同志
パトラ・リカードはドルド王国のドニルコイ地方に住むドニルコイ大学経済学部の二年生で二十歳である。彼について何も知らない人は彼のことを普通の人だと思うだろう。しかし,彼の過去を知れば,彼に同情する声と批判する声が交差することだろう。
パトラは三歳の頃,母親を病気で亡くした。それからは父親が一人で彼を育てていた。しかし,彼が六歳の頃に事件は起きた。父親が同僚の妻と娘を殺害したとして逮捕されたのだ。彼の父親は無罪を主張した。しかし,主張も虚しく終身刑を言い渡された。彼も父親の無罪を信じていたが,どうすることもできなかった。
それからは,伯母の夫婦に育てられた。しかし,彼が八歳の頃,父親が刑務所から姿を消した。正確には父親を含めた囚人が数十人姿を消した。警察が大捜索をしたが,遂には一人も見つけ出すことはできなかった。
彼には父親が人を殺したり脱獄したりするとは思えなかった。もし父親が無罪になったとしても,どうしようもない現実に頭を抱えることしかできなかった。
それでも,パトラは無事に大学生になり,一人暮らしをしていた。人生の半分以上をその出来事とともに生きてきたため,ある種の慣れもある。楽しいことも思いっきり楽しめる。
今日も一人で夕飯に食べるつもりで,レタスとローストチキンのサンドイッチを用意していた。食べようとした矢先,ドアがドンドンと叩かれる音を聞いた。ドア越しに外を見ると,見知らぬ男が一人で立っていた。
彼のところにはいろいろな客が来る。大学の友人,地域の子ども,ジャーナリスト,報道関係者,セールスなど…
少なくとも大学の友人や地域の子どもではない。では,ジャーナリストか報道関係者だろうか?彼のもとに来るジャーナリストや報道関係者は基本的にはいつも同じで父親の事件を追っているドルド新報のアオジ・ブレンコフ氏か西ドルド報道社である。他のジャーナリストや報道関係者が訪ねてくることは数年に一度しかない。ただ,ジャーナリストや報道関係者が来るならば,事前に電話がかかってくるはずだ。それならば,セールスだろうか?しかし,セールスにしては荷物が少なく見えた。
もう一度男の姿を見た。スーツ姿で三十代から四十代ほどに見えるその男はますますパトラを混乱させた。しかし,見覚えがあるような気もするし,ドルドの人間ではないような気もする。
そんなことを考えているうちに,長い時間が経ったような気がした。相手を待たせていると思い,焦って玄関のドアを開けた。すると男はパトラの目を見て,
「私は同志だ。君と同じだ!」
と言った。




