第5話 トップアイドルの「専属契約」の報酬が、桁違いでした
本日4話更新の1話目です。(07時・12時・17時・21時)
「専属契約……ですか?」
俺はアイリさんの勢いに押されて、ソファに座り直した。
目の前のテーブルには、コンビニのゴミではなく、高級そうなハーブティーが出されている。もちろん、俺が【クリーン】で出したカップだ。
「はい。私、もう佐藤さんの魔法……じゃなくて、技術なしじゃ生きていけません」
アイリさんは真剣だった。
透き通るような肌を取り戻した彼女は、直視できないほど可愛い。
「週に一回……いえ、二回! ここに来て、部屋の掃除と、私の『メンテナンス』をしてほしいんです。エステとか整体の代わりとして」
「まあ、それくらいなら仕事としてお受けできますけど……」
「本当ですか!? やったぁ!」
アイリさんはパァッと花が咲くように笑った。
これだけでファンなら即死レベルの破壊力だ。
「で、報酬なんですけど……とりあえず、手付金としてこれでどうですか?」
彼女がスマホを取り出し、個人間送金アプリを操作する。
俺のスマホが震えた。
『〇〇銀行:入金のお知らせ 5,000,000円』
「……ん?」
俺は桁を数え直した。
一、十、百、千、万……十万、百万。
五百万。
「ご、五百万円!? 手付金って、これ多すぎますよ!」
「そうですか? 私の肌トラブルが治って、スキャンダル(ゴミ屋敷バレ)も防げたんですから、安いものですよ。エステと家事代行を雇ったと思えば」
金銭感覚がバグっている。これがトップアイドルか。
俺がブラック企業で五年かけて稼ぐ年収を、彼女は指先一つで送ってきたのだ。
「それに、口止め料も込みです。……佐藤さん、このことは絶対秘密ですよ?」
彼女は悪戯っぽくウィンクをして、人差し指を立てた。
「もちろんです。顧客の秘密を守るのはプロの義務ですから」
「ふふ、頼もしいですね。……あ、そうだ」
アイリさんは何かを思い出したように、鞄からカードキーを取り出した。
「これ、合鍵です。いつでも入れるように持っていてください」
「えええ!? いや、それはまずくないですか!?」
「掃除に来てもらう時に私がいるとは限らないし……それに、佐藤さんなら襲ったりしないでしょ?」
信頼されすぎている。
というか、無防備すぎる。
もし俺が悪人だったらどうするつもりなんだ。
「……分かりました。責任を持って管理します」
俺は震える手で、トップアイドルの自宅の合鍵を受け取った。
帰り道。
通帳残高を確認し、俺は武者震いをした。
昨日まで残高三千円だった口座に、五百万円が入っている。
これで確信した。
金の問題は解決した。これからは、もっと自由に、もっと大規模に動ける。
「よし……まずは引っ越しだ」
俺はボロアパートへ帰る足を止め、不動産屋のアプリを開いた。
狙うは、普通の物件じゃない。
魔法の実験ができて、誰にも邪魔されない場所。
そう、例えば――幽霊が出ると噂の『格安ワケあり物件』とか。
(続く)
いきなり500万ゲット!
懐が温かくなった主人公、次は「拠点作り」です。
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