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第15話 ワンタンスープ

ずっと、こういう話が書きたかったのです。

「じゃーん!!」


ハイテンションの沙也加さんが取り出したのは、一つのスープジャー。


「まさか!?」


「そのまさかだよ!今日、充には私特製のスープを食べてもらいます!!」


今朝、メッセージアプリで言っていた『すごいもの』って、スープのことだったのか。


「はい、これ今日の分。」


僕は驚きつつも、沙也加さんの分の弁当箱を差し出す。


「ありがと!もう食べていいかな?ぺこぺこで……」


先ほどは心なしか寂しく見えた沙也加さんは、今はもうはにかむ笑顔を浮かべてそんなことを言う。


「召し上がれ、僕もいただきます」


「はい、召し上がれ」


お互いにあいさつを済ませたところで、自然と僕たちの意識は弁当の中に向けられた。


ちなみに、スープジャーとは別で、きちんとお弁当箱もある。


お弁当箱のサイズは、スープの影響かいつもより小さい。


大食いの彼女らしからぬ配慮に少々感慨を覚えた。


「スープジャーの中身はワンタンスープか!」


「そう!ワンタンも肉団子も手作りなの!すごいでしょ!?」


マジか。


ぶっちゃけ市販のものと区別がつかない。


相当ハイクオリティだぞこれ。


「そうなの!?すごい美味しいよこれ。市販のやつかと思った」


「………」


僕の正直な感想を聞いて、突然俯いて黙り込む沙也加さん。


どうした、なんか耳も赤いぞ。病気か?


弁当は安全に考慮して作ったはずだぞ……?


「沙也加さん、大丈夫?具合でも悪くなった?」


様子を見ようと思い、身をかがめて沙也加さんの顔をのぞき込む。


――と、


沙也加さんは、僕が作った弁当箱をベンチの上に置いた。


え、まじで食中毒とか……?


怖くなって今日の弁当の調理工程を脳内で再生していると、今度は沙也加さんが僕の両肩に手を置いてこう言った。


「お、美味しかったっていったね、ワンタンスープ。」


「……?うん、確かに言ったけど。」


「……また、食べたい?」


「そうだね、ぜひまた作ってほしい」


僕の正直な返答に、みるみる顔に笑みを浮かべる沙也加さん。


いや、笑みを浮かべる言うよりは、我慢できずにあふれた笑顔というのが正しいだろうか。


沙也加さんは、そんな満面の笑みを浮かべたまま僕の肩に頭を預けた。


「沙也加さん?さっきからどうし――」


いつもと違う雰囲気をまとう沙也加さんに困惑している只中、彼女は僕の服の袖をきゅっとつまんでいた。


なんだこれ、ラブコメかよ。


頭を預けられた自分の肩からは、花園を彷彿とさせるフローラルな香りが漂ってくる。


あまりの至近距離に、思わず胸が高鳴る。


この鼓動、聞こえてないだろうな。


今年暫定一番のドキドキに、内心少しだけ慌てふためいているなか、沙也加さんの方からさらに声がかけられた。


「――じゃあさ、ずーっと作ってあげる。」


「んー、ワンタンだけじゃ飽きちゃうから、毎日いろんな食べ物を楽しみたいかな」


「ま、毎日!?」


僕のごもっともな受け答えに、沙也加さんがさらに顔を赤く染め上げて反応する。


今度はどうしたんだ。


話が嚙み合ってない感じがしたので、一応補足を入れることにした。


「弁当交換の期間中、ずっとスープを作ってくれるってことでしょ?だったら、ワンタン以外も食べてみたいなって……って、どうしたの?」


「……っ、なんでもない!!」


視線を自分の肩に戻すと、沙也加さんはプルプルと震えながら俯いていた。


体調が悪い、というよりは、羞恥で耳を染めているようにも見える。


というか、元気はあるみたいだし、横顔がなんだか色っぽくてドキドキするし、そういうことにしておこう。


僕は、沙也加さんの横顔からあえて目をそらし、少し冷めてしまったワンタンスープを一口で飲み切った。









お読みいただきありがとうございました!

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