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厄災の黒領主 〜追い出され貴族は辺境の地で領主になる〜  作者: 三ケ猫のしっぽ
シーズン1 『厄災の晩餐会編』・『厄災の旅路編』
3/73

03. 剣帝の娘

『あらすじ』


〝痣持ち〟ーー俗に〝厄災の子〟と呼ばれる不吉なあざを持つシユウは、来賓客達から侮蔑の視線を向けられる。しかしーー、そこにたまたま居合わせた少女セリスによって、助けられるのだったーー。



  「では改めましてーー《セリス・アリスティア・グランレギンス》です。どうかお見知り置きください」


  「アタシは《アメリア・イザレア・セントルイス》よ!!」


  「ぼ……ボクは《シユウ・ヴィ・ランスロット》です。さっきはありがとう!よろしくね、セリスさん!!」


  「ええ。ーーこちらこそ」


  騒動の後、しばらく端の方で大人しく目立たずに小さい立ち飲み用のテーブルで食事を摂る。

  セリスも同伴だ。が、しかし……またもやアメリアのよそった皿の分がやけに多いみたいだ。


  「さっき食べた分はどこへ行ったのかーーなんでこんなに食べるんだろう?」


  「さあね〜……どっかの誰かさんがあまりに少食だから、代わりにお腹が空くんじゃないかしら?」


  「どういう別腹システム!?」


  「フフッーーお二人はとても仲がよろしいのですね」


  口元に手を当て、クスクスと笑うセリスを他所に、ケラケラと笑いながらフォークでお肉をブッ刺し、こっちへと向けるアメリア。


  「ほらほら〜、アンタもちゃんと食べ無いと育たないわよ〜?病気とかしたりしたら承知しないんだからね!?わたしの未来のーーだ・ん・な・さ・ま♪」


  「なっーー!!?」


  からかい、ヒヒヒと腹を抱えて笑うアメリア。彼女なりに励まそうとしているからか、先程よっぽど赤面したからか、いつもよりエスカレートした会話が続く。


  「か……からかわないでよ全く…………」


  「女々しい〜!!あ〜、本っ当!アンタってからかい甲斐あるわ〜!!ヒヒヒ…………」


  ついに腹を抱えて笑い始めるアメリア。さすがに少々品の無いこの会話は、やはり端っこの方でやって良かったと思い赤面する。


  「お二人はとても仲睦まじく見えますね。…………まるで許嫁みたいですが…………もしかして?」


  「そうよ!アンタ、なかなか良い観察眼してるじゃない〜?」


  「というか……アメリアの絡みを見てたら誰でも気づくんじゃーー」


  和気あいあいとした会話が延々と続く。久々の落ち着いた夢のような時間に、気がつけばあっという間に一刻ほどの時が過ぎていったーー。


  「あっははははは!あー、あの時のシユウったら何て言ったと思う?それはまだ生きてるから食べないで〜だってさ!ペットで飼ってる鳥なんだから食うわけ無いのにアタシが捕まえただけで食べられると勘違いしたんだってさ!いや〜、失礼にも程があるっていうか……まじウケるw」


  「ふふっ♪アメリア様とシユウ様は本当に仲がよろしいのですね」


  「………ねぇ、アメリアーーこの話題やめない?……なんだかボクの威厳がどんどん壊されてる気がする…………」


  「あっははははははは!威厳だってさ!あははははは!!」


  もうこうなったら何を言ってもダメだ……。ハァ……とため息を吐いてしばらくアメリアが笑い止むのを待つ。

  しばらくの談笑の後、ついには涙ぐみながら一息ついたアメリアは、満足そうに目尻の涙を拭き取った。


  「そういえばさ…………セリスのお父さんってどんな人なの?……確か、この国の騎士団の団長さんなんでしょ?」


  「っ!!《英剣騎士団》の団長ってーー〝剣帝カイザー〟ですか!?」


  〝剣帝カイザー〟ーー本名、《カイザー・レ・アルア・グランレギンス》。世界でも五本の指に入ると言われている剣豪だ。しかしーー、


  「…………そう、ですねーー」


  少し、気まずそうに答えるセリス。どうやらこの話題はあまり話したくないものなんだなとーーアメリアにジェスチャーを送る。

  ……しかし、それを受け取ったアメリアは何故かグッドサインを返し、セリスに問いかける。


  「あんたってさ、お父さんと仲悪いの?」


  …………どうやら、間違ったサインの受け取り方をしたらしい。


  気まずい……。なんて気まずい晩餐会だ。


  「あー!!あっちにボクの大好きなビーフステーキがあるんだった〜!!みんなの分もとってくるね!!」


  「あっ!ち、ちょっと!?」


  走り去るボクを、無言で流し見るセリス。どうやら彼女の事をこれ以上詮索するのは良くないのだろうーー。


  しばらく人混みをかき分けて、目的のステーキを提供するシェフのいるビュッフェに辿り着く。

  そこには相変わらず仏頂面のお偉い方達が、難しそうな言葉で会話をしていた。


  「…………ふえ〜、結構息詰まりそうなところだな〜」


  黙々と三人分の子供用ステーキを注文し、しばしの間大人しく待つ。と、そこにーー


  「あらあら、迷子の迷子の仔猫さん。あなたのおうちはどこですか〜?」


  急に後ろから両手で視界を遮られる。


  「だっーー誰!?」


  バッーーと振り向くとそこには、桃色の髪に、ところどころ三つ編みを結んだ白桃色のドレスの少女がいた。


  「ね、ーー姉様!?」


  「こんにちはシユウ君。今、一人?」



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