第17話 面白くなってまいりました
「えっ……それはさすがにお兄ちゃんが鈍感すぎませんか!?」
「やっぱり美月ちゃんもそう思うよね!?」
「まぁ、チャラすぎて進展が早いよりましな気がするけどなぁ……」
私たちは今、沙也加さんの恋バナに花を咲かせていました。
ちょうど一番新しいお話を聞いたところです。
なんでも、お兄ちゃんが鈍すぎてラブコメにならないそうで……
そのあとも、沙也加さんによる愚痴っぽいのろけを数十分にわたり聞きました。
早くくっついちゃえよと思いました。
そして、話題は時間とともに移り変わり、蒼さんの恋バナが始まりました。
「まず聞きます!蒼は、今意中の相手はいるんですか!」
沙也加さんが手をグーにして、蒼さんの口元に近づけました。
エアーマイクってやつですね!
「えっと……それ言わなきゃダメ?」
「だめです!私はもう語りつくしたから、次は蒼の番だよ!」
沙也加さんが蒼さんに手を執拗に近づけて、後者がのけぞり、を繰り返し行われる光景が目の前に流れています。
新しい扉が開いたらいけないので、そろそろやめてほしいのが中学三年生の切実な願いであります。
ちなみに、お兄ちゃんはもう目覚めています。
本棚にそういう小説があるのを見つけちゃいました。
写真は撮ってあるので、いつか脅すときに取っておこうと思います。
大学生の二人によるイチャイチャがようやく収まったころ、蒼さんは暴れたせいで乱れた前髪を軽く指で整えてこちらに向き直りました。
「じゃあ、改めて!」
と、沙也加さんによって仕切りなおされます。
黙って押し通すつもりだったのでしょうか、蒼さんはだいぶ残念そうな顔をしています。
「えぇ、秘密じゃダメかなぁ……」
「往生際が悪いな~、くすぐっちゃうよ?」
言って、沙也加さんが蒼さんのわきに手を回して……
「わかった!話すから!お店の中ではやめて!!」
この二人、最高に教育に悪いかもです。
今日の夜の検索履歴が、聖母マリアの象徴の名称で埋まる様子が脳裏に浮かぶくらいには。
「よしっ!言質とったからね。」
「私も気になります!」
沙也加さんの発言に私も便乗してみます。
「美月ちゃんまで!?」
「ほらほら、はやくぅ」
せかす沙也加さん。
ただ、蒼さんに意中の相手がいるかどうかで言うと、いると思います。
だって、いなかったら『いない』でいいもん。
沙也加さんはきっとそれをわかっています。なんて恐ろしい人なんでしょうか!
内心で沙也加さんを称えていると、蒼さんはようやく観念したように口を開きました。
来るっ……!
「い、いる……よ。」
視線は斜め下を見つめ、恥ずかしそうに手の甲を口に当てる仕草はまさに眼福です。
美月、この一日で性癖が追加される予感……
そんなことはさておいて、やっぱりいらっしゃった!
「やっぱりいらっしゃったんですね!」
「私もそうだと思ったんだよー」
「じゃあ私が言わなくてよかったじゃん!」
顔を真っ赤にして怒る蒼さんもかわいらしいです!
「いやぁ、確信がなかったから」
「まぁ、私が公言しなければわからないし、仕方ないんだけど……」
言って、蒼さんは口にコーヒーカップを近づけます。
そのタイミングで、私は新しい話題を振ってみました。
「ところで、お相手は私たちの知ってる方なんですか?」
「……っ!! ゴホッ、ゴホッ」
私の質問を受けた蒼さんは、コーヒーが器官に入ってしまったのか、激しくせき込み始めました。
どうやらビンゴのようです。
面白くなってまいりました……!
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