表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代日本で「生活魔法」が使えるのは僕だけのようです。社畜を辞めて「特殊清掃」を始めたら、いつの間にか億万長者になっていました  作者: かるびの飼い主


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/44

第1話 社畜、魔法に目覚める

「……はあ。帰って寝よ」


 午前二時。

 誰もいないワンルームマンションの玄関を開けると、ムッとした熱気と、生ゴミ特有の腐敗臭が鼻をついた。


 電気をつける気力もない。

 脱ぎ捨てられたワイシャツ、積み上がったコンビニ弁当の空き容器、中身が入ったまま放置されたペットボトル。

 足の踏み場もないゴミの山をまたいで、万年床の布団へと倒れ込む。


 佐藤さとう健太けんた、二十八歳。

 ブラックな営業会社に勤めて五年。心も体も限界だった。


(明日も七時出社か……。洗濯してないから、またヨレヨレのスーツで行くしかないな)


 天井を見上げながら、ぼんやりと思う。

 こんな生活、いつまで続くんだろう。

 いっそ、このゴミに埋もれて消えてしまいたい――。


 そう願った、その時だった。


『ピロリン♪』


 静寂な部屋に、どこか間の抜けた電子音が響いた。

 スマホではない。頭の中に直接響いたような音だ。


 直後、目の前の虚空に、半透明の青いプレートが浮かび上がった。


【条件を満たしました。スキル『生活魔法』を習得しました】


「……は?」


 幻覚だと思った。ついに疲労で頭がおかしくなったのだと。

 だが、そのプレートは視線を動かしても追従してくる。


――使用可能魔法――

・【クリーン(洗浄)】Lv.1

・【リペア(修復)】Lv.1

・【ライト(照明)】Lv.1

・【アイテムボックス(収納)】Lv.1



「生活……魔法? なんだこれ、ゲームかよ」


 試しに、起き上がって手を伸ばしてみる。

 触れることはできない。ただ、意識するとその文字が強調された。


 【クリーン(洗浄)】。

 対象の汚れを取り除く魔法。


「……もし、本当に使えるなら」


 視線を、足元に転がっている飲みかけのコーヒー缶に向けた。

 一ヶ月前に飲んで、そのまま放置してあるやつだ。中身が腐って異臭を放っている元凶の一つ。


(綺麗になれ……!)


 念じる。

 すると、俺の指先から淡い光の粒子が溢れ出した。


「うわっ!?」


 光はコーヒー缶を包み込むと、シュワワ……という炭酸のような音と共に消えた。


 あとに残っていたのは、まるで工場から出荷されたばかりのようにピカピカに輝く空き缶。

 こびりついていた茶色のシミも、腐った臭いも、跡形もなく消滅している。


「……マジか」


 震える手で、今度は自分のワイシャツに触れてみる。

 襟元の黄ばみ、コーヒーのシミ、そして染み付いた汗の臭い。


 ――【クリーン】。


 一瞬だった。

 まるでクリーニング屋……いや、新品をおろしたてのような白さが蘇った。パリッとした糊の感触まで戻っている。


「すげぇ……これ、マジですげぇぞ」


 俺は狂ったように部屋中のゴミに向かって魔法を放ち続けた。


 弁当の空き箱に残った油汚れも【クリーン】で消滅。

 カビだらけの風呂場も一撃でピカピカ。

 さらには、壁紙の剥がれや床の傷も【リペア】と念じるだけで、新築同様に修復されていく。


 十分後。

 そこには、モデルルームのように輝く部屋があった。


「……これなら」


 自分の手を見つめる。

 この力があれば、もうあんなクソみたいな会社で、泥水をすするような営業をしなくていいんじゃないか?


 例えば、清掃業。

 洗剤も機材もいらない。一瞬で、どんな汚れも消せる。

 産業廃棄物だって、放射能汚染だって、もしかしたら……。


「……辞めよう」


 俺はピカピカになったスマホを取り出し、上司への退職願いのメールを打ち始めた。

 不思議と、指の震えは止まっていた。


 これが、俺の人生が大逆転する始まりだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、

下にある【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】を押していただけると、執筆の励みになります!


何卒よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おいおい熱いじゃねえか。。ひとまず最新話まで読んどくか。
羨ましさしかないなぁw
一か月腐ったコーヒー放置は鬱病レベル、スキルを手に入れてなければ異世界転生コースだったなこりゃ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ