第7話 幽霊の正体は、家事万能な座敷わらし(美少女)でした
本日4話更新の3話目です。(07時・12時・17時・21時)
階段を登りきると、そこには和室があった。
二階の一番奥。窓から月明かりが差し込んでいる。
部屋の中央に、誰かが座っていた。
「……誰だ?」
俺は警戒しながら、【ライト】の魔法を準備する。
不法侵入者か? それとも本当に幽霊か?
月明かりに照らされたその姿が、ゆっくりとこちらを向いた。
「……ありがとう、ございます」
鈴を転がすような、澄んだ声だった。
そこにいたのは、赤い着物を着た、おかっぱ頭の少女。
年齢は十歳くらいだろうか。透き通るように白い肌は、明らかに生身の人間ではない。
「あ、あなたは……?」
「私はこの家に住み着いている者……いわゆる『座敷わらし』です」
少女――座敷わらしは、深々と頭を下げた。
幽霊というより、神聖な雰囲気が漂っている。
「長い間、この家はゴミと穢れ(けがれ)に埋もれていました。私は身動きが取れず、力が弱まり、消えかけていたのです」
彼女は悲しげに目を伏せた。
なるほど、ゴミ屋敷化することで、守り神である座敷わらしも弱体化していたのか。
「ですが、主様が魔法で清めてくださったおかげで、こうして力を取り戻すことができました。……感謝いたします」
彼女が微笑むと、部屋の中がパッと明るくなった気がした。
どうやら、悪い霊ではないらしい。
というか、めちゃくちゃ可愛い。
「お礼と言ってはなんですが……これから私が、この家の家事全般をお手伝いさせていただきます」
「え、家事?」
「はい。掃除、洗濯、料理、お風呂の準備……主様が快適に過ごせるよう、全力で尽くします」
座敷わらしが家政婦!?
それは最強すぎるだろ。しかもタダで。
「それに、私がいる家は『幸運』に恵まれます。お金持ちになったり、出世したり……まあ、今の主様には不要かもしれませんが」
彼女はクスッと笑った。
「いや、ありがたいよ。一人暮らしで広い家は持て余してたんだ。……名前は?」
「ありません。……もしよろしければ、主様につけていただきたいです」
名付けイベント発生。
俺は少し考えて、彼女の着物の色と、鈴のような声から連想した。
「じゃあ……『スズ』でどうだ?」
「スズ……。はい! 素敵な名前です!」
スズちゃんは嬉しそうに部屋の中を飛び回った。
どうやら足は浮いているらしい。
こうして俺の新しい拠点には、最強の家事手伝い(座敷わらし)が加わった。
広すぎる豪邸の掃除も、彼女がいれば安泰だ。
これで、衣食住の全てが完璧に整った。
あとは悠々自適なスローライフを送るだけ――。
そう思っていた俺だが、世間は俺を放っておいてくれなかった。
翌日。
家の前に、見覚えのある「黒塗りの高級車」が停まっていたのだ。
(続く)
新しい家族(?)スズちゃんが仲間になりました!
家事も任せて、主人公の生活レベルはさらに上昇中。
次回、黒塗りの高級車に乗っていたのは……まさかの「あの人」!?
スズちゃんが大活躍する、スカッと「ざまぁ回」です!




