表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厄災の黒領主 〜追い出され貴族は辺境の地で領主になる〜  作者: 三ケ猫のしっぽ
シーズン1 『厄災の晩餐会編』・『厄災の旅路編』
6/73

06. 許嫁の妹

『あらすじ』


アメリアには恩師がいたーー。〝炎帝ローラ〟と呼ばれた、大陸でも名を馳せた凄腕の冒険者だ。しかし彼女は敗れーー死んだ。〝厄災の魔女〟によってーー。その思いを胸に……師匠の帽子を抱きながらアメリアはシユウ自身の想いを打ち明ける。しかしーー、彼女の前に過去の〝婚約者〟が現れるのだったーー。


  「婚約者ーー?」


  キースはアメリアの手を取り、その場から立ち去ろうとする。

  しかし、アメリアは引かれる手を強引に振り払った。


  「ちょっとキース…………いい加減にしてよ!!」


  「おやおや、どうしたんだいアメリアーー?」


  ふるふる、と体を震わせて目尻に涙を浮かべながらアメリアは叫ぶ。


  「わたしはアンタを絶対に許さない……()()()()、許してないから!!」


  バッーー、とボクの腕を掴んで強引に今度はアメリアが立ち去る。


  「あれ、え?ちょっとーーアメリア」


  「うるっさい!!黙ってついてきて!!」


  ズシッ、ズシッ、とアメリアが大股で怒りながら歩く。


  「やれやれーーまだあの()の事を引きずっているのかい、アメリア…………」


  誰も話を聞く相手がいない中、キースは静かに吐き捨てた…………。



  ……………………。



  (ごめん…………しばらく一人にして)


  落ち込んだようにそう言ったアメリアは、一人でどこかへと離れていってしまった……。

  あのキースという少年と一体どういう関係だったのだろうかーー?

  とても聞ける雰囲気では無く、ただ〝うん〟と頷いて手を振る事しかできなかったーー。


  「ハァ…………何やってんだろう、ボク」


  「隣…………いいですか?」


  アメリアが適当に連れてきた、広場の中央にあたるテーブル席であるここは、結構な人が行き交う場所だ。

  当然、知らない人とも隣席になる。でも……、〝痣持ち〟のボクの隣に座るなんて一体どんな物好きーー


  「こんばんは、シユウさん。今夜は月が綺麗ですね♪」


  「……………………シェリカっ!?」


  反射でバッ、と立ち上がり目の前の少女の顔をまじまじと見つめる。

  相変わらず惹き込まれるような優しい紫色の瞳、風に靡くとふわりと舞うーー桃紫のショートカットの髪、緑色のシルクドレスを纏ったあどけない気配の少女がそこにいた。


  「お姉ちゃんは一緒じゃないんですか?」


  「あ……ああ、アメリアはどっか行っちゃったーーはは」


  照れ隠し代わりに、ジュースをグビっと飲み込む。


  「もう!相変わらずお姉ちゃんはシユウさんを困らせてばっかり…………」


  この子はアメリアの妹ーー《シェリカ・イザレア・セントルイス》。アメリアの四つ下ーーつまり、ボクの一つ下に当たるアメリアの妹だ。


  ぷんぷん、と頬を膨らませたシェリカは何を思ったのか、ポンッーーと手を叩く。


  「そっかーーつまり、お姉ちゃんがいない今はシユウさんと二人きりという事ですね?」


  「なっーー」


  頬に手を当てて誘うように上目遣いをするシェリカ。

  シェリカはそのまま、ボクの顔にぐいっと近づく。


  「こう見えてもわたし……ずっとシユウさんの事お慕いしていたんですよ?」


  「ーーえっ?」


  急に顔を覗き込み、その吸い込まれそうな瞳を近づける。

  さすがは公爵男子の婚約したい候補No. 1の貴族令嬢様だーー。


  「ねぇ……シユウさんーー」


  「はいっ!……な、な、何でしょうーーシェリカ……さん?」


  そのまま唇が触れそうなところまで、さらにシェリカは近づく。


  「私……二番目でも構いませんよ?お姉ちゃんの次でも……その次でも……なんならお妾さんでも。ずっとシユウさんのおそばに置いてくださるなら私は……私の全てをあなたに捧げます♪」


  「なっーー!!!う、うわっ!!」


  顔に熱が帯びていくのを感じる。

  ドクンッーードクンッ、と心臓の音が跳ね上がり、やがて緊張が高まって硬直する。


  「ーーぷっ…………あっははは!やだシユウさん〜、冗談ですよ〜♪」


  姉に似てからかい上手というか、シェリカはどうやらボクの反応が見たくて仕方が無かったらしい。急に大声で腹を抱えて笑い出した。


  「な……なんだ、冗談かーーははは……ってーーわあっ!?」


  緊張が緩んだからか、油断して後ろへと転げ落ちた。


  「だーー、大丈夫ですかシユウさんっ!?」


  頭がクラクラ、としながらもシェリカの心配そうな表情を見ると再び全身の熱が湧き上がってくる。


  「……う、うん。大丈夫ーーははは」


  苦笑いをし、シェリカの差し出す手を取る。

  一つ下の女の子とはいえ、同じ子供でもやはり柔らかい女の子の指に触れると自然ーー再び頬が真っ赤に染まる。


  一瞬キョトン?とした表情のシェリカだったが、すぐにニヤニヤ……と企み顔になり、笑顔でボクの手を引っ張り上げる。


  「シユウさん…………私ーー将来はシユウさんのお嫁さんか、お妾さんになりますね!!」


  「ちょっとシェリカさんっ!!?」


  シェリカの爆弾発言により、周囲がザワザワッーーと騒ぎ始める。

  視線が痛くなる事を察知して、急いでシェリカの手を引いてその場を離れることにした。


  「ちょっ!?なんで急にそんな事言い出すのシェリカ!?おかげですごい皆さんの視線が痛いんだけど!!」


  「だって…………顔真っ赤にするシユウさんがあまりにも可愛くて…………。それにーー手を引いてくださるなんて、なんだかロマンチックですね〜」


  「ちょっとだけシェリカさん黙ってて〜!!」


  大人しく過ごそうと思ってたのに…………なんで今日のボク、こんなに目立っちゃうんだろうーー!?

面白かったらブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ