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滅亡世界の機械と少年  作者: がみれ


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第四話「絵画と贈り物」

「その後、俺はあいつの家に住ませてもらうことになってな。まぁ、あいつは数ヶ月に一回しか帰って来なかったが」


「じゃあ、ここが?」


「ああ。だからだろうな。俺はここから動く気はねぇし、帰ってくると未だに信じてる。まだ、恩返しできるなんて期待の薄い望みをかけてな」


「でも、その足じゃ仕事に就くことは出来なかった。恩返しするための資金集めは難しい。命を救った行為に対する対価は支払えない」


 少女の言う通り、軽い肉体労働も少年には出来ない。かと言って、動かずに出来る楽な仕事にはお金がかかり本末転倒。


「だから、諦める。なんて、下を向いていられるような性格だと思うか?俺が」


 その言葉に少女は一つの答えにたどり着き、天使の輪がより光を帯びる。


 少年は言った。

 星を見ると綺麗だと。評価には美学的な視点を用いるべきと。


 それでいて、片足片目でこの家から可能な限り出ることなく出来ることといったら一つ。


「その条件下で可能な行為。芸術作品の創造と推測」


「正解!!」


 少年は指を鳴らした。


「まぁ、完成する前に染料が切れちまったがな」


「何を描いてた?」


「あいつと初めて会った時の光景だよ。あいつは自分がやったことがどんだけすごいことなのか何にもわかっちゃいねぇ。だから、俺視点で見せてやりてぇんだ。かっこいい姿を」


 月明かりに照らされたあの少女の姿を少年は忘れていない。きっと、現実と同等の光景を描けるだろう。


「染料があれば描ける?」


「ああ。そりゃあ、頭ん中に絵は浮かんでるからな」


「染料の名称は?」


「なんでそんなこと聞くんだ?」


「芸術作品は機械によって模倣可能な箇所とそうでない箇所が存在。完璧な芸術作品の作成を求めるなら人間の心を材料にすべき」


「もしかして、持ってきてくれるのか!?」


 少女の答えに少年は勢いよく起き上がる。思わず少女の腕から落ちそうになるほどに。


「肯定」







「って、今かよーーー!!!」


 少年は大声で叫ぶ。

 しかし、その叫びは駆動音にかき消される。


 少年は空を飛んでいた。

 ガッシリと少女の腕に掴まれて。


「バカ!!早く降ろせ!!」


「今、降ろしたら地面に激突。死亡」


「だったらやる前に言え!!」


「理解。事後報告は不良と記憶。一秒後に急加速を開始」


 少女の背中が開く。円形のエンジン部分が露出し、少女は急加速した。


「言えばいいってわけじゃねぇーーー!!!!」


 流星のように空を飛ぶ少年の叫びはさらなる騒音にかき消され、美しい軌跡で曇りの空に色を付けた。


「はぁはぁ、マジで、死ぬかと思った」


「人間は頭部と出血に気をつければ死にはしない」


「そん中にショック死っていうのもあんだ。覚えとけ」


 顔色悪く、ぐったりとする少年。

 それを無視し少女は遠くを見ていた。


「………」


「おーい、何ぼーっとしてんだ?」


 少年は少女と同じ方を向く。

 しかし、遠くに何か動くものがあるぐらいしか分からなかった。


「人間が機械種族に襲われている」


「そうか。で、どうすんだ?」


「どう、とは?」


「助けるか、助けないかだ」


「……人である君はどう思考し、行動する?」


 首を傾げ聞いてくるが何をすべきかはとうに決まっていた。


「助けられるか?」


「反逆者になれと?」


「そうならねぇように俺が何とかしてやるよ。いい案があっからな」


 少年は少女の肩に手を乗せ降り立つ。

 そこは、襲撃する機械種族に一番近いビルの屋上。砂漠の中で追われてる人間と追う機械がはっきりと見えた。


「見てろ」


 ゆっくりと少年は息を肺いっぱいに吸う。

 そして、少年は叫んだ。


「人間はここだ!!!滅ぼすべき人間はここだー!!!」


 腹から出したその声は辺りに響いた。

 その瞬間、全長四メートルはある機械は方向を変えこちらを向いた。


「見ろよ。はは、あの巨体。あんなのに襲われたら俺は一瞬であの世だ」


 指を指し笑いながら少女の顔をのぞきこむ。


「何をやって」


「すると、お前が俺を観測するのは今日で最後になる」


 その時、さっきまでの笑みとは違った笑みで少年は言った。


 砂漠を踏みしめる音と、圧倒的な巨体がどんどん近づき砂埃を上げる。地響きで足元のコンクリートが揺れる。それにも関わらず、少年は少女を見続ける。


「どうする?俺を見殺しにするか?それとも、俺を助け観測を続けるか?」


 巨体は目の前まで迫り、ビルを壊せるであろう拳が振り下ろされる。

 瞬間、少女は腕を変形させる。そこから一丁の銃が現れ巨体の核を撃ち抜く。


 パリンとガラスが割れる音とともに巨体は倒れ、爆発した。


「卑怯」


「それが人間ってもんだ」








「この絵が例の人物?」


「ああ、かっこいいだろ」


 家に帰り、少年は絵を見せる。

 まだ、色の塗りが途中の未完成品だったが。


「奥のは?」


 部屋の隅に寄せられた布のかぶった絵について少女は聞いた。


「一応描き終えたやつだが、上手くできてねぇんだ」


 少女は布を取ってそれを見た。

 絵はお世辞にも上手いとは言えなかった。


「確かに下手」


「贔屓のねぇ評価をありがとよ」


 少年は画材を用意し、椅子に座った。

 それに対し、少女は椅子を隣に置いた。


「私も描いていい?」


「ああ、お前のおかげで絵が描けんだ。文句はねぇよ」


 その言葉に少女の天使の輪がより光を帯びた。

 それから少女と少年は毎日絵を描き続けた。








 そして、とある日のこと。

 

「何だこれ?」


 少女は少年にある物を手渡した。


「義足。砂漠の時のお礼で生き残りの場所が分かる地図ももらったし、私がいない時も何かあったら不安だから」

 

「何かって、お前大体ここいるだろ」


「それでも受け取って。私が作ったから」


「そう言われたら断れねぇな」


 少年は義足を取り付けた。

 当然すぐには動かせないが、それより一つ少年は気になった事があった。


「お前って口調柔らかくなったよな」


「そう?」


「ああ、プレゼントもくれるし」


「これが?」


「だって贈り物だろ?」


「私が知った人間としての知識と考え。それに対する対価と死なないようにするための打算がプレゼント?」


「ああそうだ。日頃の相手に対する感謝として何かあげてんだからそうだろ。それとありがとな」


「……感謝、、私もいつか」


 少女はボソッと呟く。


「ん?何か言ったか?」


「いや、何でもない」


(今はいいや。いつか言おう)


 そう思い、少女は隣で絵を描き続けた。

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