第15話 念願の【転移】スキルを習得しました(ただし条件付き)
本日3話投稿の1話目です(07時・17時・21時)
翌朝。
昨日の「ピロリン♪」という幻聴が気になっていた俺は、起きてすぐにステータスを確認した。
「……おい、マジか」
表示された画面に、見慣れない文字が増えている。
**【使用可能魔法】**
・【クリーン(洗浄)】Lv.MAX
・【リペア(修復)】Lv.5
・【ライト(照明)】Lv.3
・【アイテムボックス(収納)】Lv.4
・**【テレポート(転移)】Lv.1(New!)**
「やった……! 本当に覚えてる!」
昨日の「どこでもドアが欲しい」という強烈な願望がトリガーになったのか、それともフランス往復という長距離移動が経験値になったのか。
とにかく、念願の移動魔法だ。
俺はパジャマのまま庭に飛び出し、詳細を確認した。
**【テレポート(転移)】**
* 効果:あらかじめ魔力でマーキングした「転移ポイント」へ、瞬時に移動する。
* 現在の登録可能数:3箇所
「……なるほど。やっぱり『行ったことのない場所』には飛べないか」
昨日のフランスのケーキ屋を思い浮かべてみたが、何も起きない。
どうやら、現地に行って「ここを登録!」と念じる必要があるらしい。
「くそっ、昨日フランスにいる間に覚醒していれば……!」
悔やんでも仕方がない。
俺は気を取り直して、実験をすることにした。
まず、リビングのソファの前で「登録」と念じる。
すると、脳内マップに【ポイント1:自宅】が記録された感覚があった。
そのまま庭に出て、深呼吸。
イメージするのは、さっきのリビング。
「――【テレポート】」
ヒュンッ。
浮遊感と共に視界が歪んだ。
瞬きする間もなく、目の前の景色が「青空」から「自宅の天井」に切り替わっていた。
成功だ。
「おかえりなさいませ、主様。……あれ? 今、庭にいませんでしたか?」
キッチンから顔を出したスズが、目を丸くしている。
「スズ、ついに移動魔法を覚えたぞ!」
「まぁ! おめでとうございます! それでお昼ごはんは海外ですか?」
「いや、まだ登録してないから無理なんだ。……よし、今日は『ポイント登録』の旅に出よう」
俺は着替えて、とりあえず東京へ向かうことにした。
登録するのは『アイリの事務所』と『内閣府(西園寺さんのところ)』だ。
この二箇所を登録しておけば、呼び出しがあっても一瞬で駆けつけられるし、用が済んだら一瞬で帰ってこれる。
俺はウキウキしながら家を出た。
だが、俺は気づいていなかった。
俺の豪邸がある山の麓に、怪しげな外国人観光客風の男たちが潜んでいることを。
「……ターゲット確認。外出しました」
「了解。家には幼い少女が一人か? 今のうちに侵入して、技術の手がかりを探れ」
世界を騒がせた『スライム美容液』の秘密を狙い、某国の産業スパイたちが動き出していたのだ。
(続く)
ついにテレポート習得!
これで「通勤時間ゼロ」の生活が手に入りました。
しかし、留守中に怪しい影が……。
次回、スパイたちがスズちゃんに挑みます(死亡フラグ)。




