第6話 「幽霊が出る」と噂の激安ゴミ屋敷を買ったら、お城になりました
本日4話更新の2話目です。(07時・12時・17時・21時)
駅前の不動産屋に入ると、営業マンが引きつった笑顔で俺を見ていた。
「あ、あの……佐藤様。本当によろしいのですか? こちらの物件で」
彼が指差したのは、間取り図というより「地図」に近い物件資料。
山の中腹にある、築五十年の元・別荘。
敷地面積は広大だが、備考欄には赤字で不穏な文字が並んでいる。
『※雨漏り多数、倒壊の恐れあり』
『※残置物あり(ゴミ屋敷状態)』
『※近隣住民からの心霊目撃情報あり』
いわゆる「事故物件」だ。
だが、価格は破格の**『土地代のみ・50万円』**。
さっきアイリさんから貰った報酬の十分の一で買えてしまう。
「ええ、ここがいいです。誰にも邪魔されず静かに暮らしたいので」
「は、はあ……。幽霊が出ても知りませんよ……?」
営業マンは怖がりながらも、手続きを進めてくれた。
俺は即金で支払いを済ませ、その日のうちに鍵を受け取った。
◆
車をレンタルして現地へ向かうと、そこは想像以上の魔境だった。
「うわーお……」
雑草が背丈ほど伸び、洋館全体を不気味なツタが覆い尽くしている。
窓ガラスは割れ、屋根は一部崩落。
玄関のドアは腐って外れかけていた。
夜に来たら確実にちびるレベルだ。
だが、今の俺には「宝の山」にしか見えない。
「さて、やりますか」
俺は誰も見ていないことを確認し、大きく息を吸った。
MPは全快している。
ここを、俺だけの「城」にする。
「まずは邪魔な草とツタから。――【クリーン】!」
シュワワワッ!!
敷地全体を覆う緑の侵食が、魔法の光で消し飛ぶ。
現れたのは、モダンな造りの白い洋館。……まあ、壁はドロドロでヒビだらけだが。
「次は建物全体を修復。――【リペア】!」
バキバキバキッ!
ビデオの逆再生のように、崩れた屋根瓦が舞い戻り、割れた窓ガラスが修復され、腐った柱が新品の木材へと変わっていく。
「仕上げに、汚れを全部消去。――【クリーン】フルパワー!!」
カッ!!!
山の中に閃光が走った。
数秒後。
そこには、白亜の豪邸が佇んでいた。
壁は塗り直したばかりのように白く輝き、庭は綺麗に整地されている。
中に入ると、残置物(前の住人の家具やゴミ)は全て消滅し、埃一つない空間が広がっていた。
「……完璧だ」
これ、業者に頼んだらリフォーム代だけで数千万はかかるぞ。
俺は広すぎるリビングの真ん中で大の字に寝転がった。
「ここなら、いくら魔法を使っても誰にも文句を言われない」
快適すぎる。
ブラック企業の独身寮とは雲泥の差だ。
その時だった。
誰もいないはずの二階から、コト……と物音がした。
「……ん?」
ネズミか? いや、【クリーン】で害獣も追い出したはずだ。
俺は起き上がり、階段を見上げた。
そういえば、不動産屋が言っていた。
『心霊目撃情報あり』と。
まさか、物理的な汚れじゃない「何か」が、まだ残っているのか?
(続く)
夢のマイホーム(豪邸)ゲット!
でも、やっぱり「何か」がいるようです……。
次回、新しい出会い(?)があります。




