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迷宮実話 -命の対価は恥で払え-  作者: 泉井 とざま
3章:匿名記者が迫る

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第29話:第60号:緊急特集!街に蔓延る裏カジノの実態

 本誌ではこれまでにも、詐欺師にならずもの、さらには盗掘団までを題材に取り上げてきた。

彼らに誑かされ、魔の手に落ちかけた冒険者たちを救った――そんな“心温まる話”を、読者諸君も覚えているだろう。


 そう、迷宮実話は悪人の影を見過ごさない。

そして第60回にして、初の“緊急特集”を組むことになった。

放置すれば、街そのものを揺るがしかねない規模の話だからだ。


 安心してほしい。今回も、冒険者諸君に無関係な話ではない。

むしろ、諸君の間に静かに広がっていた“ある疑念”を、本紙が明らかにすることになる。


 なお詳細は黙するが、今回の情報は、ギルドへの協力の“対価”として得たものだ。

諸君らがこの情報を広めることに、何の問題もない。

それが、こんな仕事を私へ依頼したギルドの“誠意”というものだろう。


 故に今日は、娯楽新聞としてではなく、“情報誌”として読んでいただきたい。



 私への依頼は“街の南にある、とある商館の地下を調べること”だった。

正直、記者を探偵や密偵、東方辺境国のシノビか何かと勘違いしている依頼だ。


 だが、ギルドがわざわざ私に声をかけた以上、それを無碍にするわけにもいかない。

商館の名は伏せるが、冒険者から平民、一部の貴族に至るまで出入りするという、なかなかの大店である。

その地下に“違法なカジノ”があるという噂は、以前から諸君らの間でも囁かれていたはずだ。


 そして、この違法カジノは存在した。

特別な紹介状をとある店員に見せることで、地下へと招待される仕組みだ。


 カジノは地下にあるにも関わらず、煌びやかな光に溢れていた。

カード、ダーツ、ルーレット……様々な賭け事のテーブルだけではない。

ラウンジにはバーカウンターが据えられ、小さなステージでは楽団が落ち着いた音楽を奏でている。

さながら小さな社交場といった趣だ。


 貴族の夜会のような上品さすら漂う空間であったが、そこに集う人々の装いは実に様々だ。

隆々とした体躯を隠しもしない冒険者風の大男、裕福さを誇示するように腹の出た商人、小ぎれいなドレスに仮面を合わせた婦人までいる。


 しかし、誰もがテーブルで動く金の流れに目を奪われている点だけは、例外なく同じだった。

上品な仮面をかぶってはいるが、その奥でぎらつく欲望は隠しきれていない。

手元のコインを弄る指先だけは、妙に落ち着きがなかった。


 だが、カジノだけではない。問題は奥にある。


 招かれた客の中でも金を持つ一握りだけが入ることを許される、地下の最奥。

そこでは、違法な薬品に魔道具、魔物や希少な生物まで、表に出せない品々が静かに取引されていた。


 そして、これらの品の収集には、冒険者の関与もあったとされる。

彼らはカジノで負わされた借金のせいで、断ることも、告げ口することもできない。


 その背後には、ギルドを裏切った職員がいたのだ。

冒険者をこの闇へと引きずり込み、借金を盾に都合よく使っていたのである。

この裏切りは、一職員の小遣い稼ぎで済む話ではなかった。

ギルドを陥れる明確な悪意がそこにあった。


 カジノ調査の情報が、事前に外部へ流されていたのである。


 しかし、その情報は直前につかまれたものだったのだろう。

私が潜入した当日、カジノの奥では、金品の運びだしが急ピッチで行われていた。


 同じようにギルドから派遣された冒険者が捕まったらしいが、彼らもこの搬出のどさくさに紛れて、無事に脱出したらしい。

私の助けがいらなくて、何よりである。


 彼らの証言と、私が持ち帰った情報を照らし合わせたことで、カジノの悪事は揺るぎないものとなった。

そして彼らは、“下水道を使った金品の運び出し”の現場をその目で確認したらしいのだ。


 これについては、私からも補足を加えておいた。

金品の行き先――すなわち、“奴らが逃げ込んだ先”の情報である。


 結果は諸君も知っている通り。

夜明け頃、北区で起きた警邏隊の大物取りがこれにあたる。

闇取引の連中は一網打尽となり、ギルドの裏切り者も縄をかけられた。


 しかし、この騒動では、実行犯しか捉えることができていない。

黒幕――真の悪人を明らかにすることはできなかったのである。

黒幕の狙いが何だったのか……推測は立てられても、明確な証拠は今のところ存在しない。

つまり、全てが終わったわけではないことを覚えておいてほしい。



 また、諸君らの周りでも、辛気臭い顔をしていた冒険者を見かけなかっただろうか。

彼らはカジノのイカサマを見抜けず、借金を背負わされた間抜けである。

最近、依頼を巡って事を荒立てていたのと同じ連中だ。


 彼らの借金はギルドの仲介で帳消しになったが、ペナルティが科されることになる。

しばらくの間、依頼の選択権を失うのは当然として、奉仕活動への参加も義務づけられた。


 甘い話に乗った代償としては、処分が軽いと感じた者もいるかもしれない。

だが、この処分は領主の了解を得た正式なものであり、身内をかばった結果ではない。

むしろ、違法な依頼を持ちかけられた際には、ためらわず報告してほしいというギルドの姿勢の表れだ。


 以上で街を揺るがすカジノ事件について、私が公開できるすべてを伝えた。

冒険者の街では、人と、それ以上の金が動く。

それを狙う悪人どもは、金を生む鶏である冒険者を標的にしている。


 楽して稼げる話など、そう転がってはいない。


――うまい儲け話には注意しろ。


 例えギルドの人間であろうともだ。


※本記事は、冒険者の反省と酒場の肴を兼ねてお届けする。

失敗は誰にでもある。だが、次に笑われるかどうかは、諸君の運と記憶力次第だ。

悪事を暴いた記者の一文。

ギルドが隠したい事実もあったろうに……


☆や感想を頂けましたら、これ幸い。

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