第19話 小腹満たしのサクジュワ焼き肉まん
「この前合コンにいた子なんだけど……田中蒼って、知ってるか?」
……誰だそれ。
僕が頭の上にはてなマークを浮かべているのに気づいた茶武郎は、慌てて補足をする。
「若月さんの隣にいた人だよ!自己紹介できなかったけど……」
「……あぁ!」
思い出した。
沙也加さんが暴走したせいで、自己紹介の順番が回ってこなかったんだっけ。
へぇ、田中さんっていうのか。
「そうかぁ、ついに茶武郎に彼女が……」
「ついにって、俺別に初彼女じゃないからな?」
「え……」
「言ってなかったっけか?」
「おい茶武郎、合コンの時から陽キャ感満載だなとか思っていたけどそこまでだったとは……いつからだ、コノヤロー!」
「付き合いだしたのは、あの合コンの翌日からだけど……」
ニヤニヤとのろけを挟む茶武郎。
そういうことを聞きたいんじゃない!!
「田中さんの話じゃねえ!!いつから陽キャだったんだよぉ!お前、中学の時に僕と一緒に非モテ同盟作ったじゃんかー」
「いつの話してんだよっ」
笑いながら、チョップをぶつけられる。
「まぁいい。今日は寝かさないからな!とことん話を聞こうじゃないか、お前のモテエピソードを!」
「お前のそういうとこ、ほんと若月さんと似てるよな」
茶武郎が、詰め寄ってきた僕に対してそんなことを言う。
似てる……?沙也加さんと僕が?
そんな馬鹿な。
僕はあんなにたくさん食べられない。
「充、お前耳赤いぞ」
「ぅな!?」
茶武郎に指摘され、慌てて耳を抑える。
「こりゃ、お互いに話題が尽きないだろうな。」
「僕はしゃべることなんてないからな」
「夜になりゃわかるよ」
――昼頃。
お腹をすかせた僕たちは、散策をやめてテントまでの帰路をたどっていた。
が、到着したのはお昼と呼ぶには遅い時間。
この時間にがっつりお昼を食べてしまうと、この後の夕飯が入らなくなってしまう。
沙也加さんではあるまいし。
そこで、軽く小腹満たしになるものを作ろうという結論に至った。
大活躍したのは、こんなこともあろうかとコンビニで購入していた肉まん。
そして――
ホットサンドメーカーだ。
まず、ホットサンドメーカーの両面にバターを薄く塗る。
次に、肉まんを挟んで弱めの中火で片面二分から三分焼く。
表面がこんがりきつね色になったら完成だ!
様々なメディアに登場した経歴を持つ激うまキャンプ飯であり、僕も一度だけ家で作ったことがある。
お手軽な上にジャンキーかつジューシー。
小腹満たしには最適の逸品だ。
今回は、茶武郎と半分こ。
包丁で分断すると、中からブワっと肉汁が広がる。
うわぁ、絶対美味い……
「なんかいい匂いするな」
そう言って、茶武郎も横からのぞき込んでくる。
「はい、皿よこせー」
「はいよ」
そうして渡された紙皿に、焼き肉まんの片割れを載せる。
もう一回言うが、絶対美味い。
「いただきまーす!!」
横で茶武郎が合掌する。
「待て茶武郎」
「……?」
僕はそれを止めて、関東では比較的珍しい、餃子のたれの入った小袋を渡す。
「なんだこれ、餃子のたれ……?」
「あぁ、それにつけて食べるとうまいぞ。」
「へぇ!おもしろいな」
言って、さっそく小袋を開封した茶武郎の服を、飛び出たタレが汚した。
「ちくしょう、いつも上手く開かないんだよなぁ……」
「不器用だな……っと、うわぁ!!」
「自分もできてないじゃんか」
「うるせぃ!」
茶武郎をあざ笑った直後、自らの服にも同じ悲劇が……
と思ったら、今日は黒を基調とした服で、案外目立たない。よかった。
さぁ、気を取り直して飯だ。
僕は、箸で肉まんを持ち上げると、皿に出した餃子のタレにちょんとつけて口に運ぶ。
シャオ、と心地の良い音が脳に響き渡る。
豪快にかぶりついた部分から、あふれんばかりの肉汁が……
包んでいる生地は違えど、中身はひき肉。
餃子のタレが合わないはずがない……!
この美味しさに不釣り合いなお手軽さに感動を覚えていると、隣からプシュっと缶を開ける音。
「おい茶武郎、まだ昼間だぞ?」
「何言ってんだ充、今日は休日だぞ?」
僕のツッコミに、茶武郎が軽口をたたく。
そして、しばしの沈黙の後、互いを見つめ合ったまま笑いが起こる。
よし、楽しくなってきた!
プシュ。
そして僕も、クーラーボックスから取り出した缶を開けるのだった――
今日のレシピは、第1話のピザの元ネタと同じである某有名キャンプコミックからの引用です。
簡単で美味しいので、皆さんも是非!!
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