第20話 二次会
今回は美月視点からのスタートです。
「だーかーらー!何を言われてもこれ以上は教えないからね!!」
あるカラオケボックスで、私たちは二次会をしていました。
蒼さん、往生際が悪すぎます。
「じゃあ、私たちで当てるのはどうでしょう?」
「いいね!もうほぼ二択だしっ!」
「ちょっと待ってってば!!」
蒼さんの制止もむなしく、私たちは蒼さんの好きな人当てゲームを開催しました。
「ぶっちゃけ、茶武郎くんかカケルくんのどちらかなんでしょ?」
おっと、ここで初めて聞く名前が出てきました。
「というか、その、カケルさん?ていう人を私が知らないので、おそらく……」
訪れる沈黙。
黙り込む私たちの視線の席には、ひどく赤面して俯く蒼さんの姿。
「あ、当たっちゃったね美月ちゃん」
「そ、そうですね。沙也加さん……あはは、」
私の乾いた愛想笑いが悲しく空間に響いています。
気まずいです。
「……ごめんね、蒼。なんか歌う?」
言って、沙也加さんが蒼さんにマイクを差し出します。
「……うん」
蒼さんは、俯いたまま返事をして、マイクを手に取りました――
そして三十分後、私たちが取り囲んでいるテーブルにはたくさんの食べ物が並び、蒼さんはマイク片手に上機嫌です。
蒼さんと茶武郎さんの関係が私たちにバレたことによって、今この部屋は祝福ムードです。
当の本人も気にしないことにしたようで、先ほどからラブソングばかり歌っている印象です。
ボーイッシュな見た目からは想像もつかない、かわいい歌声で、なぜかすごくゾクゾクします。
ところで、私は歌がちょっとアレなので、ずっとマラカス担当です。
入口の所にタンバリンもあったし、今度はそっちをやろうかな……
そんなことを考えていると、不意に沙也加さんが私の隣に腰かけました。
「美月ちゃんは、歌わないの?」
「私、歌だけはNGなんです」
「そっか」
食い気味に反応する私に、くすっと笑いながら相槌を打つ沙也加さん。
「ねえ。美月ちゃんって、ブラコンなの?」
「はっ!?……」
あまりに大きな話題の振れ幅に、思わず大きな声を出してしまいました。
「違いますっ!!」
「だよね。ただ、ちょっと怖くなって……」
寂しそうに俯く沙也加さん。
「……どうして、怖いんですか?」
「だって、私がお家にお邪魔したときはすごい警戒されていたし……私の秘密を聞いたせいで、気の毒に思った美月ちゃんが好きを我慢してるかもって思うと……」
沙也加さんはそこまで言うと、続きの言葉が見つからなくなったかのように黙り込んでしまいました。
まったく、やれやれです。
人のことばかり考えて、気遣って、結局自分を犠牲にしてしまっているのはどちらでしょうって話です。
沙也加さんのこういうところは、なんだかお兄ちゃんに似ていて、心が温かくなります。
だから私はできるだけ明るい声でこう言いました。
「あんなバカ兄貴、沙也加さんしか一緒にいてあげられませんよ。だからどうか、これからもそばにいてあげてください。」
「……ありがと。妹公認なら、ガンガンいかなくちゃね!」
私の言葉を聞いた沙也加さんの顔が晴れるのと同時に、今までBGMと化していた蒼さんの歌声がハッキリとしたものに戻りました。
ふとフライドポテトに目をやると、沙也加さんが最後の一本を食べきる所でした。
「……何か食べようかな。」
私は誰にも聞こえない声で独り言ちると、フードメニューの書かれた冊子を片手に、壁に掛けられた受話器を取りました――
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