第26話 彼ならきっと大丈夫だ
引き続いて蒼視点です。
映画のエンドロールが流れ、みんなが口々に感想を言い出す。
「最後のキスシーン、やばかったですね!私もあんな恋したいなぁ」
「美月ちゃんならかわいいしできるよー!」
「えっへへぇ、そーかなー」
美月ちゃん、照れててかわいいけど、『えへへ』が完全に変態おじさんのソレだ。
実は女の子好きなのかもしれない……
あっと、いけない。
美月ちゃんの性癖について脳みそが考え始める前に、私はツッキーに声をかける。
「ねえツッキー、飯田君の話なんだけど」
「えっ!?どうして急に……何かあったの?」
明らかに不安そうな顔をするツッキー。
私は、それをあやすように続けた。
「さっき茶武郎から連絡があってさ。恋バナしてたんだって。」
あ、ツッキーの顔がさらに強張った。
言葉選びミスったな……ごめんツッキー。
私は、なるべくツッキーを刺激しないように注意しながら続ける。
「ツッキーさ、前に飯田君がツッキーの気持ちに気づいてると思うって言ってたでしょ?」
「うん……それがどうかしたの?」
「それ、そんなことなかったらしいよ」
「えぇ!?」
驚愕するツッキーに、横で『あの鈍感兄貴……消す』と呟く美月ちゃん。
おーい、聞こえてるよー。
各々のリアクションを確認してから、私はさらに付け加える。
「それで、ツッキーの合コンでのアプローチが恋愛なのか友情なのか測りかねてるみたいでさ。」
「やったぁ!……じゃないよね、一大事だね……アハハ。」
「なぜ喜ぶ!?」
「だってさ、私のこと真剣に考えてくれてたってことでしょ?うれしくて!」
本当にこの娘は前向きで可愛らしい。
思わず自分の口角が上がるのを感じていると、美月ちゃんが焦る口調で口を開く。
「ち、ちょっとストップです!わざわざお兄ちゃん達がそんな話しているってことは、お兄ちゃんが沙也加さんを好きってことになりませんか!?」
「……たっ、確かに!!どうしよう、私、告られちゃうのかな!?」
まずい、二人興奮して、話が違う方向に進んでしまった!!
「えっと、そうじゃなくてね!?飯田君も自分の気持ちが曖昧みたいで、ずっと寝れてないんだって……特別に思ってるのは確かなんだけど、それが恋か友情なのか分かんないって」
「そんなに私のこと、ちゃんと考えてくれてるんだ……」
そんなセリフをつぶやき、はにかんで下唇をかむツッキー……
正直、こんな美女がいたら絶対惚れるし、飯田君の抱く感情も恋愛寄りなんじゃないかって勝手に思ったりもする。
ツッキーの隣でプルプルと震えて目をギンギンにしている美月ちゃんがその証拠だ。
ちょっと怖い。
よし、前提は伝えた。
ここからが本題だ!
私は改めてツッキーに向き直る。
「だから、さっき茶武郎と相談してみたんだけど、二人で合って話してみたほうがいいんじゃないかって……」
「え、いつの間にそんなに話がっ!?って、二人で会うって……!」
そう言って焦るツッキーの傍ら、目を輝かせて口を開いたのは美月ちゃん。
「確かに、お互いに会わない間も相手のことを考えちゃうほど特別に思いあってるなら、それが恋であれ友情であれ、正直に気持ちをぶつけあった方がいいかもですね!」
頷かざるを得ない肯定の言葉だ。
けど、ツッキーは難しい顔をしていた。
「気持ちを伝えたほうがいいって簡単に言うけど、それってつまり告白だよ?充のことは好きだけど、正直そこまで覚悟できてないっていうか……」
確かに、その懸念は尤もだ。
気持ちを伝えたら最後、その先に待っているのは、ハッピーエンドかバッドエンドしかないのだ。
だけど、飯田君の人格は茶武郎から聞いている。
彼ならきっと大丈夫だ。
私はテーブルに置かれたビール缶の中身を一気に煽り、目の前の金髪美女の説得を始めるのだった――
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