第108話 島の主・巨大ヤドカリが暴れていたので、殻の中を【クリーン】したら懐かれました
3話更新の3話目です
森から現れたのは、軽自動車くらいの大きさがある巨大なヤドカリだった。
背中には、沈没船のパーツのような鉄の塊を背負っている。
『ギチチチッ!! 誰だ、我が島を勝手に掃除したのは!』
翻訳イヤリングを通して、怒りの声が聞こえる。
ヤドカリは巨大なハサミを振り回し、こちらを威嚇してきた。
「Master、戦闘態勢。迎撃します」
「待てリサ。様子がおかしい」
俺は【生活魔法】の目でヤドカリを観察した。
彼の動きは、怒りというより「苦痛」に満ちている。
特に、背負っている殻(鉄の塊)の奥を気にしているようだ。
「お前、殻の中が痛いんじゃないか?」
『ッ!? な、なぜそれを……! 背負っている鉄の隙間に、硬いゴミが挟まって取れんのだ! 動くたびに刺さって激痛なのだ!』
やっぱりか。
ドラゴンのリュウの時と同じパターンだ。
俺は両手を上げた。
「俺ならそれを取ってやれるぞ。……掃除させてくれるか?」
『……本当か? 嘘をついたら挟むぞ』
ヤドカリは半信半疑ながらも、大人しくなった。
俺は鉄の殻に手を当てた。
内部をスキャンすると、錆びたイカリの破片やプラスチックゴミが奥深くに食い込んでいる。
「――【クリーン】、異物除去」
シュポンッ!
魔法が発動すると、殻の中から大量のゴミが排出され、消滅した。
『お、おおお……! 痛くない! 軽い! 数十年ぶりの快感だ!』
ヤドカリはハサミを振り上げて喜びの舞を踊り出した。
そして、俺の前に来て、ちょこんと頭を下げた。
『人間よ、礼を言う。我は「カーク」。この島の守護者だ。……恩返しに、この島の警備員になろう』
「警備員が増えたな」
「ふふっ。可愛いですね」
スズが笑う。
こうして、南の島のリゾートには、鉄壁の守護者(巨大ヤドカリ)が常駐することになった。
俺たちは安心して、海と太陽と、スズの作ったトロピカルジュースを楽しむのだった。
(続く)
巨大ヤドカリのカークが仲間になりました。
「背中が痒いドラゴン」に続き「殻の中が痛いヤドカリ」。
この世界の魔物たちは、意外と生活習慣病(?)に悩まされているようです。
これでリゾート地の安全も確保されました。
次回、この島で採れる不思議なフルーツを使って、スズが新作スイーツを作ります!




