第31話 【付与】で「翻訳アイテム」を作ったら、ドラゴンの性格が予想以上にオッサンでした
本日4話投稿の4話目です(07時・12時・17時・21時)
朝の食卓。
新入りのマーリンお爺ちゃん(賢者)が、味噌汁をすすりながら言った。
「ふむ。主よ、あのトカゲ(リュウ)とはどうやって意思疎通しておるんじゃ?」
「え? なんとなくテレパシーみたいな感じで聞こえますけど」
「それはお主の魔力が桁外れだからじゃ。凡人には『グルル』としか聞こえんぞ」
言われてみれば、スズやアイリさんはリュウが何を言っているか分かっていない。
リサに至っては、まだ英語混じりで会話しているので、たまにスズと噛み合っていない時がある。
「不便じゃな。……どうじゃ、お主のふざけた出力の【エンチャント】で、翻訳機を作ってみては?」
「翻訳機?」
「うむ。我々古来の魔法使いにとっては『念話』など夢のまた夢じゃが、お主なら道具に魔法を無理やり詰め込めるじゃろう」
なるほど。実験台にされてる気もするが、便利そうではある。
俺はさっそく、余っていたオリハルコンの欠片を加工して、小さな「イヤリング」を人数分作った。
付与するのは『言語理解』。相手の意思を言語化して脳に届けるイメージだ。
「――【エンチャント】、言語統合」
一瞬で完成した。
マーリンが「信じられん……古代の魔道具級の代物を、粘土細工のように……」と震えているが無視して、みんなに配る。
「はい、着けてみて」
全員がイヤリングを装着する。
試しに、庭の犬小屋で寝ているリュウに話しかけてみた。
「おーい、リュウ。聞こえるか?」
リュウがのっそりと顔を上げ、口を開いた。
『……あー、あー。マイクテスト。……うむ、聞こえておるぞ』
「「「しゃべったーーーっ!!」」」
アイリさんたちが歓声を上げる。
リュウはニヤリと笑った(ように見えた)。
『フォッフォッフォ。これでやっと意思が通じるわい。……おい小娘、昨日のマグロの血合いは少し生臭かったぞ。次はもっといい部位をよこせ』
「えっ、文句!? 可愛くない!」
『そこの金髪。貴様、いつも我を見る目が怖いのじゃ。もっと敬え』
「Haa? I am...(はぁ? 私は……)あ、日本語で喋ってるつもりなのに、勝手に翻訳されてる?」
リサの英語混じりの言葉も、綺麗な日本語として聞こえてくる。
これは便利だ。世界中の誰とでも会話ができる。
『そしてスズよ! 今日の掃除機は激しすぎる! 昼寝の邪魔じゃ!』
「……リュウちゃん。文句があるなら、今夜の晩ご飯はナシですよ?」
スズが包丁を持って微笑むと、リュウは一瞬で震え上がり、お腹を見せて転がった。
『冗談でごじゃります。スズ様の料理は最高ですワン』
「よろしい」
……うん。
言葉が通じるようになった結果、ドラゴンの威厳は完全に消え失せ、ただの「口うるさいペット(権力には弱い)」になってしまった。
でもまあ、これで家の中のコミュニケーションはバッチリだ。
俺はこっそりと、マーリンのイヤリングにだけ『小言ミュート機能』を追加しておこうと心に決めた。
(続く)
翻訳アイテム完成!
普通の魔法使いなら一生かけて作るような物を、一瞬で作ってしまいました。
これでリュウとも、リサともスムーズに会話ができます。
それにしても、ドラゴンの性格が人間臭すぎますね(笑)。
次回、平穏な休日に終わりを告げる「緊急ニュース」が飛び込んできます。
世界中で「ダンジョン」が一斉に活性化!?
【新作・短期集中連載のお知らせ】
いつも本作を読んでいただきありがとうございます!
明日から、短期連載で別の新作を投稿し始めます。
タイトルは『 ご都合主義について物申す。〜敏腕編集長は異世界出張で忙しい〜』です。
主人公は、理屈っぽい「ラノベ編集長」。
彼がいろんな異世界に行っては「設定が甘い!」「コンプラ守れ!」と説教して回るコメディなのですが……
なんと最終章で、本作『生活魔法』の世界にカチコミに来ます。
佐藤健太の「ストレスフリーな生活」が、鬼編集長にどう論破されるのか(あるいはされないのか)。
全40話、11/30日から8日間(1日5話更新)で一気に完結させます!
完結までお付き合いいただけると嬉しいです!
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11/30 07:00に第1話が公開されます。
(それまではリンクを押してもエラーになりますのでご注意ください!)




