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厄災の黒領主 〜追い出され貴族は辺境の地で領主になる〜  作者: 三ケ猫のしっぽ
シーズン1 『厄災の晩餐会編』・『厄災の旅路編』
7/73

07. 未来眼

『あらすじ』


気が動転したアメリアは、シユウを一人で置いてどこかへと行ってしまったーー。そんな中ーー、ふらっと座ったシユウの横に、アメリアの妹シェリカがやってくる。からかい上手のシェリカはシユウに告白をするが……、本音がどちらかわからないシユウは終始ドギマギするしか無いのであったーー。


  しばらく人混みをかき分け、ようやく落ち着いたボクとシェリカは息を切らしながら椅子に座って落ち着いた……。


  「はぁ……はぁ……だーー大丈夫シェリカ?」


  「ええ、私は全然大丈夫ですよ♪シユウさんこそ大丈夫ですか?」


  訂正ーーシェリカには人の心配をする余裕があるらしい。

  どうやらボクは、人目を気にしすぎて、過度にストレスを感じてたみたいだーー。


  水を飲み、少し落ち着いてからシェリカに確認を取る。


  「シェリカ……さっきの事だけど、冗談だよねーー?」


  「さあ〜、どうでしょう〜〜?」


  本音を悟らせない絶妙な笑顔で笑うシェリカ。アメリアはストレートに人の心をかき乱すタイプだけど…………どちらかというとシェリカは人を手のひらでコロコロと動かして心を揺さぶるタイプらしい。

  彼女の美貌と相まって、ボクに許嫁がいなければちょっとだけ本気にしていたかもしれないーー。


  「まぁいいや……。そういえば今って何時ごろなんだろう?パーティーもそろそろ終わりに近い頃合いかなーー?」


  「今が大体十一時ですね……。あと五時間くらいありそうですよ?」


  「そんなに!?……そういえばあまりボク知らずに来ちゃったけど、これってなんのパーティーだったっけ?」


  「えっ!?シユウさん、知らずに来てたのですか?《ランスロット家》の主催なのにっ!?」


  「あ……ああ、アメリアが連れてきただけなんだ……家族から特に呼ばれたわけじゃないよ……」


  そういえばエレミア姉さんから手紙来てた気もするけれど……もしかして、このパーティーの事だったのかな?


  「今日は《ランスロット家》の第七太子ーーエクセラお嬢様が生まれたお祝いの集まりですよ。つまりーーシユウさんの妹です♪」


  「ああ!……確か、十日前に生まれたって聞いた聞いた!そっかーーすっかり失念していたよ…………」


  「…………やっぱり、お父様方とは今でも仲がよろしく無いんですか?」


  少し、表情が陰る。……確かに、未だに父様の顔はロクに見た記憶がないーー。

  それどころか、上の兄二人とも、ずっと疎遠だ。近親者で唯一関わりがあるのは母様かエレミア姉さんだけ…………。


  (そっか、……妹、できたんだっけ…………。)


  「……まぁ、ボクの事はいいよーー。それより、アメリアだ。ずっと帰って来ないけど一体どこに行っーー」


  と、その時だ。少し離れた場所から盛大な痴話喧嘩ーーいや、一方的な罵詈雑言のような大声が広場全体に伝わる程大きく発せられた。


  「ふっざけんじゃ無いわよーー!!……さんざん毛嫌いして、突き放して、見下して!!……『その赤い髪なんて見てるだけでも吐き気がする』なんて言ってた奴が、どの口開いて言ってんのよ!?……〝もう一度やり直して欲しい〟ですって!?……アンタみたいなクズ男ーー百万回許しを請うたってお断りよ!!!」


  急いでシェリカと声のする方へと走りかける。するとーーそこには、これまでに見た事が無いほど怒り狂ったアメリアが、先程ボク達の会話に割って入ったキースという少年を責め立てていた。


  「お姉ちゃん!?一体どうして……?あれは確かーーキースさん?」


  「ちょっとアメリア!どうしたのそんなに大声で怒鳴って!?……ってあれ、君は確かさっきのーー」


  「ふんっ!!何でも無いわよ!話も今終わったし、さっさと帰るわよシユウっ!!こんなところにいても気分が悪くなるだけだわ!!」


  ズカッ、ズカッ、とボクの腕を引きまたもや大股で後を去ろうとするアメリア。


  しかしーー彼女の腕をキースが引き留める。


  「待ってくれよアメリア、誤解があるんだ。……確かに僕はかつて君にひどい事を言ってしまった…………。それは事実だ。でも、真意は違う。全て君を想ってやった事なんだーー!今すぐに理解してくれというのは無理だろう……。でもっ、絶対に今度こそ君を手放したりはしない!……君を誰かに渡したりはしないーーだから、もう一度僕を……信じてはくれないか?」


  周囲からは、感嘆の声を漏らす者。黄色い悲鳴をあげる者、キースの立ち居振る舞いを褒め称える者ーー様々だ。

  ……でも、何故かボクには……この人がーーこの男がーーとても危険に見えた。


  「あんたなんか……あんたなんかっーー」


  ふとーー、()()に違和感を覚える。それは、「未来眼」に映る光景だーー。


  アメリアは我を忘れ、キースに暴言を吐き捨てる。

  公爵家の彼を殴り、その地位と名誉に傷をつけた彼女を《カルメイア家》ーーつまりキースの一家は許さない。

  カルメイア家は賄賂を握らせて不当な貴族裁判を行い、有罪判決を受けた彼女はその正当性や酌量の余地も与えられずーー死罪となった…………。


  何故かはわからないーー何故「未来眼」でここまで見えたのか?

  …………いつもは数秒先が限度なのに、今日はとてもよく見える。

  よく見えた結果ーー本当に恐ろしいのは…………キースが彼女の事を、〝何とも思っていない事〟だったーー。

  強いて言うなら、彼はアメリアを『道具』として利用するつもりだったのだーー。


  どういう意図でアメリアを利用しようとしたのかはわからないし…………正直どうでもいい。


  ボクはこの男をーー〝絶対に許してはならなくなったーー〟。

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