。
「よく来たな…。と言うのは失礼かの。も少しこっちへ寄りなさい。」
そう言って手招きされた俺は言われた通り一歩ずつ近づいていった。
「私はガヘリス・ド・ディアボロス。ガレスの祖父だ。少し話がしたいんだが…。
まだ…気持ちは落ち着かんだろ。なにか、聞きたいことはあるか?
出来る限り答えようとは思うんじゃか。」
そう言って不安を掻き出すように笑ってくれた。
その笑顔を見たとたん…
必死に繋いでた糸が切れたみたいに
固く握っていた掌から力が抜けて
目から涙が溢れて止まらなかった。