番外編② 甘酒
充と茶武郎が中学生時点のお話です!
是非楽しんでください!
投稿遅れてすみませんでした!
「くわぁあ」
本日何度目かわからないあくびをかきつつ、階段を一段ずつ上っていく。
数分前に元日を迎えた今の時間帯は、冷たい空気が頬を突き刺して痛い。
「なぁ茶武郎…やっぱり、こんな山奥じゃなくて、近場の神社のほうが良かったんじゃないかー?」
俺は、階段の数段先を駆け上がっていた親友にそう投げかける。
「それじゃつまらないだろっ!ほら早く!」
そう言って差し出された手から、羞恥心で顔をそむける。
なぜ今年に限って初日の出なんか見ようと言い出したんだこいつは。
そんなことを考えながら神社へ続く階段を上る俺の足取りは、軽やかに階段を駆け上がる親友の茶武郎とは対照的に、みるみるペースが落ちていった。
やがて、頂上に着いた。
急に歩みを止めると、足ががくがくと震える。
茶武郎をはじめとしたその他大勢が何ら疲れる様子も見られない限り、俺の運動不足が顕著であることを物語っているようだった。
頂上には屋台がいくつか立ち並び、がやがやと賑わいを見せていた。
あまりこういう場所は苦手なのだが、甘酒の屋台を発見してしまった。
俺は、ポケットに無造作に突っ込んで小銭を握りしめて屋台に並び、甘酒を二つ注文した。
―茶武郎視点―
階段の最後の一段を登り終え、まだまだ暗い風景を見回す。
流石はテレビで紹介されていた初日の出スポット。
辺りは、階段を上り終えて一息をついている観光客でごった返していた。
そういえば、我が親友である飯田充は、こういう人混みは苦手だったことに気づく。
慌てて隣にいる充に声をかけようとしたが、充は俺の気づかないうちに自身の隣を離れていたようだ。
元旦の旅特集とか、そんなような雰囲気のタイトルが付いた週末のテレビ特番に触発されたとはいえ、充まで巻き込んで初詣に行かなくてもよかったのではないかという思考が、今更頭の中を駆け巡る。
が、そんな俺の後悔とは裏腹に、その人物は甘酒を一つ持って戻ってきた。
食欲に忠実に従えている時点で、こいつの心配は不要だと思ったその瞬間――
「はいこれ、お前毎年飲んでるだろ?」
その甘酒は、俺の目の前に差し出された…
―充視点―
これだから人混みは嫌いだ。
両手に甘酒を抱えて歩く俺に、唐突に迫る影。
それにぶつかった瞬間、反射的に謝罪をした俺の目の前に、そいつはもういなかった。
視線を手元に向けると、ぶつかった時の衝撃で揺れたコップからは甘酒がこぼれていた。
甘酒に濡れた俺の左腕からは、元旦の風に吹かれて湯気がもんもんとあがっていた。
―茶武郎視点―
差し出された紙コップを受け取り、ゆっくりと中身を口に流し込む。
口に入れた瞬間にやさしい甘みを放つ甘酒は、毎年欠かさず飲んできた元旦といえばの飲み物である。
いつの日か父親が飲んでいた日本酒を彷彿とさせる香りが鼻に抜け、ちょっぴり大人になった気分になれるのがとても好きで、毎年見つけたら飲むようにしている。
この親友は、そんなことばかり覚えている。
普段、中学では冷たいだとかひねくれものだとか言われている俺の親友は、確かにその通りな部分もあるかもしれない。
不器用で、冷たくて、ちょっとっずれている。
俺の親友はそんな奴だ。
だが、同時に、実は人一倍に人の笑顔が好きで優しい。
俺の親友はそんな奴でもあるのだ。
そして、そんな親友が、どうして左腕を濡らしているのか。
それくらいは見抜いてやらないと、こいつの親友なんてものは務まらないのだ……
「やっぱり、いつもの神社がよかったか?」
返事を聞くのは怖いと思いつつも尋ねてみる。
しかし、そんな俺の恐怖は不要だったようだ。
「せっかくだし、初日の出は見ていこうぜ。たまにはこういうのも、案外楽しいし。」
俺はその言葉を聞いて、こいつとは一生親友でいるんだろうという確信を持った。




