第14話 以前までと比較してもなお近距離である
「おまたせー!」
集合時間ぴったりに、僕が待っていた人物は姿を現した。
「お疲れ様。」
彼女の姿を確認した僕は短く挨拶を返す。
相手は、今日も今日とて変わりない金髪をなびかせ――ってあれ?
「もしかして髪切った?」
ふとした疑問がつい口をつく。
「あっ、気づいちゃった?」
「うん、なんとなく雰囲気違うなって。」
「へぇ。ちょっと整えただけなのに、よく見てるねー」
言って、沙也加さんがニヤァっと笑った。
まずい……あの目は、僕をからかうときにする目だ。
このままでは、僕がやけに女性を観察している変態だとかそんなことを言われてしまうパターンだ。
「見てるっていうか、たまたまだって。」
沙也加さんと出会ってそれなりに日数が経ち、彼女に対する適切な距離をつかめたようで。
こういうときに大事なのはいかに動じず、面白くない反応をとれるか、だ。
そうすれば、おのずと相手は話題の転換を試みる。
そう。これは、数週間の間に沙也加さんと接するにあたって収集したデータの一つなのだ!
というわけで、あえてそっけない返事をしてみて相手の様子をうかがってみる。
すると……
「そっか……気づいてもらえて嬉しかったんだけどな……そうだよね、たまたまなんだよね。」
「……っ!?」
なんだこの反応はっ!?
悲しげに俯き、気まずそうに目戦をどこかに外す彼女の仕草は、傷ついた乙女さながらであった。
さながら…というか、実際に傷つけてしまった可能性が高い。
だってこんな顔見たことない。
放っておいたらボロボロと涙までこぼしていそうなその横顔に、思わず良心がえぐられる感覚を覚える…
「ごめん沙也加さん!そういうつもりじゃっ――」
僕が必死に謝罪を始めた矢先、僕の肉眼でしっかりとらえた彼女の顔は見る見るうちにニヤァっと形を変えていった。
くそっ!!!!
またやられてしまった……
「必死に誤った僕が馬鹿みたいだ……」
「ちょっと!?ひどいこと言った割に失礼なこと言うじゃない!」
騒がしくしたせいで周りの学生の視線が僕たちに集まってきてしまった。
そこで僕は、積極的に話題の転換を試みる。
「ち、ちなみに!今朝言ってたすごいお昼ご飯って…?」
「あぁ!そういえばそんなこと言ったっけ!待ってね、今取り出すから。」
ちょっとアホな沙也加さんでさえ、周りからの視線に気が付いたのだろう。
こちらの意図をくんでくれたおかげで、話題はスムーズに移り変わった。
「じゃーん!」
やり取りから間もなく、取り出されたお弁当に注目する。
「え、これってまさか!」
「その、まさかです――」
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