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18. 魔女のものを狙う者



「調練師というのは、古代の魔女の魔法によって主従契約を結んだ……獣兵器を操ることができる人間を意味する」


ユフィに支えられて椅子に腰掛けたハルが、掠れた声で説明を始めた。その言葉に、ユフィは信じられないという表情を浮かべて問い返した。


「人間が……魔女の主従契約を真似たというのですか?」

「そうだ。魔法で結ばれた主従契約であるがゆえに、獣兵器は決して調練師に逆らうことはできず、互いのどちらか一方が死ぬまで……契約は持続する」


先ほどユフィを受け止めた際に肺を痛めたせいで、ハルは一言を発するたびに激しく咳き込んだ。


彼を支えるために隣に座っていたユフィは、手巾に付着した血の跡に反射的に眉をひそめた。彼女の視線がハルの顔へと向かうと、彼はまだ話せるというように、小さく首を横に振った。


「……」


数十の言葉と数万の感情が、一瞬にして喉元まで突き上げてきた。ユフィは込み上げる言葉をぐっと飲み込み、続く彼の言葉に耳を傾けた。


「かつて、戦争においては……一人の調練師につき、少なく見積もっても十、多ければ三十頭ほどの獣兵器を操ることができた」

「そんな、馬鹿な……」


本来、人間は魔女の魔法を扱うことはできない。根本的に、平凡な人間には魔力というものが存在しないため、扱う術がないのだ。


もちろん、研究や魔女の協力によって作られた魔道具を使用すれば魔法を使うことはできる。魔女との混血たちであれば魔力があるため、彼らも真似事くらいはできるだろう。


しかし、いくら模倣し、似せて真似たところで、生命の根幹を揺るがす主従契約を容易に結べるはずがない。


契約は魔女一人に対して使い魔が一匹。双方の合意のもとに解消されない限り、一度結ばれた契約は永遠に持続するものだ。


魔女の一部を譲り受け、魔女の力を使用することができ、魔女の寿命に従う使い魔は、魔女と一芯同体でもある。


古代から存在する規律であり、最も強力な魔法を、カランの兵士たちは一体どのようにして再現したというのか。


その上、数十頭もの使い魔と主従契約を結ぶなど、リベリカの常識では到底理解し難いことだった。


さらに、使い魔の糧となるのは魔女の魔力だ。その膨大な魔力を、彼らは一体どうやって賄ったのだろうか。


眉をひそめて思考を巡らせていたが、いくら考えてもユフィの知識では納得がいかなかったため、彼女はリベリカを見つめて尋ねた。


「師匠。どうしても納得がいきません。一体どのようにして……」


しかし、ユフィの言葉が最後まで紡がれることはなかった。ただ静かに、腕を組んだまま会話を聞いていたリベリカが、刹那の瞬間、世界を覆してしまいそうなほどの、悍ましい殺気を放ったからだ。


瞬き一つするほどの僅かな時間。それにもかかわらず、滲み出た冷や汗が顎を伝ってぽたぽたと流れ落ちた。


「そうね。卑しい人間どもがどうやってそんな真似をしたのか、私も少し興味があるわ」

「……」

「ハル、主従契約をどうやって断ち切るのか、獣兵器たちをどのように運用していたのか覚えているかい?」

「主従契約を断ち切る方法は分かりません。そして、調練師が生きている限り、獣兵器は死んでも死にきれず、絶え間なく肉体を再生させていました」


先ほどの殺気のせいで、ハルの咳はさらに激しくなった。それに気づいたリベリカが、申し訳なさそうな表情でハルを見つめながら言葉を続けた。


「おや、すまないね。ついつい感情が先走ってしまったわ」

「大丈夫、ごほっ……大丈夫です。獣兵器は有用でしたが、使用期限が短かったようです。彼らは死にませんでしたが、長くても三ヶ月、短ければ一ヶ月も経たずに交代させられていましたから」

「効率が悪かった、ということかい?」

「はい。それに、死なないとはいえ結局は獣ですから、知能の面で……人間に勝つことは難しかったのも、廃棄の要因だと推測していました」


実際に獣兵器が投入された当初は、軍の犠牲者も多かった。しかし、後半に進むにつれて死者の数は減り、簡易的なブービートラップだけでも獣兵器たちを処理できるようになると、カランは未練なく兵器をすべて廃棄した。


そして、その後に現れたのが獣人兵士だ。


「かつてすべての獣兵器を廃棄した調練師が再び現れた。そして、シフを狙っている、か……」


続くリベリカの言葉に、ユフィは目を細めた。ふと、シフと初めて出会った日のことが脳裏をよぎった。


大迷宮の前、捨てられていた数多くの動物たちの死骸。かろうじて息を繋いでいたシフの、あまりにも赤い眼差しを覚えている。


危うく、脆く、そして無惨に捨てられていた。それにもかかわらず、生きることを諦めていないその視線は、他の何よりも超然として美しかった。引き寄せられるように近づいたユフィに対して、牙を剥き出しにした傷だらけの獣。


「……彼らはなぜ、シフを連れ去ろうとしたのでしょうか?」

「よくは……分からん。しかし、何らかの理由でシフが必要になったことだけは確かだろう。だからこそ、魔女のものだと知りながらも……連れ去ろうとしたのだろうな」


魔女のものを連れ去ろうとする?


(よくも、私のものを)


ユフィの真っ青な瞳に、激しい怒りの炎が灯った。無惨に捨てておきながら、今になって連れ戻そうというのか。ユフィの口元が歪に吊り上がった。なるほど、そういうことか。


「面を拝んでやらなければいけませんね」

「殺しては駄目だよ。私も気になるのだから。奴らがどうやって魔法を活用したのかがね」


二人の魔女の顔に、残酷な光が宿った。重苦しく、そしておぞましく沈み込んだ食堂の空気のなかで、耐えきれないと言わんばかりにバンデオンが二人の肩を掴んで押し下げながら叫んだ。


「あー、もう、本当に! 二人とも腹が立つのは分かるけど、少しは落ち着けって! ババアは心臓が弱いし、ハルは重傷者なんだぞ! 目つきで人を殺す気か!?」



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