第28話 秘密
自宅で行われているお泊り会で、スマホを片手に焦っている人は、私のお兄ちゃんのことが好きな大食い大学生、若月沙也加さんです。
「オッケーされたら告白するってことなんだよ!?そんな覚悟まだないし、もっと慎重に――」
「ツッキー、私が言うのもなんだけどさ……飯田君はアイツとは違うって。」
そして、焦る沙也加さんを落ち着かせるべく口を開いたのは、その親友の田中蒼さんです。
「そんなことはわかってるよっ!でも怖いの……好きだからっ!本気で好きだから、告白が失敗したときのこと考えると、怖くて仕方ないんだって!」
沙也加さんが言い放った、アイツという言葉に、私は引っ掛かりを覚えました。
その言葉が指す人物は、恐らく……
沙也加さんが、お兄ちゃんにもまだ話していないと言っていた、あの秘密が関係しているでしょう。
時は遡り、沙也加さんが初めて我が家に来た日のこと。
悲しい失恋の過去を持つお兄ちゃんが女性を部屋に招いていたことには驚きました。
しかし、それ以上にもっと驚くべき事実が、その日の夜、沙也加さんの口から私へ伝えられました――
「あ、あの…沙也加さんは、兄のことが好きなんですか?」
「え?」
「だって、そうじゃないと、わざわざおうちに来てご飯を食べたいなんて…普通だったら言わないかなって。」
「……そうだよね。”普通”だったら言わないかもね。」
その言葉を最後に続く、気まずい沈黙。
それを破ったのは、沙也加さんでした。
「好きだよ。とっても。それに、充くんも多分なんとなく気づいてる。でもね、私が充くんとご飯が食べたいのは、それだけが理由じゃないの。」
「それってどういう……?」
「まだ充くんにも話していないんだけど……私の話、聞いてくれる?」
私は、その言葉に、声を出さずに頷きました。
「実はね……昔の恋人が、かなりの浮気性でさ。」
「えっ……」
ふと脳裏に浮かんだは、お兄ちゃんの恋愛事情でした。
浮気によって苦しむ人間を、まじかで見てきた私は続く返答に困り、黙り込んでしまいます。
けれど沙也加さんは、言葉を紡ぎます。
「ある日、浮気現場にばったり出くわしちゃってね……で、元恋人は私に話しかけられても他人のフリ。」
自嘲気味な笑顔を浮かべて受け答えする沙也加さんは、その内面に、とてつもない悲しさを秘めているように感じました。
この人は、泣くのを我慢しています。
私は、お兄ちゃんが元カノの浮気現場を発見した日の夜の姿を、自然と沙也加さんに重ねていました。
私が、慰めなければと正しい言葉を探しながら口を開こうとする前に、沙也加さんはさらに続けます。
「しかも、後で聞いたらさ、『料理は浮気相手の方が美味しい』とか言うんだよ。それで、頑張って、料理の練習してさ。でも、それを食べてもらう前に、相手からきっぱりと別れを告げられて……」
沙也加さんの過去を聞いて、腑に落ちました。
「だから、料理ができる兄を……?」
「そういうこと! 一緒に料理作りあって、イチャイチャして……そんな様子が、自然と想像できたの。この人ならって、そう思ったの!」
すべての事情を知った後、私は思わず号泣してしまいました……
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